本ブログでは、「自然と共存する建築」の実現に向けた、環境シミュレーションを活用した建築デザインの手法や事例について紹介をします。サステナブルな建築は、パッシブとアクティブの2つのデザイン手法を適切に掛け合わせて設計されます。
なるべく外部の自然環境を取り入れるパッシブデザインによって、アクティブデザインで機械に依存して環境をコントロールする負荷を減らすことが出来れば、理想のサステナブル建築に近づきます。本記事では、パッシブデザインの考え方を紹介します。
自然と共存する建築デザインとは

環境設計では主に、光・風・熱などの要素を扱います。太陽から降り注ぐ光を明るさとして活用したり熱や電気のエネルギーに変換したり、風を取り入れることで熱交換や空調の効率を高めます。自然は、地域や日時によって常に変化します。その傾向を正しく捉えて、適切に建築内部に取り込むことが出来れば、空調や換気や給湯などの設備の負荷を減らすことができエネルギー消費やCO2排出量の抑制に繋がります。
ですが、空調や照明の機械設備の開発と普及に伴い、外部環境とは独立して内部環境を機械設備で整えるアプローチが主流となっています。その一因として、地域や日時で常に変化する自然環境を扱うことが難しかったことが考えられる。機械設備の容量を選定する際も、年間の発生頻度をわずかに占めるピークの負荷に応じた機器選定で一般的です。これらの結果、既存建築の多くでエネルギー消費やCO2排出量の削減が課題となっており、中でも機械設備の由来によるもの支配的です。
一方で、計算速度が高速化して様々な環境シミュレーションの開発が進んでいます。それによって、時事刻々と変化する気象条件に対する応答が計算できるようになるなど、環境の変化に対する解像度が以前よりも高まっています。意匠・構造・設備で分かれていた設計の役割の中にも環境設計と呼ばれる立場も登場し始めています。
そこで、本ブログでは環境シミュレーションを活用した設計の知識・ノウハウの蓄積の一助となるような情報を発信します。これによって、サステナブルな建築の普及に少しでも貢献出来ればと思っています。
自然と共存する建築デザインの事例
ここでは自然と共存する建築デザインの事例を解説します。
エネルギーに配慮した世界の建築|例. The Edge @ アムステルダム

ジ・エッジは、アムステルダムにあり、サステナブルかつスマートなオフィスビルとして世界から大きな注目を集めています。BREEAMでは、それまでの新築オフィス部門で最高となる98.36%というスコアを獲得し、Outstandingの評価を獲得しています。
ジ・エッジには、ヨーロッパのオフィスビルでは最大規模のソーラーパネルが設置されており、太陽の動きに基づいた建物の向きで、発電効率を最大化しています。また、蓄熱機能を有する冷暖房システムによって、夏に蓄積した温かい水を冬に、冬に蓄積した冷たい水を夏に利用することで、空調に必要なエネルギー消費量を大幅に削減しています。
また、デスクの7割に自然光を取り入れる内部のレイアウトによって昼光利用を最大化しています。そして、天井に取り付けられた無数のセンサーによって、建物の利用状況を把握し、必要でない電気を消したり、清掃が必要なトイレの通知を自動化しています。これらの取り組みよって、ジ・エッジは一般的なビルと比べて電力消費量を70%程度削減し、管理コストも40%程度削減しています。
エネルギーに配慮した日本の建築|例. SUEP 建築デザインユニット

SUEPは、東京と福岡を拠点に国内外で活動する建築家ユニットです。地球環境をテーマに掲げ、風や熱などのシミュレーション技術を用いて、資源やエネルギー循環に至る自然と建築が共生する新しい時代の環境建築デザインを手がけています。
環境シミュレーションを活用した設計
本ブログでは主に以下の2つの観点で知識・ノウハウを共有します。
- 知識観点:環境シミュレーションにおける解析の理論的な内容
- 実装観点:環境シミュレーションを実行するためのスキルに関する内容
環境シミュレーションの知識
シミュレーションの仕組みを紹介した上で、実際の解析結果を用いた評価の仕方や判断の基準について紹介します。
環境シミュレーションの実装
環境シミュレーションによる解析ごとに、その結果に対する考察や判断を紹介します。解析結果によって、空間や形状を最適化する設計のアプローチを示します。また、それらの解析で用いるソフトウェアの設定やモデリングの方法について説明をします。
環境建築のアプローチ

プロジェクトの初期段階では、具体的な建築物の設計に着手する前に、コンセプトの立案や気候分析を行います。基本設計から実施設計へと設計のプロセスが進む中で、環境シミュレーションに用いるモデルや設定の解像度が高まります。
また各プロセスごとに、光・熱・風などの環境要素を複合的に評価します。また、竣工した建物が設計の意図した通りに運用することで最大のパフォーマンスが発揮されます。そのため、センサ等で情報を取得して運用の改善を図るサイクルの構築が重要です。
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