「個別空調と中央熱源、どちらを選ぶべき?」
「それぞれのメリット・デメリットが知りたい」
空調設備は初期費用だけでなく、快適性や省エネ性・運用のしやすさまで考慮して選ぶ必要があります。
その違いを理解しないと、導入後に「ランニングコストが高い」「使い勝手が悪い」などのトラブルにつながる恐れがあるでしょう。
そこで本記事では、個別空調と中央熱源の違いやメリット・デメリットを解説します。
最後までお読みいただき、最適な空調方式を選ぶ参考にしてください。
個別空調と中央熱源の違い

空調設備を選ぶ際は、個別空調と中央熱源の仕組みを理解することが重要です。
まずは仕組みの違いを見ていきましょう。
個別空調の仕組み
個別空調は、フロアや部屋ごとに独立した空調機(室外機)を分散して設置する方式です。
部屋ごとに独立して空調を管理できるため、必要なエリアだけ効率的に冷暖房をかけられます。
柔軟な運転ができるため、小〜中規模のオフィスビルや商業施設など、用途や利用状況が頻繁に変わる建物に適しています。
中央熱源の仕組み
中央熱源は、建物内にひとつの大型空調設備(熱源)を設置して、ダクトや配管を通じて建物全体に冷暖房を供給する方式です。
全館を一括管理できるため、建物全体の温度を安定して保ちやすいのが特徴です。
主に、大型オフィスビルや商業施設・ホテルなどの大規模施設で採用されており、広範囲を効率的に管理したい建物に適しています。
個別空調のメリット

個別空調は、柔軟な運用ができる点が大きな魅力です。
ここでは個別空調の主なメリットを紹介します。
- 部屋ごとに温度を自由に設定できる
- 部分的な運転で省エネ効果が高い
- 故障しても他の部屋への影響が少ない
順番に見ていきましょう。
部屋ごとに温度を自由に設定できる
個別空調のメリットひとつは、部屋ごとに温度を自由に設定できる点です。
部屋ごとに温度を細かく調整できると、執務室・会議室・休憩室など用途にあわせた管理が可能です。
室内の人数が少ない執務室では空調を弱めに、大人数が集まる会議室では空調を強めに設定するなど、状況に応じた運用ができます。
部分的な運転で省エネ効果が高い
個別空調は、省エネ効果を高めやすいとされています。
誰もいない部屋の空調をオフにすると、必要な場所だけ効率的に稼働させられ、無駄な電力消費を抑えることが可能です。
最近では高効率なインバーター制御を搭載した機種も増えています。運転状況に応じて出力を細かく自動調整できるため、省エネ性能が高いことが特徴です。
このような仕組みにより、日々の運用でも自然と電気代の負担を抑えやすくなっています。
故障しても他の部屋への影響が少ない
個別空調は、故障時のリスクを最小限に抑えられます。
部屋ごとに独立した空調機器を設置しているため、1台が故障しても他のエリアには影響しません。
一部の部屋が使えなくなっても、業務が停止するほどの影響はほとんどないでしょう。リスク分散により、日々の運用も安心して行えます。
個別空調のデメリット

個別空調には、運用や管理面でいくつかの注意点もあります。
導入前にデメリットも把握しておくと、想定外のトラブルを防げるでしょう。
個別空調のデメリットは次の3つです。
- 管理する空調機の台数が増える
- 建物全体での最適な温度管理が難しい
- ダクト設計や換気との調整が必要になる
ひとつずつ見ていきましょう。
管理する空調機の台数が増える
個別空調はフロアや部屋ごとに機器を設置するため、管理する台数が増えるのがデメリットです。
各機器の運転状況やオンオフの管理もすべて把握する必要があり、手間がかかります。
日常の点検スケジュールや清掃計画、トラブルに備えた修理対応の準備をあらかじめ整えることが大切です。
建物全体での最適な温度管理が難しい
個別空調は建物全体での温度バランスを保つのは難しくなります。
部屋ごとに快適な温度に設定されている場合もあるため、ある部屋は冷えすぎており、他は暖かい状況もあるでしょう。
従業員が部屋を移動する場合は、その温度差に不快感を抱くケースもあります。
そのため、各部屋の使用状況や温度設定を把握しながら、全体を管理することが大切です。
ダクト設計や換気との調整が必要になる
個別空調を導入する際に、空調機器のダクト設計や換気計画に手間がかかります。
部屋ごとに空調機器を設置するには、冷暖房のダクト配管や換気用ダクトを個別に設計する必要があるためです。
効率的で快適な運用には、空調と換気の一体的な設計が求められます。
中央熱源のメリット

中央熱源は、大型施設に適した効率的な空調方式です。
建物全体を一括管理できるため、運用面でも多くの利点があります。
中央熱源のメリットをまとめました。
- 建物全体の温度を安定して管理できる
- 大型施設でも管理コストを抑えられる
- ダクト式で静音性が高い
具体的に見ていきましょう。
建物全体の温度を安定して管理できる
中央熱源の特徴は、建物全体の空調を一元管理して温度差をなくし、常に快適な環境を保ちやすくする点です。
オフィスや商業施設など多くの人が長時間利用する建物では、全体の温度を均一に維持しやすくなります。
従業員や来場者が部屋を移動しても、温度差による不快感を得なくなり、快適に働くことにつながります。
大型施設でも管理コストを抑えられる
中央熱源のメリットは、大型施設でも管理コストを抑えやすいことです。
設備が1ヶ所に集中しているため、点検やメンテナンスの手間を省けます。
効率的な管理体制が、大規模なオフィスビルや商業施設で高く評価されている理由のひとつです。
ダクト式で静音性が高い
中央熱源のメリットは、ダクトを通じて空気を送る仕組みにより静音性が高くなることです。
居室付近に室外機を設置する必要がないため運転音が少なく、吹き出し口からの静かな送風で快適な室内環境を維持できます。
オフィスやホテルなどの静かな空間が求められる施設で、安心して利用が可能です。
中央熱源のデメリット

中央熱源の主なデメリットは次の3つです。
- 故障時の影響範囲が大きくなる
- 導入コストが高くなる
- 部屋ごとの温度調整が難しい
それではご覧ください。
故障時の影響範囲が大きくなる
中央熱源の場合、メイン機器が故障すると、影響が建物全体に広がる可能性があります。
熱源が停止すると、多くの部屋で冷暖房が使えなくなり、業務の継続に支障が出るでしょう。
上記のリスクを防ぐには、定期点検や消耗部品の早期交換など、予防保守を徹底して行う必要があります。
安定運用のためには計画的なメンテナンス体制が欠かせません。
導入コストが高くなる
中央熱源には、大型設備やダクト工事により導入時のコストが高いデメリットがあります。
初期投資が大きく、建築計画の段階から綿密な設計が必要です。
たとえば、ダクトの配置や機器スペースの確保が不十分だと、あとから改修が難しくなるケースもあります。
長期的な運用コストや省エネ効果も含め、導入前に十分なシミュレーションを行うことが重要です。
部屋ごとの温度調整が難しい
中央熱源は建物全体を一括で管理するため、部屋ごとの細かな温度調整が難しい課題があります。
日当たりや使用人数が異なる部屋では、同じ設定でも体感温度に差が出ることがあるでしょう。
細かな快適性を求める場合は、小型ヒーターやサーキュレーターなどの併用を検討することが重要です。
個別空調と中央熱源の併用は可能?

個別空調と中央熱源を併用すると両方のメリットを活かせます。
中央熱源で建物全体を安定的に管理し、部屋ごとの細かな温度調整には個別空調を組み合わせる方法です。
たとえば、オフィスの共用部は中央熱源、執務室や会議室は個別空調を導入するケースが一般的です。
ホテルでも、ロビーや廊下を中央熱源で一括管理し、客室は個別空調で利用者が自由に温度を調整できるように設計されていることがあります。
利用時間帯や使用人数が異なる空間でも効率的な運用ができ、省エネと快適性のバランスをとりやすくなります。複合的な空調設計により、無駄の少ない運用が可能になるでしょう。
まとめ:最適な空調で快適さと省エネを両立しよう
本記事では、個別空調と中央熱源の違いやメリット・デメリットを解説しました。
空調方式は、施設の規模や用途によって最適な選択が異なります。個別空調と中央熱源の違いを理解して、コスト・快適性・管理負担・将来の運用まで総合的な検討が重要です。
近年では、AIやIoTセンサーを活用したきめ細かな温度管理も可能になり、省エネと快適性を両立しやすくなっています。
株式会社メンテルでは、AIやIoTセンサーなど最新技術を活用した節電・省エネ支援を行っております。空調の最適化にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。