建築におけるアルゴリズミックデザインとは?事例・メリットを解説

建築におけるアルゴリズミックデザインとは?事例・メリットを解説

「アルゴリズミックデザインってなに?」
「具体的なメリットが知りたい」

このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

建築におけるアルゴリズミックデザインとは、建物の形状や空間をアルゴリズム(計算手法)によって生成する設計手法です。

従来の設計手法の限界を超え、創造性を大きく飛躍させる可能性を秘めています。

本記事では、建築におけるアルゴリズミックデザインの基本や具体的なメリット、活用事例を解説します。

建築計画に新たな視点を取り入れたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

アルゴリズミックデザインとは

アルゴリズミックデザインとは、コンピューターのアルゴリズム(問題解決の手順や計算方法)を用いて建物の形状や空間を設計する手法です。

設計者は図面を書くのではなく、あらかじめ設計ルールや形をつくる手順をコンピューターに指示。そのルールに従ってコンピューターが建物の形を自由につくったり、条件に合わせて変えたりします。

建築分野では、流動的なフォルムの建築デザインや、日射や風向きなどの環境条件に応じて調整可能な外壁デザインなどに活用されています。

建築にアルゴリズミックデザインを取り入れるメリット

建築にアルゴリズミックデザインを取り入れるメリット

建築設計にアルゴリズミックデザインを導入するメリットは、以下の3つです。

  • 自由なデザインを形にできる
  • 設計の手間を減らせる
  • 合理的な設計でコストを抑えられる

詳しく見ていきましょう。

1. 自由なデザインを形にできる

アルゴリズミックデザインのメリットのひとつは、デザイナーの発想をそのまま形にできることです。

コンピューターのアルゴリズムを活用するため、従来の2D図面作成では難しかった複雑な曲線や立体的なフォルムも設計できます。

その結果、流動的で彫刻的な形状や、自然界(波紋・地形・葉脈)を模したデザインを、構造の合理性や施工性を確保しながら設計可能です。

生成のプロセスが柔軟なので、設計段階から構造や設備、環境解析のフィードバックを取り入れやすく、有機的で独創的な建築を形にできます。

2. 設計の手間を減らせる

建築にアルゴリズミックデザインを取り入れると、設計にかかる時間や労力を減らすことが可能です。

アルゴリズムに基づいた設計では、建物の高さや開口部の配置、部材寸法などのパラメーターを変更すると、それに関連する図面や3Dモデルが自動で更新されます。

たとえば、建物の高さや窓の位置や面積を変えた場合でも、ファサードの形状や日射シミュレーションなどが最適なものへ瞬時に一括反映されます。それにより手作業での図面修正や整合性のチェックの手間がほとんど不要になるでしょう。

さらに、複雑なパターン生成や反復作業を自動化できるため、設計者は創造的な検討や高度な判断が求められる仕事に集中できます。そのため、設計精度を維持しながら、バリエーションの拡大や短納期の対応が可能になります。

3. 合理的な設計でコストを抑えられる

アルゴリズミックデザインを用いると、設計を最適化できるため建設費と運用費を抑えることが可能です。

設計初期段階にアルゴリズムに建物の構造や環境条件、使用材料、コストなどを組み込むことで、無駄のない設計案を導き出します。

これにより建設段階では材料ロスを減らし、加工や施工の手間を軽減できます。

さらに外皮形状や開口配置の最適化によって空調や照明の負荷を抑えられ、建築後の光熱費や維持管理費の削減にもつながるでしょう。

建築にアルゴリズミックデザインを取り入れるツール

アルゴリズミックデザインには、形状生成やパラメーター制御に適した3Dモデリングツールを使用します。ツールの具体例は次のとおりです。

ツール名概要
Rhinoceros自由な曲線や曲面を持つ3Dモデルを精密に作成できるモデリングソフト。
GrasshopperRhinoceros上で動作するビジュアルプログラミングツール。アルゴリズムを組んで複雑な形状を生成・制御できる。

パラメーターを変更すれば瞬時に形状へ反映されるため、多様なバリエーションの検討や最適化を効率的に行うことが可能になります。

これらのツールは意匠性だけでなく、構造や環境条件の反映にも活用でき、設計の創造性と合理性を同時に高めます。

建築におけるアルゴリズミックデザインの活用事例

建築におけるアルゴリズミックデザインの活用事例を2つ紹介します。

  • 地下避難空間における最適設計|神戸大学
  • 自然と調和するファサードデザイン|東京大学大学院

順番に見ていきましょう。

地下避難空間における最適設計|神戸大学

神戸大学の研究では、南海トラフ地震の津波浸水区域に指定されている兵庫県南あわじ市福良地区の地下避難空間の設計において、アルゴリズミックデザインを活用しています。

避難経路や生活空間、食料、エネルギーの貯蔵、発電設備を備えた自律分散型の拠点を構築し、避難生活を営める環境を整えています。

アルゴリズムを用いて、避難動線や構造安全性、通風、換気、空間の配置などの要件を同時に解析し、最適化しているのが特徴です。

このことからアルゴリズミックデザインは意匠面だけでなく、防災や安全確保といった社会的課題の解決にも有効なアプローチといえます。

参考:アルゴリズム的手法を用いた地下避難空間の可能性の研究と提案 -淡路島福良地区を対象とした玉葱小屋の分布解析をパラメーターとして-

自然と調和するファサードデザイン|東京大学大学院

出典:隈研吾建築都市設計事務所|東京大学大学院 情報学環 ダイワユビキタス学術研究館

東京大学大学院情報学環の学術研究棟では、不燃処理した4種類の杉板をウロコ状に配置したファサードデザインが採用されました。

杉板の配置や出っ張りをランダムに変えることで、自然の「ゆらぎ」を感じさせる有機的な表情を生み出しています。

設計ではGrasshopperを使用し、設計者が1枚ごとの杉板を意図通りに配置できるよう、配置や角度調整、出っ張りの設定、干渉チェックを効率化するアルゴリズムを構築しました。

杉板の種類を数値で設定し、クリックするだけで出っ張りを変更できるインターフェースを作成。配置変更と干渉チェックを同時に実行できるため、BIMソフトで時間を要した作業を大幅に削減しています。

この事例は、アルゴリズミックデザインが単なる自動生成ツールではなく、複雑で手間のかかる作業を効率化するための有効な手段であることを示しています。

アルゴリズミックデザインに関するよくある質問

アルゴリズミックデザインに関するよくある質問にお答えします。

アルゴリズミックデザインとパラメトリックデザインの違いは?

アルゴリズミックデザインとパラメトリックデザインの違いは次のとおりです。

アルゴリズミックデザインパラメーター(変数)を操作して形状を変化させる手法
パラメトリックデザイン建物の形状を生み出すアルゴリズム自体を設計し、合理的なデザイン生成を可能にする手法

アルゴリズミックデザインにプログラミングスキルは必要?

アルゴリズミックデザインでは、プログラミング知識があると設計の幅が広がります。Grasshopperのようなビジュアルプログラミングツールを使えば、コードを書かずにアルゴリズムを組むことが可能です。

ただし、より複雑な構造や独自ルールを取り入れた設計には、プログラミングスキルが役立ちます。基礎的な知識を身につけておくと、アルゴリズミックデザインの可能性をより深く引き出せるでしょう。

まとめ|アルゴリズミックデザインに強い設計パートナーをお探しならメンテルへ

アルゴリズミックデザインは、アルゴリズムを用いて設計を自動化・最適化する手法です。

自由な造形・設計の効率化・コスト抑制など多くのメリットがあり、RhinoやGrasshopperをはじめとするツールで、防災から意匠まで幅広く活用されています。

アルゴリズミックデザインを活用するには、技術だけでなく建築や環境に対する深い知見が必要です。

株式会社メンテルは、ゼネコンや組織設計事務所出身の環境設計実務経験者が、お客様の課題解決と先進的な設計をサポートします。

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