日本国内の不動産環境認証について ーDBJ Green Building認証ー

日本国内の不動産環境認証について ーDBJ Green Building認証ー

今回は日本国内の不動産環境認証の「DBJ Green Building 認証」を解説していきます。

今回は以下の順番で解説していきます。

  • DBJ Green Building認証とは
  • DBJ Green Building認証 取得物件一例
  • DBJ Green Building 認証 オリジナル加点項目
  • まとめ

それではそれぞれ見ていきましょう。

目次

DBJ Green Building認証とは

DBJ Green Building認証は名称こそ英語ですが、認証自体は日本国内で有効なものです。今回はこの認証について以下の項目に分けて細かく解説していきます。

認証機関

DBJ Green Building認証の認証機関は2社による運営を行っています。

  • 運営者:株式会社日本政策投資銀行
  • 認証者:一般財団法人 日本不動産研究所

運営会社である株式会社日本政策投資銀行は2008年に設立された日本の政策投資銀行です。この銀行は、長期の事業資金に関連する投融資機能を提供し、資金供給の円滑化及び金融機能の高度化に従事しています。全額政府出資であり、本社は東京にあります。

参照:株式会社日本政策投資銀行​

次に認証者である一般財団法人日本不動産研究所は、1959年に設立された不動産に関する研究、鑑定、コンサルティングを行う機関です。公正・中立な立場から、不動産鑑定士や一級建築士などの専門家を擁し、不動産に関連する様々な調査や研究活動を行っています。

参照:一般社団法人日本不動産研究所

特徴としては政府系の金融機関が運営し、認証者も独立系の不動産研究所が行っていることから、金融系での知名度が高いことです。

概要

DBJ Green Building認証は、「環境・社会への配慮」がなされた不動産とその不動産を所有・運営する事業者を支援する取り組みとして2011年に創設された認証制度です。

不動産のサステナビリティをESGに基づく5つの視点から評価し、主に既存物件の環境性能改善に加え、建築・設計の技術的専門家に限られない不動産に携わる幅広い層のステークホルダーの対話ツールとして利用されています。

現在は〈オフィスビル〉〈ロジスティクス〉〈リテール〉〈レジデンス〉という代表的な4つのプロパティにおいて展開しています。

参照:DBJ Green Building認証 GB認証とは?

認証の流れ

認証の流れとしては上記の流れに沿って進められます。全体としては最初のスコアリングシートの提出からおおむね2~3か月で認証付与まで進んでいきます。

参照:DBJ Green Building認証 認証の流れ

評価項目

評価項目については大きく5つのカテゴリーに分かれており、それぞれ以下の通りとなります。

項目内容
建物の環境性能省エネルギー・省資源(省エネ性能・再エネ・節水 等)
危機に対する対応力環境リスク対応・防犯対策・防災対策(耐震性能・備蓄・警備体制 等)
ステークホルダーとの協働パートナーシップ・情報開示(対話・啓発活動・ディスク支援 等)
多様性・周辺環境への配慮景観、利用者多様性、地域との関わり(緑化 等)
テナント利用者の快適性建築性能・利便性・空間の快適性(設備仕様・環境・健康配慮 等)

取得による個別効果

他の環境認証でも取得すると、環境配慮された物件であるという一般的なイメージは取得できますが、今回はDBJ Green Building認証による個別の効果について解説していきます。

  • 周辺環境への配慮や管理体制に関する評価項目があり、管理体制の強化次第で既存物件での取得も可能な点
  • 災害リスクや周辺の利便性に関する評価項目があり、立地についても評価に大きく影響する点
  • 金融機関が主催する評価であるため、間接的に投資家及び金融機関への評価向上に繋がる点

認証件数

それぞれの認証件数は以下のとおりです。

対象件数
認証部件数2,150件
認証事業者数635社
申込物件数3,147件
平均築年数13.9年
最長築年数95.6年
※2023年3月時点

アセットについては住宅が最多でオフィスと商業、物流と続いていきます。

認証ランク

認証ランクについては5段階となっており、それぞれ以下のように分類される

ランク内容
★★★★★国内トップクラスの卓越した「環境・社会への配慮」がなされたビル
★★★★極めて優れた「環境・社会への配慮」がなされたビル
★★★非常に優れた「環境・社会への配慮」がなされたビル
★★優れた「環境・社会への配慮」がなされたビル
十分な「環境・社会への配慮」がなされたビル

取得費用

申請費用については2024年3月時点では60万円/件(税別)となります。外部事業者に資料作成や申請代行を行う場合には別途費用が掛かります。

DBJ Green Building認証 取得物件一例

次に、DBJ Green Building認証を取得物件をいくつか紹介していきます。それぞれランク及びアセット別に解説していきます。

★★★★★の取得物件の一例

アセット物件名称認証先延床面積竣工時期エリア
オフィスビル大手町フィナンシャルシティ
グランキューブ
三菱地所(株)191,440㎡2016/4/1東京23区
住宅ROPPONGI PLACIC清和総合建物(株)7,808㎡2014/1/1東京5区
商業三井アウトレットパーク
滋賀竜王 南モール
三井不動産(株)32,654㎡2010/5/1関西
物流S・LOGI 新座 WEST清水建設プライベートリート投資法人131,973㎡2019/8/1関東

★★★★の取得物件の一例

アセット物件名称認証先延床面積竣工時期エリア
オフィスビルダイヤゲート池袋西武鉄道(株)49,662㎡2019/2/28東京23区
住宅ベルファース尼崎オリックス不動産投資法人11,354㎡2009/2/1関西
商業イオンモールかほくイオンリート投資法人70,948㎡2008/9/1中部
物流プロロジスパーク尼崎2日本プロロジスリート投資法人33,335㎡2007/3/30関西

★★★の取得物件の一例

アセット物件名称認証先延床面積竣工時期エリア
オフィスビル名古屋錦フロントタワー日本オープンエンド不動産投資法人14,576㎡2006/4/1中部
住宅KDX代官山レジデンスケネディクス・レジデンシャル・ネクスト投資法人8,192㎡2003/2/10東京5区
商業MEFULL巣鴨野村不動産(株)1,233㎡2021/3/1東京23区
物流GLP柏日本GLP(株)148,453㎡2006/7/30関東

他にも認証されている物件については、DBJ Green Building認証物件一覧ページに掲載されているので、気になる物件がどんなランクを取得しているか、どんな物件が取得しているかどうかを調べてみても良いでしょう。

参照:DBJ Green Building認証物件一覧

DBJ Green Building 認証 オリジナル加点項目

DBJ Green Building 認証ではそれぞれのアセットにおいて70以上の項目に回答することでそれぞれのランクが決定されます。

DBJ Green Building 認証においてオリジナル加点項目について解説していきます。

これは他の認証では加点とならないものも多いため、対象物件の特徴を踏まえて申請することが良いでしょう。

ただし、この加点についてはDBJに問い合わせしたところ完全クローズのため、どの項目がどれだけ加点されるかどうかは全体を通じて最終的な評価につながるという回答でした。

オリジナルの加点項目は以下のとおりです。

  • ペット共存型マンション
  • 最寄駅から徒歩5分
  • 最寄りコンビニから徒歩5分
  • 敷地内完全禁煙
  • 地元イベントの主催
  • 共用部アロマ・音楽

ここからはそれぞれについて解説していきます。

参照:DBJ Green Building認証 2023年版モデル スコアリングシート v1.0

ペット共存型マンション

ペット共存型マンションとは、ペットを飼うことを前提として設計されたマンションの事を指します。ペットと住民が快適に暮らせるように、共用部や専有部のそれぞれに便利な設備が揃っていることが特徴です。

  • ペット共存型マンションには以下のような特徴があります。
  • 玄関口にペット用の足の洗い場がある
  • ドッグランが用意されている
  • 猫用のキャットウォークが設置してある
  • くぐり戸が設置されている
  • ペット対応床材が使用されている

実際にどこまで実施するとペット共存型マンションとみなされるかは個別でのインタビューにもよりますが、上記のうち2~3個は実現しておくと良いでしょう。

最寄駅から徒歩5分

オフィス、商業、レジデンスに対しては、最寄駅からの距離が加点項目となります。

これは建物というより土地による加点項目となるので、不動産環境認証においては、対象地のポテンシャルを活かした評価を受けることが出来るかなり珍しいポイントといえるでしょう。

敷地内もしくは最寄りコンビニから徒歩5分

コンビニに関してはオフィス、商業、レジデンス、物流のすべてのアセットにおいて加点項目となります。

特に、オフィス、商業、物流においては敷地内にあること、レジデンスの場合には徒歩5分以内にあることで加点となります。

これも他の不動産環境認証にはない項目で、特にレジデンスの場合には完全に外部環境に影響を受ける項目となります。

敷地内完全禁煙

禁煙に関してもオフィス、商業、レジデンス、物流のすべてのアセットにおいて加点項目となります。

健康促進という観点も重要であり、特に子供が同居するレジデンスや商業では喫煙所についても完全分離が望ましく、レジデンスやオフィスのような相対的に喫煙者が増えるアセットにおいても受動喫煙を回避する喫煙所の設置が求められます。

地元イベントの主催

地元イベントの主催に関してはオフィス、商業、レジデンスにおいて加点項目となります。

条文としては、「地域との対話を通じ、環境保護、地元イベントの主催、または同イベントへの参加等を行っている。(町会への参加だけでは不可。コメント欄に具体的に記載ください)」とあります。

特にディベロッパー等、地域とのつながりを重要視するオーナーにおいては持続的に地元向けのイベントが実施されるような仕組みを作ることが重要であると言えるでしょう。

共用部アロマ・音楽

共用部アロマ・音楽に関してもオフィス、商業、レジデンス、物流のすべてのアセットにおいて加点項目となります。

空間において植物などの緑を置くことによる精神的な効果は誰もが感じるところかと思いますが、これらに加えてアロマや共用部の音楽についても加点項目となります。

エレベーター内の音楽に関しては、利用者が乗っている時間を短く感じるという効果があるため、導入において加点項目となるということです。

まとめ

DBJ Green Buildingは金融機関系の認証である一方で、加点項目に関しては定性的なものが多いということが意外だったのではないでしょうか。

このことから、日本政策投資銀行や不動産研究所も単純なマネーゲームに使われる認証ではなく、住民や地域のためになる事項に対しても評価することで、金融商品としての見方以外の評価を受けやすくなるような社会への導きという考えがうかがえます。

今後も不動産環境認証についても記事作成を続けていきますので、引き続きご連ら頂ければと思います。

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