日本国内の環境認証について ーCASBEE認証ー

日本国内の不動産環境認証についてーCASBEE認証ー

不動産環境認証は国内外に様々な認証がありますが、日本で一番知名度がある認証はCASBEE認証であると言えるでしょう。

今回の記事では以下の流れに沿ってCASBEE認証について解説していきます。

  • CASBEE認証とは
  • CASBEE各認証について

ここからはそれぞれについて解説していきます。

目次

CASBEE認証とは

「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能で評価し格付けする手法です。

省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムです。

また、CASBEEの特徴として以下の3つの理念に基づいて評価が行われています。

  • 建築物のライフサイクルを通じた評価ができること
  • 「建築物の環境品質(Q)」と「建築物の環境負荷(L)」の両側面から評価すること
  • 「環境効率」の考え方を用いて新たに開発された評価指標「BEE(建築物の環境性能効率、Built Environment Efficiency)」で評価すること

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター CASBEEとは

CASBEE認証一覧

CASBEE認証の評価認証には以下のような種類があります。

  • CASBEE建築評価認証
  • CASBEE戸建評価認証
  • CASBEE不動産評価認証
  • CASBEE街区評価認証
  • CASBEEウェルネスオフィス評価認証

それぞれの概要について後半で個別に解説していきます。ここでは5つの種類があるということを認識しておくと良いでしょう。

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター CASBEEファミリーの構成

評価の仕組みと環境性能効率(BEE)

CASBEE認証には複数の認証があることは先ほど解説しましたが、評価の仕組みについては基本的に同じで、規模が異なることで追加項目が増えると認識しておくと良いでしょう。

2つの評価分野:QとL

CASBEEでは、敷地境界線を基準にして2つの空間に対しての評価の合計で判断されます。

Q:(Quality) 建築物の環境品質
 敷地内及び建物内の利用者がどれだけ快適に利用できるか

L:(Load) 建築物の環境負荷
 敷地外の空間に対してどれだけ環境負荷を掛けているか

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター <仮想閉空間の概念に基づく「Q建築物の環境品質」とL建築物の環境負荷」の評価分野の区分>

CASBEEで評価対象として選んだ4つの主要分野とその再構成

そして評価においては以下の4つの主要分野においての評価が行われる。

  • エネルギー消費(energy efficiency)
  • 資源循環(resource efficiency)
  • 地域環境(outdoor environment)
  • 室内環境(indoor environment)

そして、この4つの指標と2つの分類に再構成することで、環境性能効率(BEE)という数値化を行い比較・評価を行います。

環境性能効率(BEE)を利用した環境ラベリング

これまで整理してきた通り、Q(建築物の環境品質)とL(建築物の環境負荷)による数値を算出し、Qを分子、Lを分母にした数値を建築物の環境効率(BEE)として比較する。

このBEEを用いることにより、建築物の環境性能評価の結果をより簡潔・明確に示すことが可能となりました。Qの値が高く、Lの値が低いほど傾きが大きくなり、よりサステナブルな性向の建築物と評価されます。

また、グラフ上では建築物の評価結果をBEE 値が増加するにつれて、Cランク(劣っている)からB-ランク、B+ランク、Aランク、Sランク(大変優れている)としてランキングされます。

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター <仮想閉空間の概念に基づく「Q建築物の環境品質」とL建築物の環境負荷」の評価分野の区分>

認証機関

続いて認証機関ですが、CASBEE認証は一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センターが認定した期間が認証を行うことが出来ます。

2024年4月8日時点で14の企業が認定を受けています。

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター CASBEE評価認証認定機関一覧

認証の流れ・審査期間

上記では5つの認証を紹介しましたが、おおむね以下のような流れで進んでいきます。

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター CASBEE建築評価認証 申請要領

また、審査機関についておおむね申請受理後3か月以内に終了するとしており、別途追加指摘都がある場合にはこれを超えることがあります。

参照:一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター CASBEE建築評価認証 申請要領

取得によるメリット

CASBEE認証の取得によるメリットは大きく以下の3つに挙げられます。

  • 日本における不動産環境認証では一番著名で認証件数も一番多いため、社会一般での当該不動産に対する環境認証の評価を受けることができる
  • 区分所有の物件においては部分的に認証を取得することも可能ため、個人での取得や法人による段階的な回収に合わせた認証取得が可能となる
  • 環境性能と同時に居住者の快適性と健康を重視することで、利用者の生活の質を向上させることに焦点を当てていることから、エネルギー効率だけでなく室内空間での生産性などを含めた評価を受けることができる

取得費用

取得費用については、取得する評価・物件の規模・用途の数・申請する認定企業によってそれぞれ異なります。

今回は、CASBEE不動産評価について4社での比較を行いました。

申請建物の延床面積用途A社B社C社D社平均
1万㎡未満単一用途100,000円100,000円88,000円110,000円約10万円
複合用途用途が増える毎に
+50,000円
用途が増える毎に+50,000円用途が増える毎に+33,000円用途が増える毎に+55,000円約5万円
1万㎡以上
5万㎡未満
単一用途150,000円150,000円148,500円165,000円約15万円
複合用途用途が増える毎に+75,000円用途が増える毎に+50,000円用途が増える毎に+49,500円用途が増える毎に+82,500円約7万円
5万㎡以上単一用途200,000円150,000円198,000円220,000円約20万円
複合用途用途が増える毎に+100,000円用途が増える毎に+50,000円用途が増える毎に+66,000円用途が増える毎に+110,000円約8万円

会社によって申請内容が大きく異なるという種類の作業ではないため、大きな価格の際はないものの、安くはない費用が掛かることがわかるかと思います。

有効期間

有効期間については認証によってそれぞれ異なります。

対象認証期間
CASBEE-建築(新築)5年間
CASBEE-建築(既存)5年間
CASBEE-戸建3年間
CASBEE-不動産5年間
CASBEE-ウェルネスオフィス5年間
CASBEE-街区5年間

戸建については3年間、それ以外の認証については5年間が有効期間となります。

CASBEE各認証について

ここからはそれぞれの認証のランクに応じた取得事例について紹介していきます。

CASBEE建築評価認証

CASBEE建築評価認証は、CASBEE-建築(新築)などで評価された建築物について、その評価内容を審査し的確であることを第三者機関が認証する制度です。

対象となるのは延べ面積が300平米以上の建築物であり、かつ下の評価ツールのいずれかで評価されたものです。

  • CASBEE-建築(新築)
  • CASBEE-建築(既存)
  • CASBEE-建築(改修)

用途についての制限は特にないため、オフィス、工場、商業施設等あらゆるアセットに対して取得することが出来ます。

実際にSランクを取得している物件の一例は以下の通りとなります。

アセット物件名称認証先BEE竣工時期エリア
オフィス(仮称)KONOIKEテクノセンター新株式会社 鴻池組3.12021年10月大阪府
工場(仮称)大阪府茨木市蔵垣内一丁目計画合同会社ユニーク3.42024年1月大阪府
ホテル別府温泉 杉乃井ホテル「宙館」オリックス不動産株式会社3.42022年10月大分県
事務所
集合住宅
麻布台ヒルズ 森JPタワー森ビル株式会社4.22023年6月東京都

CASBEE戸建評価認証

戸建の認証の対象としては、敷地が確定している、居住用の新築一戸建専用住宅、及び内部で行き来のできる二世帯住宅を対象で、CASBEE-戸建(新築)により評価されたもの(展示用のモデルハウス等は対象から除く)となります。※新築とは竣工後3年以内までのものとします。

実際には公開されている件数が少ないため、それぞれのランクで1つずつ紹介していきます。

ランク物件名称認証先BEE竣工時期エリア
S吉野一戸建て分譲住宅昭和住宅株式会社3.22022年11月福岡県
A相生山駅の家ブラザー不動産株式会社2.02023年12月神奈川県

また、戸建認証の場合、すべてSランクもしくはAランクでの認証であるため、A-のランク以下については取得の効果はあまり無いと考えられます。

CASBEE不動産評価認証

CASBEE不動産評価認証の対象建築物は、竣工後1年以上の運用実績を有する建築物で、CASBEE-不動産により評価されたものとなります。

※建物規模は問いませんが、建物全体の床面積に対して一定割合以上、事務所、店舗、集合住宅、物流施設、改修用途の部分が含まれていることが必要です。

こちらについてもCASBEE建築と同様に用途の制限はありませんが、竣工していることが条件となります。※CASBEE建築の場合は計画認証と言って、計画の段階で取得できる場合があります。

実際にSランクを取得している物件の一例は以下の通りとなります。

アセット物件名称認証先BEE竣工時期エリア
オフィス(仮称)KONOIKEテクノセンター新株式会社 鴻池組3.12021年10月大阪府
工場(仮称)大阪府茨木市蔵垣内一丁目計画合同会社ユニーク3.42024年1月大阪府
ホテル別府温泉 杉乃井ホテル「宙館」オリックス不動産株式会社3.42022年10月大分県
事務所
集合住宅
麻布台ヒルズ 森JPタワー森ビル株式会社4.22023年6月東京都

CASBEE街区評価認証

CASBEE街区評価認証における対象地としては、CASBEE-街区を用いて評価した地区・地域であり、対象区域が「統一的整備意志」に基づいて計画されていることが客観的に確認できる区域であることが定められています。

具体的には当該プロジェクトの計画・整備に適用されている各種法令・制度・手法等で定められた計画区域・事業区域であることを原則とします。

※新規開発街区だけでなく、一部に既存街区が含まれている場合も申請可能です。

実際に認証を取得しているプロジェクトの一例は以下の通りとなります。

プロジェクト名申請者適用制度・事業対象区域面積場所
Suitaサスティナブル・スマートタウンパナソニック株式会社都市計画法上の開発行為23,465㎡大阪府吹田市
HARUMI FLAG三井不動産レジデンシャル株式会社他晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業 他133,906㎡東京都中央区
リストガーデンnococo-townリストデベロップメント株式会社26,282㎡神奈川県横浜市
Fujisawaサスティナブル・スマートタウン整備事業パナホーム株式会社 他土地区画整理事業 他93,127㎡神奈川県藤沢市
船橋スマートシェア・タウンプロジェクト三菱商事株式会社 他新船橋駅東地区地区計画111,597㎡千葉県船橋市

CASBEEウェルネスオフィス評価認証

CASBEE-ウェルネスオフィスは、建物利用者の健康性、快適性の維持・増進を支援する建物の仕様、性能、取組みを評価するツールで、建物内で執務するワーカーの健康性、快適性に直接的に影響を与える要素だけでなく、知的生産性の向上に資する要因や、安全・安心に関する性能についても評価されます。

実際にSランクを取得している物件の一例は以下の通りとなります。

物件名称認証先スコア竣工時期エリア
H¹O芝公園野村不動産75.22023年9月東京都港区
仙台市役所本庁舎仙台市80.82031年1月宮城県仙台市
技術開発センター太陽インキ製造株式会社76.32024年2月埼玉県比企郡
カゴメビルカゴメアクシス株式会社82.12022年5月愛知県名古屋

まとめ

CASBEE認証は日本で一番件数が多く認知度の高い環境認証の一つであり、新築だけでなく既存の建物や改修においても評価の対象と成ることから、直近でも認証取得の件数が増えております。

所有する物件でどの認証を取得するべきかどうか検討してみてはいかがでしたでしょうか。

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