AIを活用した空調制御とは?快適性とエネルギー効率を解説

AIを活用した空調制御とは?快適性とエネルギー効率を解説

「AIを使った空調制御ってなに?」
「AIによる空調制御のメリットが知りたい」

このように考えている方も多いのではないでしょうか。

昨今、電気代の高騰や地球温暖化の対策として、AIによる空調制御に注目が集まっています。しかし、AIによる空調制御が有益かどうかの判断は、その概要やメリットを理解しないと難しいでしょう。

そこで本記事では、AIによる空調制御の概要やメリット、導入方法、成功事例などを解説します。

この記事を読むと、AI導入前後の空調システムの違いがわかり、AIを活用した空調制御のイメージが湧くようになります。

AIによる空調制御についての知識が少なく、何から調べればよいかわからない方は、ぜひ参考にしてください。

目次

AIを活用した空調制御とは

AIを活用した空調制御とは、人の手ではなく、AIとIoTが自動的に空調を制御してくれる仕組みのことです。

この仕組みがあると、快適性を保ちながら最大限の省エネが実現できます。

そのため、建物の空調関連コストの削減や脱炭素社会に向けて、なくてはならないものといえるでしょう。

経済産業省の調査によると、オフィスビルにおける電力消費量の48.6%は、空調が占めています。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁 夏の省エネ・節電メニュー

このエネルギーを削減することが省エネに直結します。

空調制御におけるAIとIoTの役割

AIとIoTを活用し空調制御をすると、快適な環境を効率的に作れます。

IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」を指し、モノがインターネット経由で通信する技術のことです。

本来インターネットに接続されていなかった空調設備がネットワークを通じて、相互に情報交換ができるようになります。

IoTセンサーを空調に取り付けると、温度や湿度、大まかな人流の動きなどの膨大なデータの収集が可能になります。

AIとは人工知能のことです。自己学習能力を備えているため、知識を蓄積していくことで、より精度の高い分析が可能となります。

IoTセンサーで情報を収集し、AIで分析を行うことで、未来の施設の温度やコストを抑えた電気の使い方が予測できます。

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AIが備わっていない空調システムとの違い

AIが備わっていない空調システムとの違いは、快適な環境を確保するために、温度が切り替わるのが「手動」か「自動」かということです。

AIが備わっていない空調設備は、センサーで室温を測定し、設定した温度に向けて稼働します。しかし、室温は外気温や人流などの影響を受けるため、空調をただ稼働させるだけでは、室温を一定にできません。

そこで、空調は室温を一定に保つために、現在と理想の室温の差を検知し、電源を付けたり消したりします。これを「フィードバック制御(後追い制御)」といい、設定温度に達するまでに時間がかかります。

過剰冷房や過剰暖房になりやすいデメリットがあり、エネルギー効率の低下やコスト増加にもつながります。

AIとIoTが備わると、天気予報や大まかな人流の動きなどのデータを解析し、最適な温度や空調の稼働時間を導き出すことが可能です。

必要な分だけのエネルギーを使うので、省エネにつながります。

AIで実現する空調最適化とは

空調最適化とは、空調機能の性能を最大限に活かし、省エネ・省コスト・省Co2を実現することです。

現在のオフィスビルや商業施設における空調システムには、エネルギー効率の向上と快適性の両立が求められています。

AI技術を活用すると空調の運転や停止、設定温度や空調モードの変更などを細かく制御できるため、これまでにない空調最適化が可能になりました。

AIによる空調制御で、必要なときに必要な分だけ空調が稼働することにより、エネルギー消費量を削減しながら、快適な室内環境が維持できるのです。

AIは過去のデータを分析し、将来のニーズを予測することも可能なため、さらなる効率化を実現し、コスト削減や環境保護にもよい影響を及ぼします。

AIによる空調制御システムを活用するメリット3選

AIを使った空調制御システムには多くのメリットがあり、これを知ることにより空調最適化が重要である理由が明確になります。

AIによる空調制御システムを活用するメリットは、以下の3つです。

  • 省エネと省コストの実現
  • 室内の快適性の確保
  • 環境保護への貢献

一つひとつみていきましょう。

省エネと省コストの実現

AIによる空調制御システムを活用すると、省エネと省コストが実現できます。

AIとIoTを活用すると、リアルタイムのデータ収集が可能になり、そのデータに合わせて最適な稼働方法を選択できます。

人が少ない部屋の空調を弱める、会議時間に合わせて空調を強めるなど、必要な稼働のみ行うので、無駄なエネルギー消費を抑えられるのです。

光熱費が経費を圧迫している企業にとっては、課題解決に大いに役立つでしょう。

室内の快適性の確保

AIによる空調の最適化で、室内の快適性を確保できます。

AIが人々の行動パターンや快適と感じられる温度や湿度を学習し、最適な環境に調整してくれます。

自分で設定温度を調整する必要なく、過剰冷房や過剰暖房がなくなるのは、生活の質の向上につながるでしょう。

未来を予測して室温を調整してくれる、AIによる空調制御システムだからこそのメリットといえます。

環境保護への貢献

AIによる空調制御システムで、環境保護に貢献できます。

AIが空調制御を行うと、必要なときに必要な分だけ稼働させるため、余分なエネルギーを使いません。

エネルギーの抑制は、温室効果ガスの排出量を削減でき、環境保護に直結します。

なお、日本は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、2030年度のエネルギー起源Co2排出量を、2013年度比で46%削減することを目標にしています。

企業として環境負荷の軽減に貢献することは、社会的責任活動の一環として高く評価されるでしょう。

参考:経済産業省|地球温暖化対策計画 P.11

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空調設備にAIを導入する方法

空調設備にAIを導入する方法は、以下の流れで行います。

  1. 申し込みを行う
  2. 空調設備にIoTセンサーなどの機器を設置する
  3. 事前データの収集を行う
  4. クラウド・AI環境構築をする
  5. サービスが開始される

現状の分析から行い、目標設定を経て稼働開始します。

AIは自己学習能力を備えているため、データを多く収集するほど、正確な空調予測が可能になります。

運用期間が長くなるほど、快適性をはじめ、省エネや省コストの効果も出てくるでしょう。

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AIによる空調制御システムの運用事例

AIによる空調制御システムは、ビルや商業施設を中心に運用されています。

オフィスビルにおける電力消費量のうち、48.6%を空調関連の電力が占めているためです。

この課題の解決に向けて、ビルや商業施設ではAIとIoTによる空調最適化が図られています。

メンテルでは大型商業ビルの空調熱源制御で年間5〜10%のエネルギー削減余地を確認しています。

ただし、この数値は建物の造りや地域の気候などの既存条件によって変わるので、一概にはいえません。

オフィスビルの所有者で空調の光熱費の削減を検討されている方は、ぜひメンテルにご相談ください。AIやアプリケーションを活用して施設の空調を最適化させる方法をご提案いたします。

最新の実証研究と成果

AIとIoTによる空調最適化は、さまざまな企業や大学で研究が進められています。

その中でも、電力量の削減をわかりやすく示す研究・事例としては、以下の2つが挙げられます。

  • 神戸大学長廣剛教授の「AIスマート空調」
  • 経済産業省発表のオフィスビルにおける節電効果

順番に解説していきます。

神戸大学長廣剛教授の「AIスマート空調」

長廣剛教授は神戸大学のカーボンニュートラル推進本部で特命教授を務めており、AIスマート空調の研究を行っています。

AIスマート空調とは、AIを活用して室内環境を快適に保つ空調システムです。

空調に搭載されたIoTセンサーを使用して、温湿度や大まかな人流などの情報を集め、AIが最適な室温に調整する仕組みです。

このAIスマート空調の実証実験を、神戸の地下街「さんちか」で行いました。

実験の取り組み期間や内容は、以下の通りです。

期間取り組み内容電力削減量
   2018年運転データを手動制御で構築する     基準
   2019年前年のデータをもとに運用する     35%
   2020年蓄積したデータをもとに運用を続ける     50%
出典:世界初!デジタルテクノロジーを活用した空調制御技術「AI スマート空調」

AIスマート空調を取り入れていない時期を基準として、2020年には2018年度比で50%の地下街全体の電力量の削減に成功しています。

電力量を50%も削減できたことは、非常に大きな成果といえるでしょう。

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経済産業省発表のオフィスビルにおける節電効果

経済産業省はオフィスビルにおける節電効果について発表しました。

その内容は以下の通りです。

スクロールできます
取り組み内容電力削減量
執務室の冷やしすぎに注意し、無理のない範囲で室温をあげる     4.1%
使用していないエリアは空調を停止する     2.4%
日中の日射を遮るために、ブラインド・カーテン・遮熱フィルム・ひさし・すだれを活用する     3.7%
冷凍機の冷水出口温度を高めに設定し、ターボ冷凍機・ヒートポンプ等の動力を削減する(セントラル空調の場合)     2.4%
参考:経済産業省|夏季の省エネ・節電メニュー P.5
セントラル空調とは

熱源機器を1か所に集中設置し、冷温水を空気調和機に送水して空調する仕組みです。
すべての制御が管理室で行われるため、個人でコントロールできない空調の仕組みであり、主にオフィスビルで採用されています。

この他にも、以下の方法が節電に効果的です。

  • 目詰まりしたフィルターを清掃する
  • 電気室、サーバー室の空調設定温度が低すぎないかを確認し、見直す
  • 室外機周辺の障害物を取り除くとともに、直射日光を避ける
  • 空調機の節電機能(ピークデマンドカット機能等)を活用する
  • 排ガスによる放熱ロスを避けるため、ガス吸引式温水機について空気比の適正化を図る
ピークデマンドカット機能とは

上限となる電気使用量を設定しておくことで、その使用量を上回る可能性があるときに、自動的に使用電力を抑える仕組みです。

上記は節電対策に非常に有効です。エネルギー使用が増える夏の時期は、とくに気をつけましょう。

まとめ

この記事ではAIを活用した空調制御の概要やメリット、導入方法、成功事例などを解説しました。

AIを活用した空調制御では、効率的な空調管理を自動で行うことが可能になります。IoTセンサーが収集したデータを、AIが分析し調整を行うことで、快適な室温と最適なエネルギー効率が得られるのです。

最新の長廣剛教授の研究では、神戸の地下街「さんちか」において、50%の電力量削減が証明されています。

ほかにも実用化に向けた研究が進められており、さらなる技術革新が期待できます。AIによる空調最適化は、今後ますます重要性を増していくでしょう。

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