空調のデマンド制御とは?電気代や人件費削減につながる仕組みを解説

空調のデマンド制御とは?電気代や人件費削減につながる仕組みを解説

「空調のデマンド制御ってなに?」
「導入すると空調コスト削減につながるの?」

夏場や冬場は空調の使用量が増えるため、高額な電気代に悩む方も多くいます。

電気代は「使用した電力量」だけでなく「契約している契約電力」によっても左右されます。この契約電力を抑える鍵となるのが空調のデマンド制御です。

本記事では空調のデマンド制御の仕組みや関連機器との違い、導入によるメリットを解説します。

デマンド制御を導入すべきかの判断をより正確にできるようになるため、ぜひ最後までお読みください。

目次

空調のデマンド制御とは?

空調

空調のデマンド制御とは、電気代を抑えるために空調機の運転を自動制御する技術です。デマンドとは電気の需要を意味し、デマンド値は30分間の平均使用電力を指します。

電力会社との契約では、当月を含む過去12ヶ月の各月の最大デマンド値のうち、もっとも大きな値が契約電力として設定されます。

この契約電力に基づいて、基本料金が算出される仕組みです。つまり、一度でも大きな電力使用が発生すると、その後1年間にわたって高い電気代を支払い続けることになります。

デマンド制御では、契約電力を超えないようにエアコンの温度設定を緩やかに変更したり、一部の空調機の運転を一時的に制限したりします。

電力使用のピーク時の運転を抑えて契約電力を下げれば、電気代を削減することが可能です。

デマンドコントローラーとデマンド監視装置の違い

デマンド制御を実現する際に重要な役割を担うのが「デマンドコントローラー」と「デマンド監視装置」です。

両者は以下のように役割と機能が異なります。

スクロールできます
項目デマンドコントローラーデマンド監視装置
役割監視に加え、空調を自動制御できる電力使用状況やデマンド値をリアルタイムで監視する
主な機能温度調整や運転台数制御でピークカットを実現する契約電力の超過を警告する
制御能力あり(自動で制御可能)なし

なかでもデマンドコントローラーは、省エネ設備の導入を支援する補助金制度の対象となる場合があります。初期費用の負担を抑えられる点も特徴です。

空調にデマンド制御を導入するメリット3選

空調にデマンド制御を導入するメリットは、次の3つです。

  • ピーク電力を抑えて契約容量を削減できる
  • 自動制御により管理の手間やミスを減らせる
  • 省エネ法やCO2削減対策につながる

詳しく見ていきましょう。

1. ピーク電力を抑えて契約容量を削減できる

デマンド制御を導入すれば、ピーク電力を抑えて契約容量を下げることにより、基本料金を削減できます。

前述しましたが、契約電力は過去12ヶ月の最大デマンド値で決まります。

しかし、デマンド制御によってピーク時の空調負荷を抑えると、デマンド値を低く維持でき、1年間の電気代を引き下げることが可能です。

環境省は、空調機にデマンド制御を導入して、30分間のうち約4.5分間室外機を停止させると、エネルギー消費量・CO2排出量・エネルギーコストがいずれも約14%削減されると発表しています。

空調デマンド制御の導入
出典:環境省|空調デマンド制御の導入

このようにデマンド制御は、電気代を削減する手段として導入価値が高いといえます。

空調の電気代を削減する方法は、以下の記事でも詳しく述べておりますので、あわせてご覧ください。

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2. 自動制御により管理の手間やミスを減らせる

デマンドコントローラーを導入すれば、監視・調整をシステムが自動で対応するため、人的ミスや管理負担を大幅に軽減できます。

従来の電力の使用状況を人が手動で監視・調整する仕組みでは、監視タイミングのズレや判断ミスによる電力超過リスクがつきものでした。

しかし、自動での対応が可能となると、空調の出力調整を人手に頼る必要がないため、休日や夜間、少人数体制でも電力管理が安定的に実施できます。

担当者の業務負担が軽くなるだけでなく、戦略的な仕事や突発的な残業の削減につながり、組織全体の業務効率がよくなるでしょう。

3. 省エネ法やCO2削減対策につながる

デマンド制御には、電力抑制により建物の省エネやCO2削減を促し、環境負荷を軽減させる効果があります。

近年、企業の環境配慮は経営課題として重要視されており、その背景にはZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の推進があります。

ZEBとは、建物の年間一次エネルギー消費量を大幅に削減し、エネルギー収支を実質ゼロに近づける取り組みです。デマンド制御は、ZEB実現に向けた施策のひとつとしても有効です。

デマンド制御を導入すると、環境意識の高い企業としてのイメージが定着しやすくなり、顧客や取引先からの評価向上、企業ブランドや競争力の強化につながります。

空調にデマンド制御を導入する際の注意点

空調にデマンド制御を取り入れる際の注意点

電気代削減につながるデマンド制御の導入では、主に以下2つの注意点があることを把握する必要があります。

  • 制御が強すぎると快適性を損なう恐れがある
  • 誤設定や運用ミスで契約電力を超えるリスクがある

順番に解説します。

制御が強すぎると快適性を損なう恐れがある

デマンド制御はピーク電力を抑えるため、空調機の出力を一時的に制限します。

しかし、制御を強くしすぎると室温が変動しやすく、夏や冬など空調負荷が高い時期には不快な環境になりやすい点に注意が必要です。

たとえば、夏場に冷房の出力が大きく抑制されると室温が上昇し、オフィス内で暑いと感じる従業員が増え、業務効率の低下につながる恐れがあります。

逆に冬場に暖房の出力を絞りすぎると、室温が下がりすぎて寒く感じる場面もあるでしょう。

こうした事態を防ぐには、過去の電力データや建物の断熱性能を分析し、快適性と省エネを両立できる制御強度を見極めることが重要です。

誤設定や運用ミスで契約電力を超えるリスクがある

デマンド制御システムの初期設定の不備や、運用中の調整ミスがあると、適切な制御が行われず「デマンドオーバー」と呼ばれる契約電力の超過を招く恐れがあります。

デマンドオーバーが発生すると契約超過分の支払いが必要になったり、翌月以降の基本料金の増加につながったりします。

上記のリスクを防ぐためには、運用開始後も専門知識を持つ担当者による管理体制を整え、信頼できる業者のサポートを受けることが重要です。

空調にデマンド制御を取り入れる流れ

空調にデマンド制御を取り入れる流れ

空調にデマンド制御を導入する際は、以下の5つのステップで進めるのが一般的です。

流れを事前に把握すると、スムーズな導入と効果的な運用が期待できます。

1. 契約電力や設備の把握

現在の契約電力や空調設備の種類・稼働状況を確認し、どの程度の制御が必要かを把握する。

2. 制御システムの選定

複数の制御システムを比較して機能・費用・サポート体制の観点から自社に最適なものを選ぶ。

3. 設置工事の実施

専門業者による設置工事を行う

4. 契約電力の減設申請

導入後は電力会社に契約電力の減設申請を行い、基本料金を削減する。

5. 運用開始

定期的にデータを分析し、制御設定を最適化していく

制御設定の定期的な見直しで、より高い省エネ効果と快適性の両立が可能になります。

デマンド制御を導入する費用

デマンドコントローラーの導入費用は、数十万円〜数百万円程度が一般的です。

費用には主に以下が含まれます。

  • デマンドコントローラー本体の価格
  • 設置や配線などの工事費用
  • センサーや通信機器などの周辺機器
  • 運用にかかるサポート費用

とくに高機能なシステムや大規模な施設への導入では、費用が高額になる傾向にあります。

しかし、電気料金の削減によって、長期的に見れば導入費用を上回るメリットが期待できるでしょう。

導入を検討する際は、費用対効果を慎重に見極めることがポイントです。

デマンド制御の導入に活用できる補助金

デマンド制御システムの導入には、国や地方自治体が提供する補助金制度を活用できる場合があります。

補助金は省エネ化やCO2排出量削減を推進する目的で設けられており、初期導入コストの負担を軽減可能です。

たとえば、一般社団法人環境共創イニシアチブの「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業」では、BEMS(ビル全体のエネルギー使用を管理・最適化するシステム)の一部として要件を満たせば、デマンドコントローラーの導入も補助対象となります。

補助金を活用するには、申請書類や要件の確認、期限内での提出が求められるため、事前に対象制度の最新情報を調査・整理しておくことが不可欠です。

空調のデマンド制御に関するよくある質問

空調のデマンド制御に関するよくある質問にお答えします。

  • デマンド制御で空調が止まることはある?
  • 既存の空調設備でもデマンド制御は導入できる?

一つずつ見ていきましょう。

デマンド制御で空調が止まることはある?

デマンド制御を導入しても、空調が完全に止まることはほとんどありません。

契約電力を超えそうなときは弱運転や送風を行い、段階的な制御で抑制します。

室温変化を最小限に抑えつつ効率的に制御できるため、快適性を大きく損なう心配は少ないでしょう。

既存の空調設備でもデマンド制御は導入できる?

汎用的なデマンドコントローラーは複数メーカーの機器に対応可能なため、既存の空調設備でもデマンド制御を導入できます。

ただし、古い設備では一部の機能が制限されるケースもあります。

導入可否は既存設備の種類や年式を確認して、専門業者に相談するのが確実です。

まとめ|空調デマンド制御でコスト削減と省エネを両立しよう

空調のデマンド制御は、電気代削減や人件費の効率化、省エネ法対応など、ビル管理に欠かせない仕組みです。

導入には適切なシステム選定と設定が重要ですが、長期的にはコスト削減と持続可能な経営の実現につながります。

株式会社メンテルは、最適なシステムの提案から導入・運用サポートまで一貫対応し、貴社の省エネとビル運営を強力に支援します。

電気代や設備管理にお悩みの方は、ぜひ株式会社メンテルにご相談ください。

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