リチウムイオン電池の発火のメカニズムは?原因と対策を解説

リチウムイオン電池が発熱しているけど、このまま使っても大丈夫?
電池の発火の原因を理解して安全に運用したい。

こういった疑問や不安を解決する記事です。

この記事でわかること
  • リチウムイオン電池が発火する原因
  • 発火時の対処法
  • 発火を防ぐ対策
井上智樹

はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。

竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。

当社はAIやIoTを用いて、リチウムイオン電池の発火リスクについても、予兆保全や最適な運用環境の構築をサポートしています。

リチウムイオン電池は便利な一方で、異常が発生すると発火につながるリスクがあります。とくに蓄電池設備を運用している場合、事故は設備停止や大きな損失につながるため、対策が欠かせません。

リチウムイオン電池の発火は、仕組みを理解し適切に対策すると予防が可能です。安全に設備を運用するために、ぜひ最後までご覧ください。

蓄電池の運用にお悩みがある企業は、以下の公式サイトから予兆保全や設備の状態監視に関する『お役立ち資料』をダウンロードいただけますので、お気軽にチェックしてみてください。

目次

リチウムイオン電池の発火のメカニズムは「熱暴走」

リチウムイオン電池の発火のメカニズムは「熱暴走」

リチウムイオン電池の発火は、電池内部で化学反応が制御不能になり温度が急上昇する「熱暴走」によって引き起こされます。

電池は主に、正極・負極・電解液・セパレータで構成されており、これらが適切に機能することで安定した充放電が保たれる仕組みです。

しかし、このバランスが崩れると、以下のようなプロセスで発火に至ります。

  1. 内部短絡や過充電により、負極にデンドライト(針状結晶)が形成される
  2. 成長したデンドライトがセパレータを突き破る
  3. 絶縁機能が失われ、正極と負極が直接接触し発熱が起こる
  4. 温度上昇により電解液が分解され、可燃性ガスが発生する
  5. 熱が連鎖的に増加し、発火・破裂に至る

一度熱暴走が始まると連鎖的に温度が上昇し、短時間で制御不能な状態に陥ります。

蓄電池の熱暴走は「蓄電池が熱暴走する原因と対策【最適化された運用方法がわかる】」でも詳しく解説しています。

リチウムイオン電池が発火する原因

リチウムイオン電池が発火する原因

リチウムイオン電池が発火する主な原因は、次の3つです。

  • 過充電
  • 内部短絡
  • 高温環境

発火リスクの高い状況を事前に把握すると、適切な対策を取れるようになります。

過充電

過充電が続くと、電池内部の構造が損傷し、発火のリスクが高まります。過充電とは、リチウムイオン電池の許容量を超えて充電が継続される状態です。

通常はBMS(バッテリーマネジメントシステム)やパワーコンディショナーによって充電は制御され、一定の条件で停止する仕組みです。

しかし、次のような要因がある場合、制御が適切に機能せず過充電が発生します。

  • BMSやパワーコンディショナーの不具合
  • 充電器の異常や不適切な使用

これらの状態ではセル内で異常反応が進行し、発熱やガス発生をともないながら熱暴走につながる恐れがあります。

内部短絡

内部短絡はリチウムイオン電池の発火原因のひとつです。電池内部で正極と負極を隔てているセパレータが損傷し、内部でショートが発生する現象を指します。

内部短絡が起こる主な原因は、以下のとおりです。

  • 製造時の微細な異物混入
  • 落下や強い圧力
  • 電池内部のセルバランスの乱れ(電気的な要因)

このような状態では局所的に大電流が流れ、急激な発熱が生じます。その結果、電池内部の温度が上昇し、熱暴走につながります。

高温環境

高温環境は、リチウムイオン電池の発火リスクを高める要因です。

リチウムイオン電池は熱の影響を受けやすく、高温状態が続くと内部の化学反応が急速に進みます。

周囲の温度が高いと、電池内部で発生した熱が外部へ逃げにくくなり、内部に熱がこもりやすくなります。

その結果、温度上昇が連鎖的に進み、熱暴走の引き金となるため注意が必要です。とくに直射日光が当たる場所や、空調管理が不十分な環境は避けるようにしましょう。

リチウムイオン電池が発火した場合の対処法

リチウムイオン電池が発火した場合の対処法

リチウムイオン電池から発火した際は、人命の安全を最優先にしつつ、被害の拡大を防ぐ適切な対応が必要です。東京消防庁によると、発火時の基本的な対処は以下のとおりです。

  1. 火花や煙が激しく噴出している場合は近寄らない
  2. 火が収まってきたと判断したら、大量の水や消火器で消火する
  3. 大量の水で温度を十分に下げ、安全に配慮し、水没させる

発火直後は可燃性ガスとともに火花や煙が噴出するため、接近は危険です。まずは避難と通報を優先しましょう。

産業用蓄電池の場合は、無理に消火を試みるのではなく、可能な範囲で電源遮断や設備の停止を行い、安全を確保することが大切です。

また、鎮火後も内部に熱が残っている可能性があるため、再発火のリスクを考慮し、専門業者による点検・対応を行ってください。

リチウムイオン電池の発火対策

リチウムイオン電池の発火対策

リチウムイオン電池の発火対策は次の5つです。

  • 高温・湿度を避けて保管する
  • 衝撃や圧力を与えない
  • 過充電を防ぐ
  • 遠隔監視で異常を早期発見する
  • 予兆保全で発火リスクを防ぐ

発火対策を理解すると、事故の予防や安全な設備運用につなげられます。

高温・湿度を避けて保管する

リチウムイオン電池の発火を防ぐには、直射日光を避け、通気性のよい涼しい場所に設置することが基本です。

一般的に適切な保管温度は10〜25℃程度とされています。

一方で、45℃を超える高温環境や、熱がこもりやすい密閉空間での運用は、内部の不安定さを高めるため注意が必要です。

また、高湿度の環境は電極の腐食やショートのリスクを高めます。温度と湿度を一定に保てる保管庫や空調環境を整えると、発火リスクの低減と安全な運用につながります。

衝撃や圧力を与えない

リチウムイオン電池の発火を防ぐには、物理的な損傷を防ぐ取り扱いが必要です。電池ユニットの設置や運搬時には、落下や衝突を避けるよう注意しましょう。

強い衝撃が加わると、外観に異常がなくても内部のセパレータが損傷し、発火するリスクが高まります。

また、継続的な圧力が加わる状態も、内部短絡を引き起こす原因です。そのため、防振材の使用や転倒防止対策が有効です。

適切な取り扱いルールの整備や現場教育を行うと、事故リスクの低減につながります。

過充電を防ぐ

過充電を防ぐことは、発火リスクを抑えるうえで重要な対策のひとつです。過充電による負荷を避けるには、充放電を適切に制御する仕組みや、運用ルールの整備が欠かせません。

たとえば、BMSを導入すれば、各セルの電圧を監視し、満充電に近づいた際に自動で電流を遮断できます。

適切な充放電の制御は、発火防止だけでなく蓄電池の寿命延長にもつながります。

なお、蓄電池の充放電の制御については「蓄電池の充放電の制御とは?仕組みと最適な運用方法をわかりやすく解説」をご覧ください。

遠隔監視で異常を早期発見する

遠隔監視体制の導入は、リチウムイオン電池の発火対策として有効です。

電池内部の変化は目視では確認できないため、電圧・電流・温度などのデータを常時監視する必要があります。

そのため、EMS(エネルギーマネジメントシステム)やIoTセンサーを活用した監視体制の構築が重要です。

これにより、設定した値を超えた際に異常を検知でき、迅速な対応が可能となります。熱暴走に至る前に通電停止や出力制限などの対応が取れるため、被害の最小化を図れます。

予兆保全で発火リスクを防ぐ

リチウムイオン電池の発火リスクを低減するには、予兆保全の導入が重要です。

予兆保全は、データの変化や傾向から異常の発生を予測し、トラブルを未然に防ぐ保全手法です。リチウムイオン電池の発火は突発的に見えるケースが多いものの、データ上では兆候が現れます。

以下のようなサインを見逃さないことが大切です。

  • 通常よりも早い温度上昇
  • 充電が完了しにくい、または放電が異常に早い
  • 特定セルのみの電圧低下

これらの変化を早期にとらえることが、予兆保全の第一歩です。

井上智樹

株式会社メンテルでは、予兆保全の仕組みの構築から、運用・保守フローの整備までを一気通貫で支援しています。

データ活用による異常検知や運用最適化を検討している場合は、公式サイトの『お役立ち資料』をご確認ください。

リチウムイオン電池の発火のメカニズムに関するよくある質問

リチウムイオン電池の発火のメカニズムに関するよくある質問

リチウムイオン電池の発火のメカニズムに関するよくある質問をまとめました。

  • リチウムイオン電池はどのように破棄するのが正しいですか?
  • 水没したリチウムイオン電池は安全ですか?
リチウムイオン電池はどのように破棄するのが正しいですか?

企業から排出される場合は産業廃棄物に該当し、法令に基づいた適切な処理が必要です。リチウムイオン電池は発火リスクがあるため、一般ごみとして廃棄できません。許可を受けた産業廃棄物処理業者へ委託し、マニフェストを交付して処理を行いましょう。

水没したリチウムイオン電池は安全ですか?

安全ではありません。内部に水分が侵入すると、腐食や内部ショートが進行し、後から発火する恐れがあります。浸水した場合は充放電を中止し、速やかに専門業者へ相談しましょう。

まとめ

リチウムイオン電池の発火リスクを抑えるには、熱暴走のメカニズムを理解し、適切な運用管理を行うことが重要です。

発火は内部短絡や過充電を起点とする熱暴走によって発生し、高温・多湿の回避や衝撃対策、充放電管理が基本となります。

さらに、遠隔監視や予兆保全を活用すると、異常の早期検知と事故防止が可能です。

設備保全や安全管理に課題を感じている企業にとって、データ活用による効率的な運用は有効な手段です。

井上智樹

株式会社メンテルでは、異常検知から運用支援まで一貫してサポートしています。蓄電池の安全性向上や保全の最適化を検討している方は、ぜひご相談ください。

よかったらシェアしてね!
目次