工場内は広い空間のため冷房が効きづらく、稼働中の機械や照明から大量の熱が発せられることにより、温度が上昇しやすくなっています。
その原因には空調設備の性能不足だけでなく、冷房が行き渡りやすい環境をつくれていないこともあります。
つまり、空調設備そのものを改善しなくても運用を見直すと、工場内の温度上昇を抑え、電気代を削減することは可能です。
そこで本記事では、工場の空調を改善する7つの方法や注意点などを解説します。

空調と省エネを支援し続けてきた株式会社メンテルが、明日からでも労働環境の改善や電気代の削減ができる対策を述べていますので、ぜひ最後までお読みください。
工場の空調を改善する7つの方法
工場の作業環境を快適にし、光熱費を抑えるには効果的な空調管理が必要です。適切な温度管理を行うと、従業員の工場の空調を改善する方法は次の7つです。
明日からでも労働環境を改善できるようになりますので、ぜひチェックしてみてください。
1. スポット空調を導入する
スポット空調とは、特定のエリアや作業者の周辺だけを集中的に冷却する空調方式です。
工場全体ではなく、温度管理が必要なエリアをピンポイントで冷やすため、エネルギーを効率的に使えるようになります。


スポット空調を活用すると、工場全体を一括で冷暖房する方法と比べて最大78%の省エネが可能です。
2. 自動空調システムを導入する
自動空調システムとは、温度や湿度、熱源などをセンサーで検知し、最適な運転を自動的に行う制御システムです。
同システムを導入すると、無駄な稼働を防ぎ、省エネと快適性を両立できます。従来はタイマーや手動での調整をすることが多く、必要のない時間帯やエリアも稼働し続ける課題がありました。



しかし、たとえば、AIやIoTセンサーを用いると、高効率な運転パターンを学習するため、管理人の負担や電気代を削減することが可能です。
上記については「空調最適化とは?AIを用いた省エネの手法と従来の空調制御との違いを解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
3. ビニールカーテンで空間を仕切る
ビニールカーテンや間仕切りで空間を仕切るのは、低コストで冷房効率を高められる手段です。
作業エリアごとに仕切ると、冷気を必要な範囲に留められ、設定温度を無理に下げなくても作業者が快適に感じられる環境を維持できます。
ビニールカーテンは10m×4mサイズで約14万円で購入できるので、比較的低コストで導入することが可能です。
4. 断熱フィルム・断熱塗装を活用する
屋根・窓に断熱フィルムや断熱塗装を施すと、外部からの熱を低減でき、空調効率を改善できます。
工場内の温度上昇の原因のひとつは、屋根や窓からの輻射熱です。太陽光が直接当たる面から熱が室内に伝わることで温度が上昇し、冷房の効きが悪くなります。
屋根・窓に遮熱性の高い塗料やフィルムを施工すれば、夏場は外部からの熱の侵入を抑え、冬場は室内の熱を逃がしにくくできます。
断熱フィルムや断熱塗装は既存の建物の外装を活かすため、改修工事なしで取り入れることが可能です。
5. 大型ファンやシーリングファンを活用する
大型ファンやシーリングファンを活用すると、空気を効率的に循環させ、工場内の温度ムラを防ぎながら電力消費を抑えられます。
工場のような広くて天井が高い空間では、冷気や暖気が偏りやすく、冷暖房効率が低下しがちです。
ファンを稼働させると室内の空気が循環し、天井付近に溜まった暖気や床面の冷気を均一にかき混ぜられます。
空気の流れが整うと、エアコンの設定温度を大きく変えなくても、体感温度が下がり、快適性が向上します。
6. 熱の発生源には吸排気フードを設置する
機械や生産ラインなどの熱源付近に吸排気フードを設置すると、室温の上昇を抑えられ、空調効率を改善できます。
機械やライン設備が稼働すると、大量の熱が工場内に発生するため、空調の負荷が増大し、冷却効率が著しく低下します。
熱を発する機器の真上や周囲に吸排気フードを設置すれば、発生した熱や蒸気を外部へ排出することが可能です。
局所的な換気設備を見直すと、工場内の温度を安定させられます。
7. 湿度管理を徹底する
暑さ対策には湿度管理も重要です。
同じ気温であっても湿度が高いと汗が蒸発しにくくなるため、体感温度が上がって不快感が増します。
作業員が「暑い」と感じれば、エアコンの設定温度を下げてしまい、電気代が高くなる原因となります。そのため、除湿により設定温度を変えずに体感温度を下げる取り組みが必要です。
除湿機能付きの空調システムや除湿機を適切に活用すれば、快適性と省エネの両立が可能です。
工場が暑くなりやすく冷えにくい主な原因
工場の温度管理が難しい原因は、構造や設備によるものです。以下の原因への理解が、適切な空調の改善策を講じることにつながります。
広い空間や高い天井で冷気が行き渡りにくい
広い空間や高い天井の建物は、冷気が全体に行き渡りにくく、冷房効率が低下しやすくなります。
冷たい空気は重いため床付近に溜まりやすく、天井付近の暖かい空気と混ざりにくい構造です。
その結果、空気の対流が起きにくくなって、床付近だけが冷えすぎたり、エリアごとの温度ムラが生じたりします。
機械やライン設備の熱で室温が上がりやすい
工場内の機械や生産ラインから発生する熱は、室温が上昇する要因のひとつです。
長時間連続で稼働する機械や、設備が密集した環境では、熱がこもりやすくなります。
内部の発熱量が大きいと、空調で冷やしても設定温度まで室温が下がりにくくなります。
断熱や遮熱が不十分で外の熱が入りやすい
建物の断熱や遮熱対策が不十分だと、外部からの熱が室内に侵入しやすく、冷房効率を大きく下げてしまいます。
ほとんどの工場は金属製の外壁や屋根を使用しており、太陽光の熱を吸収しやすい構造です。
その熱が輻射熱となって室内に伝わることで、温度が上昇しやすくなります。また、窓やシャッター部分は外部の熱が侵入する主要な経路です。
断熱性能が低いと、空調設備が常にフル稼働し、冷却効率が悪化するとともに電力消費も増加します。
工場の空調を改善するメリット


工場の空調を改善するメリットは、次の3つです。
順番に解説していきます。
生産効率の向上につながる
工場の空調を改善すると、従業員の集中力と作業スピードが向上し、生産効率を高められます。
快適な温度環境は、作業中の疲労や不快感を軽減し、ミスの減少や品質の安定につながるでしょう。
さらに、適切な温度管理は機械の稼働にもよい影響を与えます。設備の過熱を防ぐことで故障リスクを減らし、熱による製品の品質低下も防げます。
従業員の安全性が高まる
空調を改善すると、従業員の熱中症や体調不良のリスクを大幅に減らせます。
工場での熱中症は深刻な問題となっており、適切な空調管理はその発生を防ぐために必要です。
安全で快適な職場環境の提供は、労働安全衛生上の義務であると同時に、従業員のモチベーション維持にもつながります。定着率の向上や離職防止にもつながるでしょう。
光熱費削減と省エネにつながる
工場の空調の運転効率を高めると、電気代の削減と省エネが可能です。無駄な稼働を抑えると、消費電力を減らし、毎月の光熱費を抑制できます。



さらに、AIやIoTを活用したシステムを導入すれば、エネルギーの無駄を排除できます。
電力コストの削減だけでなく、CO2排出量の低減にもつながるでしょう。
長期的なコストダウンと環境負荷の軽減を実現する方法は「工場の空調を省エネにする方法5つ!光熱費削減の施策を紹介」で詳しく紹介しています。
工場の空調を改善する際の注意点


工場の空調を改善するには、事前に注意すべき点が2つあります。計画段階で以下を考慮に入れることが重要です。
設備投資や導入に費用がかさむ
高性能な空調システムや大規模設備を導入する場合、本体価格をはじめ、設置工事費も発生します。
- 本体価格:15〜90万円
- 設置工事費用:4〜21万円
上記のように総額で100万円近くになるケースも珍しくありません。高効率な空調設備はランニングコストを抑えられる反面、導入時のコストは高くなりがちです。
そのため、補助金を活用して初期費用の負担を抑えることが重要です。
レイアウトの調整が必要になる
空調効率を最大限に引き出すためには、工場内のレイアウト調整が求められます。
スポット空調やビニールカーテンの設置、ファンによる空気循環を最適化する際には、機械や配管の配置が風の流れを妨げないかを確認する必要があります。
また、熱を発生する機械の周囲では、排気・換気経路の確保も大切です。レイアウト全体を見直すと、空調の効果を最大化でき、快適で省エネな作業環境を実現できます。
工場の空調を改善する際に活用できる補助金制度
国や自治体の補助金制度を活用すると初期費用を抑えることが可能です。高効率な空調設備の導入や、省エネを目的とした改修工事は、多くのケースで補助対象です。
たとえば、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)が運用する「省エネ補助金」では、高効率空調機器や産業ヒートポンプの導入を支援しています。
補助金は毎年公募されるため、導入を検討する際は申請要件やスケジュールを事前に把握しておくことが大切です。
工場の空調改善に関するよくある質問
工場の空調改善に関するよくある質問にお答えします。
- 工場内での熱中症対策はどうすればいい?
- 暑すぎる職場は法令違反になりますか?
順番に見ていきましょう。
工場内での熱中症対策はどうすればいい?
空調設備の強化に加え、大型ファンやスポット空調を活用して空気を循環させ、温度ムラを防ぐことが効果的です。また、従業員には水分・塩分補給や休憩時間の確保を徹底しましょう。
まとめ|工場の空調の改善ならメンテルにご相談ください
工場の空調改善は、生産効率の向上や従業員の安全確保、光熱費の削減につながる重要な経営課題です。
AIやIoTセンサーを活用した空調を取り入れると、最適な稼働を自動で行って、エネルギーコストを抑えた運用を実現できます。
最適な空調改善を行うためには、現場の状況を正確に分析し、導入コストと運用効果を見極めることが大切です。
株式会社メンテルでは、AIとIoTを活用したソリューションにより、工場内の温度環境を細かく制御し、効率的で快適な空調運用をサポートしています。
工場の暑さや電気代でお悩みの際は、ぜひ一度株式会社メンテルにご相談ください。