蓄電池はBCP対策(事業継続計画)や電気代削減、再生可能エネルギーの有効活用に欠かせない設備です。
しかし、種類や機能は多岐にわたり、選定に悩む方も多いのではないでしょうか。
種類や特性を理解せずに導入すると、コストだけがかさんで期待した効果が得られないケースも少なくありません。
本記事では、主要な蓄電池4種類を比較し、用途別の最適な使い分けや選ぶ際のポイントをわかりやすく解説します。
最適な蓄電池選びのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
蓄電池の種類

蓄電池は、主に次の4種類に分類されます。
| 蓄電池の種類 | 特徴 |
|---|---|
| リチウムイオン電池 | 小型・軽量で寿命が長い |
| ニッケル水素電池 | 安全性が高く環境負荷が少ない |
| 鉛蓄電池 | 価格は安いが重く寿命が短い |
| NAS電池 | 大容量・長寿命だが高温運転が必要 |
それぞれの蓄電池は、容量や寿命、安全性など異なる特性を持っています。順番に見ていきましょう。
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、小型・軽量で高いエネルギー密度を持ち、多くの電気を貯められるのが特徴です。
長寿命で急速充電に対応できるため、スマートフォンやノートパソコンなどのモバイル機器から、家庭用・産業用の蓄電池まで幅広く採用されています。
一方で、強い衝撃や過充電、高温環境下では発熱・発火リスクが高まりやすくなり、取り扱いには注意が必要です。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、有害物質を含まないため、環境への負荷が少ない電池です。
過充電や過放電に対する耐性が高く、発火リスクも低いため、安全性を重視する用途で使いやすいメリットがあります。主にハイブリッド車のバッテリーや充電式の乾電池に広く使われてきました。
ただし、リチウムイオン電池と比較すると、エネルギー密度が低く、同じ容量を蓄えるにはサイズが大きくなりやすい点がデメリットです。
使用しなくても自然に放電してしまう自己放電が起こりやすく、寿命もやや短い点には注意が必要です。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、もっとも古くから実用化されている蓄電池で、安定性の高さと価格の安さが特徴です。
これまで自動車のバッテリーや非常用電源として利用されてきました。
一方で、リチウムイオン電池と比べるとサイズが大きく重量があり、設置場所が限られる点がデメリットです。
また、繰り返しの充放電によって劣化が進みやすく、寿命は他の蓄電池に比べて短い傾向があります。
NAS電池
NAS電池(ナトリウム硫黄電池)は、大量の電気を長時間蓄えられる大容量蓄電池です。寿命が長く、長期間にわたって安定した運用ができます。
そのため、電力会社の大規模な電力貯蔵設備や、大規模工場におけるBCP対策など、多くの電力を扱う施設で利用されています。
一方、主原料にナトリウムや硫黄が大量に使われており、稼働には約300℃の高温状態を維持する必要があるため、一般の家庭で導入されることはほとんどありません。
専門的な設備と厳格な安全管理体制が求められる蓄電池です。
蓄電池の「特定負荷型」と「全負荷型」を比較

蓄電池のシステムは、停電時にどこまで電気を供給するかによって「特定負荷型」と「全負荷型」の2つに分けられます。
どちらを選ぶかは「停電時にどの範囲の設備まで動かしたいか」という、企業のBCP対策の考え方によって決定されます。「特定負荷型」と「全負荷型」の違いを表にまとめました。
| 項目 | 特定負荷型 | 全負荷型 |
|---|---|---|
| 停電時に使える範囲 | あらかじめ決めた一部の設備のみ(照明の一部・サーバールームなど) | 建物全体 |
| 必要な蓄電池容量 | 少なめ | 多め |
| 導入コスト | 抑えやすい | 高くなりやすい |
| 停電時の考え方 | 最低限の業務を継続 | 普段に近い業務を継続 |
| 重視するもの | コスト効率 | BCP対策 |
特定負荷型は事業継続に必要な設備のみ動かす方式のため、電力消費も抑えられ、蓄電池の持ち時間も長くなります。
一方、全負荷型は停電時でもオフィス・工場・店舗など、建物全体に電気を供給でき、普段と変わらない形で業務を継続できます。
事業への影響が大きい重要度の高い施設や、大規模な事業所では、全負荷型を選択すると、災害リスクを大幅に低減可能です。
蓄電池の変換方式の違い
蓄電池は、貯めた電気を施設で使える電気に変換するための「パワーコンディショナー」とセットで使用します。
パワーコンディショナーの変換方式には主に3種類あり、電気の変換効率や設置の容易さ、導入コストが異なります。
- 単機能型
- ハイブリッド型
- トライブリッド型
ひとつずつ見ていきましょう。
単機能型
単機能型とは、蓄電池専用のパワーコンディショナーを用いて制御する方式です。
この方式では「太陽光発電は太陽光用の機器」「蓄電池は蓄電池用の機器」と、それぞれ別々に電気を管理します。
すでに太陽光パネルと太陽光発電用のパワーコンディショナーが設置されている場合でも、それらを活かしたまま、蓄電池と蓄電池専用のパワーコンディショナーを追加導入できます。
初期費用を抑えたい場合や、停電対策など用途が限られている施設におすすめです。
一方で、電気を使うまでに変換を2回行うため、太陽光と蓄電池をまとめて管理する方式に比べると、電気のロスが出やすい点には注意が必要です。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、太陽光発電と蓄電池を1台のパワーコンディショナーでまとめて管理する方式です。
太陽光と蓄電池を別々に管理するのではなく、発電・蓄電・放電をひとつの仕組みで効率よく制御できるのが特徴です。
電気の変換回数が少なくなり、無駄なロスを抑えて電気を有効活用できます。
また、パワーコンディショナーが1台で済むため、配線や機器がシンプルになり、設置スペースも抑えられます。
トライブリッド型
トライブリッド型は、太陽光発電・蓄電池・電気自動車を、ひとつのパワーコンディショナーでまとめて管理できる方式です。
太陽光でつくった電気を、建物・蓄電池・電気自動車のどこに使うかを一体でコントロールできます。
将来的に電気自動車の導入を予定している企業や、太陽光・蓄電池・電気自動車をまとめて効率よく使いたい施設に向いています。
用途別で比較する最適な蓄電池

用途別に最適な蓄電池をまとめました。
| 目的 | 推奨される蓄電池 | 理由 |
|---|---|---|
| 非常用電源(BCP対策) | NAS電池(大規模施設向け)リチウムイオン電池 | ・NAS電池は大容量で長寿命 ・リチウムイオン電池は繰り返しの充放電でも劣化が少ない |
| 電気代削減 | リチウムイオン電池 | ・毎日の充放電を繰り返す運用に向く ・サイクル寿命が長く、ピークカットに適している |
| 太陽光発電の活用 | リチウムイオン電池 | ・長寿命と高サイクル、安全性のバランスが取れている |
なお、電気代削減や再生可能エネルギーの有効活用を進めるには、蓄電池とエネルギーマネジメントシステムの組み合わせが効果的です。
電力の使用状況と発電量を最適に管理すると、ピークカットや太陽光発電の自家消費を実現できます。
エネルギーマネジメントシステムについては「エネルギーマネジメント(EMS)の種類とは?メリット・デメリットも紹介」をご覧ください。
蓄電池を選ぶときのポイント
最適な蓄電池を選ぶには、コストだけでなく性能・安全性・サポート体制を総合的に確認することが重要です。
初期の選定次第で、導入後の運用効率や事業継続性が大きく左右されます。主なチェックポイントは以下のとおりです。
- 性能:容量・出力・サイクル数・耐用年数を確認する
- 大きさ:設置場所に適した仕様かを確認する
- コストと補助金:導入費用だけでなく、補助金を活用できるかも含めて検討する
- 安全性:温度管理や充放電制御など、安全対策が十分な製品を選ぶ
- サポート体制:保証期間や保守対応など、長期運用を見据えた体制が整っているかを確認する
上記のポイントを踏まえたうえで、自社の電力使用状況や導入目的にあった蓄電池を選定することが、無駄のない導入と長期的な効果につながります。
なお、蓄電池を選ぶには各種類の特性だけでなく、メリット・デメリットをあらかじめ理解しておくことも大切です。
詳しくは「蓄電池のメリット・デメリット10個紹介!企業が導入すべき理由とは?」をご覧ください。
蓄電池の種類に関するよくある質問

蓄電池の種類に関するよくある質問をまとめました。
- 蓄電池の大手メーカーはどこですか?
- 単機能型とハイブリッド型とではどちらがいいですか?
それぞれ解説していきます。
蓄電池の大手メーカーはどこですか?
蓄電池の大手メーカーには、パナソニックやシャープ、京セラ、ニチコン、テスラなどがあります。比較する際は、価格だけでなく保証内容やサポート体制、世界シェアも重要です。日本メーカーは安全性とサポート力、海外メーカーは価格面に強みがあり、自社の目的に合った選定が求められます。
単機能型とハイブリッド型とではどちらがいいですか?
導入目的と既存設備によって適性が異なります。単機能型は、すでに太陽光があり蓄電池だけを追加したい場合や、停電対策を重視して初期費用を抑えたいケースに向いています。一方、電気代削減や太陽光の自家消費を最大化したい場合は、ハイブリッド型が適した選択といえるでしょう。
まとめ
蓄電池は種類や方式によって役割が大きく異なり、BCP対策や電気代削減といった目的に合わせた選定が大切です。
単なる設備導入ではなく、事業継続やコスト最適化、環境対応につながる将来への投資といえます。
株式会社メンテルでは、エネルギー使用状況の分析から最適な充放電計画、太陽光やエネルギーマネジメントシステム(EMS)との組み合わせまでを一貫してご提案しています。
導入後の運用まで含めたサポートも可能ですので、蓄電池導入をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

