エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類とは?メリット・デメリットも紹介

エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類とは?メリット・デメリットも紹介

「エネルギーマネジメントシステムの種類は?」
「それぞれのメリット・デメリットは?」

このような疑問がある方もいるのではないでしょうか。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)には、複数の種類があり、それぞれ用途が異なります。各種類について知っておかないと、導入しようにもできません。

そこで本記事では、エネルギーマネジメントシステムの種類とメリット・デメリットを解説します。

エネルギーマネジメントシステムの理解が深まる内容なので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは

エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、工場やビル、住宅などでエネルギーを効率的に活用するためのシステムです。

その役割は主に以下の3つです。

  • エネルギー使用量の計測・監視
  • エネルギー使用状況のデータ収集・分析
  • エネルギー使用の制御・最適化

建物内に設置されたIoTやAIと連携して、エネルギー消費量をモニタリングできます。

たとえば、IoTセンサーを利用して設備やエネルギーの使用状況を可視化。特定の設備の稼働率を下げて、無駄なエネルギーを削減することが可能です。

その結果、建物の運営コストの節約とCo2排出量の削減による環境保護を実現できるようになります。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類

エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、建物のエネルギーを効率化させるシステムです。

ただし、建物の種類ごとに、適応するエネルギーマネジメントシステムは異なります。そこで本章では、5種類のエネルギーマネジメントシステムをそれぞれ紹介しています。

名称内容
BEMSビルのエネルギー管理を行うシステム
FEMS工場のエネルギーを管理するシステム
HEMS家庭のエネルギーを管理するシステム
CEMS地域全体のエネルギー管理システム
MEMSマンションのエネルギーを管理するシステム

それぞれのエネルギーマネジメントシステムの理解を深めていきましょう。

BEMS|ビルエネルギーマネジメントシステム

BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)は、ビル全体のエネルギー使用量を管理し、室内環境の最適化を図るシステムです。

BEMSは空調や照明、カメラなどのエネルギー消費量をリアルタイムで監視して、適切に制御することが可能です。

たとえば、ビル内の人がいない部屋の空調を自動的に消したり、従業員がいる時間帯だけ稼働させたりします。

ビル全体の設備の稼働状況を監視して制御するため、運用コストやCo2排出量を削減できるでしょう。

エネルギー効率を向上させることで、持続可能なビル運営を可能にします。

FEMS|工場エネルギーマネジメントシステム

FEMS(工場エネルギーマネジメントシステム)は、工場内のエネルギー使用量を最適化し、効率的な運営を実現するためのシステムです。

工場内の製造ラインや空調・照明設備、配電などのエネルギーを管理して、運営効率を高めることを目的としています。

工場の運営効率を高める方法は以下の流れで行います。

  1. 工場設備にIoTセンサーを搭載
  2. スマートメーターで使用電力を計測
  3. このデータを分析
  4. 電力の無駄を削減

たとえば、日本電機工業会によると、工場設備内のIoTセンサーによって、非稼働の時間帯の電力が全体の30〜50%を占めていることがわかりました。

このデータを分析し、非稼働の時間帯に不必要な機器を停止する施策を講じることにより、省エネにつなげています。

このように電力の使用状況をモニタリングすることで、消費エネルギーの最適化を図ることが可能です。

HEMS|家庭エネルギーマネジメントシステム

「HEMS(家庭エネルギーマネジメントシステム)」とは、家庭で使用するエネルギーを把握し、家庭用設備を最適に管理するシステムです。

エアコンや照明器具などの家電のエネルギー使用量をモニターで可視化し、制御するために活用されます。

HEMSを設置すると、家電のエネルギー使用量を抑えることが可能です。

実際に北海道で200世帯を対象としたHEMSの省エネ効果に関する実証実験では、ガス消費量が14%、電力消費量が6%削減されました。

そのため、政府は2030年までに約5,000万戸にHEMSを設置することを目標としています。(2020年度:73万戸に設置済み)

参考:株式会社住環境計画研究所|新築住宅に導入されたHEMSの省エネ効果に関する実証研究

CEMS|地域エネルギー管理システム

CEMS(地域エネルギー管理システム)は、地域全体のエネルギーの最適化を実現するシステムです。

複数の建物や施設が集まるエリアで、電力供給と需要のバランスを取り、再生可能エネルギーの活用を促進しながら効率的なエネルギー利用を目指します。

たとえば、岩手県の北上新電力は、メガソーラーや電力会社から電力を買い、それを地域の小中学校や庁舎、交流センターなどに売電しています。

この電力の売買において、地域の需要を管理するのが、CEMSになっています。地域の電力需要を管理し、北上新電力と連携して必要な施設に最適なエネルギーを送電できるようにしているのです。

CEMSは、地域全体のエネルギー効率を向上させ、環境負荷の軽減や既存の発電所への依存を減らすことができます。

参考:公益財団法人 東北活性化研究センター|東北におけるスマートコミュニティの構築に関する調査研究 報告書

MEMS|マンションエネルギー管理システム

MEMS(マンションエネルギー管理システム)は、マンションの電力の使用量を見える化できる機器です。

マンション全体の電力の使用状況を目視で確認できるため、空調をコントロールして節電につなげるといった対策が可能になります。

その事例として、電力中央研究所の千葉県船橋市のマンションに居住する500世帯を対象に行なったMEMSの実験を紹介します。

実験では500世帯全員が電力の使用量を見える状態にしました。そして月に一度節電レポートを配布したようです。

その結果、エアコンの使用が増える時期(夏・冬)には、1割の節電効果が見込めました。マンション全体でエネルギー管理を行うと、節電効果が期待でき、CO2排出量の削減につながります。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)のメリット

エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、エネルギーの使用効率を最適化し、コスト削減や環境保護に貢献するシステムです。

以下に主なメリットを紹介します。

  • エネルギーコストを削減できる
  • 環境保護にもつながる
  • 企業のブランディングにつながる

それぞれの順番に見ていきましょう。

エネルギーコストを削減できる

エネルギーコストの削減は、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の大きなメリットのひとつです。

たとえば、牧方市にある坂本精器株式会社では、エネルギーマネジメントシステムを導入して、冬の空調設備の電力量が多いことを突き止めました。

さらに詳細に調査したところ、空調設備と加工機器を同時に稼働させていたことが大きな原因だと判明しました。

空調設備は、従業員と協議して決定した上で快適性を損なわない温度に制御を実施。そして、加工機器を段階的に稼働させることで、導入前より17.2%の電力使用を削減しました。

EMSを導入すると、空調や照明などのエネルギー消費をリアルタイムで監視し、必要に応じて最適な制御を行えます。無駄な消費を抑え、ビル全体の運営コストを効果的に削減できます。

参考:大阪府|エネルギーマネジメントシステム(エネマネ、EMS)で省エネ&コスト削減!

環境保護にもつながる

エネルギーマネジメントシステムの導入を導入すると、環境保護への貢献も期待できます。

建物のエネルギー消費量を最適化させると、Co2の排出量を減らせるためです。経済産業省による株式会社パルコスペースシステムズの事例を紹介します。

同社はエネルギーマネジメントシステムを導入して、店舗にかかる空調や照明などの省エネ対策を行いました。その結果、照明・コンセントの電力量を33.6%、空調の電力量を27.1%削減しました。

エネルギーマネジメントシステムの導入により、電力量を削減すると、Co2の排出量を減らすことが可能です。そうして、環境に配慮したビル運営を行えます。

企業のブランディングにつながる

エネルギーマネジメントを実施すると、企業はエネルギー効率を向上させ、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献できます。

この取り組みを対外的に公表すれば、環境や社会に対して積極的に貢献しているとして、企業の評価が高まり、イメージの向上につながります。

とくに持続可能性を意識する消費者や投資家に対して、社会的責任を果たす企業としてブランディングできるでしょう。

企業としてのイメージを確固たるものにするために、エネルギーマネジメントシステムは重要です。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)のデメリット

エネルギーマネジメントシステムにもデメリットはあります。

ここでは2つのデメリットについて紹介します。

  • 導入コストが高額になりやすい
  • 技術やシステムのメンテナンスが難しい

それぞれのデメリットの対策を講じて、導入を検討してみましょう。

導入コストが高額になりやすい

エネルギーマネジメントシステムの導入には、ビルOSやIoTセンサーの存在が欠かせません。

しかし、これらの導入では初期費用が高額になりがちです。

たとえば、京都にある脳神経リハビリ北大路病院(4階建て 延べ2,776㎡)では、324万円でBEMSを導入しました。病床数56床の病院で、空調機の入れ替えとセンサーの設置を行っています。

他にも、京都のスーパーマーケットでは空調や照明を入れ替えましたが、BEMS導入費用として279万円の費用をかけています。

事例の企業では自治体の補助金を活用しており、費用をおさえて導入しています。導入検討段階で、自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。

参考:脳神経リハビリ北大路病院|BEMS導入について
参考:BEMS 普及コンソーシアム京都|BEMS導入ガイドブック

技術やシステムのメンテナンスが難しい

エネルギーマネジメントシステムの中枢を担うシステムには、高度な技術が使用されています。

そのため、メンテナンスが難しい場合が多くあります。

システムに連動したIoTセンサーや、ソフトウェアのメンテナンスには、専門知識が必要になります。日常的な管理が難しいケースも少なくありません。

そのため、システムの維持管理には、専門の業者からのサポートを受けることが推奨されます。

専門業者による定期的な点検や更新を通じて、システムを安定して運用することが重要です。

まとめ

この記事では、エネルギーマネジメントシステムの種類とメリット・デメリットなどを紹介しました。

各エネルギーマネジメントシステムは、高度な技術を用いてデータを収集し、エネルギー使用量を管理します。

ただし、エネルギーコストの削減や環境保護などのメリットがある一方で、コストが高額になりやすいデメリットもあります。

導入を検討しているなら、一度専門の企業などに相談してみるとよいでしょう。

株式会社メンテルでは、エネルギーマネジメントシステムをサポートするソフトウェアを開発・提供しています。この機会にエネルギーマネジメントシステムについて、ぜひ一度ご相談ください。

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