コンピュテーショナルデザインとは?メリットやツールも紹介

コンピュテーショナルデザインとは?メリットやツールも紹介

コンピュテーショナルデザインとは、コンピューターが建物の設計プランを自動生成する技術です。

この技術を利用すれば、建設にかかる作業時間やコストを削減するとともに幅広いデザインニーズに対応できます。

しかし、機能やメリットなどを正しく理解していなければ、うまく活用するのは難しいでしょう。

本記事では、コンピュテーショナルデザインのメリットやツール、事例を紹介します。

建物の建設にコンピュテーショナルデザインを取り入れたいと検討している企業の担当者は、ぜひ最後までお読みください。

目次

コンピュテーショナルデザインとは

コンピュテーショナルデザインとは、コンピューターが建物の設計やコンセプト、シミュレーションなどを自動生成する技術です。

コンピューターが複数の設計プランを自動生成してくれるため、多くのプランから最適な選択ができます。

また、人間の発想では思いつかないユニークなデザインも創造可能です。コンピュテーショナルデザインは比較的新しい技術ですが、その有益性により建築や機械設計など幅広い分野で注目されています。

コンピュテーショナルデザインのメリット3選

コンピュテーショナルデザインのメリット3選

コンピュテーショナルデザインのメリットは以下の3つです。

  • 設計作業を効率化できる
  • コストを削減できる
  • 幅広いデザインニーズに対応できる

詳しく見ていきましょう。

1. 設計作業を効率化できる

コンピュテーショナルデザインを活用すると設計作業を効率化できます。従来は設計者が手作業で図面を描いていたため、設計作業に時間がかかりました。

しかし、コンピュテーショナルデザインを利用すれば、短時間で複数の設計プランを生成するため時間短縮につながります。

たとえば、柱の設計の場合は、コンピューターが強度やコスト、配置などを複数のパターン別に設計します。

また、設計の初期段階で複数のプランを生成すると、多くの選択肢を検討できるため、比較したうえで最適な設計プランを抽出可能です。

2. コストを削減できる

コストを削減できるのもコンピュテーショナルデザインの魅力のひとつです。設計作業の効率化によって設計期間が短縮されるため、人件費を削減できます。

また、コンピューターの精密なシミュレーションにより設計ミスを事前に発見できるので、修正作業のコストも削減可能です。

さらに、設計段階での試行錯誤により材料の無駄を減らすと、建設コスト全体の最適化につながります。

3. 幅広いデザインニーズに対応できる

コンピュテーショナルデザインは、人間では思いつきにくいデザインも設計できるため、幅広いニーズに対応できます。

また、顧客のニーズに合わせて大量のデザインを素早く設計することが可能です。設計の時間がなくても顧客が求めるデザインを提供できます。

独自性の高い建物を時間をかけずに建設できるので、ブランドイメージの向上にもつながるでしょう。

コンピュテーショナルデザインができるツール3選

コンピュテーショナルデザインができるツール3選

コンピュテーショナルデザインができるツールは次の3つです。

  • Rhinoceros(ライノセラス)
  • Grasshopper(グラスホッパー)
  • Dynamo(ダイナモ)

一つひとつ見ていきましょう。

1. Rhinoceros(ライノセラス)

Rhinoceros(ライノセラス)は、NURBS(ナーブス)による3次元モデリングツールです。

NURBSカーブやサーフェスにより、自由度の高い3次元モデルを作成できます。

NURBSとは

Non -Uniform Rational B-Splineの略称。曲線や曲面を生成するための、コンピューターグラフィックス。

Rhinocerosの主な機能は以下のとおりです。

  • 曲線の生成・編集
  • サーフェスの生成・編集
  • オブジェクトの変形操作
  • モデリング支援機能
  • メッシュの生成・編集

Rhinocerosは建築分野だけでなく、航空機や医療機器などさまざまな分野で活用されています。

興味のある方は90日間無料のお試し期間を利用して、使用感を確かめてみてください。

2. Grasshopper(グラスホッパー)

Grasshopper(グラスホッパー)は、Rhinoceros上で作動するビジュアルプログラミング言語です。

データ処理性能が高いため、膨大な数のシミュレーションを実行できます。

Grasshopperの主な機能は次のとおりです。

  • Rhinoオブジェクトへの変換
  • 演算機能
  • サーフェスのUV分割
  • 回転配置
  • モーフィング

Grasshopperは、建築や都市計画、ジュエリーデザインなど多くの分野で利用されています。

導入コストがかかりますが、設計作業の効率化と新しいデザインの創造が期待できるでしょう。

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3. Dynamo(ダイナモ)

Dynamo(ダイナモ)は、Autodeskが提供しているビジュアルプログラミングツールです。主に建築や土木、製造などの分野で利用されています。

ノードといわれる図形をつなぎ合わせてプログラムをつくれるため、プログラミング経験がなくても直感的な操作が行えるように設計されています。

Dynamoの主な機能は以下のとおりです。

  • ビジュアルプログラミング
  • 作図
  • モデリング
  • データの抽出
  • BIM連携

Dynamoを用いると、プログラミング言語を書く手間が省けるため、開発期間やコストの削減につながります。

大手建設会社のコンピュテーショナルデザインへの取り組み事例

大手建設会社のコンピュテーショナルデザインへの取り組み事例

大手建設会社のコンピュテーショナルデザインへの取り組み事例を3つ紹介します。

  • 清水建設の取り組み事例
  • 竹中工務店の取り組み事例
  • 長谷工の取り組み事例

事例を参考にコンピュテーショナルデザインを取り入れた際のイメージを明確にしてみてください。

清水建設の取り組み事例

Shimz DDE
出典:Shimz DESIGN

清水建設はコンピュテーショナルデザインと、創業から培ってきたものづくりのDNAを融合させ、独自のデジタルプラットフォーム「Shimz DDE」を構築しています。

Shimz DDEのビジョンは次の3つです。

  • 組織で共有するシミズの『知』
  • デザインとエンジニアリングの高度な融合
  • 時代をリードする新たな設計プロセス

ベテラン設計者のノウハウと若手設計者の新しい価値観をデジタルプラットフォームに蓄積し、組織的に共有することを可能にしました。

また、さまざまな機能を1つのプラットフォームに集約することで、顧客の期待を超える最適な技術を提供しています。清水建設のコンピュテーショナルデザインへの取り組みによって、建築業界の未来を切り拓かれるでしょう。

参照:Shimz DESIGN

竹中工務店の取り組み事例

出典:竹中工務店

2010年ごろから竹中工務店では、建築設計においてコンピュテーショナルデザインを本格活用してきました。

人間の感性と合理性を融合させ、単なるシミュレーションではなく自然環境や人流などを考慮し、建物の快適性とデザイン性を両立することを可能としました。

その事例が「トヨタカローラ名神茨木店」です。竹中工務店は2018年8月に大阪府茨城市三咲町にある「トヨタカローラ名神茨木店」の施工を開始。

同店舗の課題は、いかに購入者の注目を集め来店を促すということ。そこで敷地の形状や周辺環境、インテリア効果など複雑な要素を満たせるよう考慮し、地面から屋上に直接上がれる店舗が設計されました。

コンピュテーショナルデザインによって「今までにないデザイン」の店舗設計と新しい顧客体験を生み出しました。

参照:竹中工務店|建築設計における情報革命最前線

長谷工の取り組み事例

長谷工グループの取り組み
出典:長谷工グループ

長谷工はコンピュテーショナルデザインを活用し、エビデンスに基づく高度な設計や建築手法を探求しています。

実際にコンピュテーショナルデザインを応用し、インスタレーションを「サスティナブランシェ本行徳」のエントランスホールに実装しています。

インスタレーションとは

1970年代以降に一般化した展示空間も含めて芸術とみなす表現手法。

人の動きや風の流れを感知して光の演出が表示されるため、エントランスホールを訪れる人にささやかな喜びをもたらすでしょう。

長谷工はコンピュテーショナルデザインの取り組みによって、建物が周囲の環境と対話するような、新しい建築表現を実現しています。

参照:長谷工グループ

まとめ

本記事では、コンピュテーショナルデザインについて解説しました。

コンピュテーショナルデザインを活用すれば、幅広いデザインに対応しながら建設コストや作業時間を削減できます。しかし、自社だけではコンピュテーショナルデザインを活用しきれない場合もあるでしょう。

株式会社メンテルは、組織設計・ゼネコン出身で環境設計の経験が豊富なプロが、実務に即した環境解析と設計支援を提供しています。

設計初期の段階から環境解析を実施することで、環境に配慮する工夫や設備選定に活かす最適解の提案が可能です。

コンピュテーショナルデザインに興味がある方は、ぜひ一度メンテルにご相談ください。

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