VAV空調の仕組みは?CAVとの違いやメリット・デメリットを解説

VAV空調の仕組みは?CAVとの違いやメリット・デメリットを解説

VAV空調はセンサーやコントローラーなどの働きにより、ゾーン単位で個別制御ができる空調システムです。

本記事では、VAV空調の仕組みやCAV空調・ダンパーとの違い、メリット・デメリットなどを解説します。

VAV空調の導入による影響がわかり、空調システムを選定する判断材料になるため、ぜひ最後までご覧ください。

目次

VAV空調とは

VAVは「Variable Air Volume(可変風量制御方式)」の略で、空調システム方式のひとつです。

VAV空調は、部屋の温度負荷に応じて送風量を自動的に変化させられるため、室内を最適な温度で維持可能です。

また、多くのVAVには全閉機能があり、風量を最小または停止できるため、未使用の部屋の空調だけをカットできます。

企業がVAV空調を導入すれば、最適な空間を維持しながら、光熱費の削減や省エネ効果を期待できます。

VAV空調の仕組み

VAV空調は、室温に応じて風量を自動で調査できる仕組みです。以下のような構成要素により制御が行われています。

  1. 温度センサーが室内の温度を常に計測
  2. 計測データがコントローラーに送信され、必要な風量を判断
  3. VAVダンパーがコントローラーの指令にもとづき風量を調整

この3つの要素の連携により、空間ごとの室温に応じた緻密な空調制御が行えます。

ゾーン単位で最適な制御ができるため、未使用ゾーンの風量を抑えるといった、使用状況に応じた効率的な運転が可能です。

VAV空調の用途

VAV空調は大規模空間で、個別の室温調整が求められる施設で多く採用されています。

主に以下のような施設が挙げられます。

  • ショッピングモール
  • オフィスビル
  • 旅館
  • ホテル
  • 映画館
  • 工場
  • 倉庫

たとえば、ショッピングモールでは、テナントの業態によって適正温度が異なるため、ゾーン単位で制御ができるVAV空調が有効です。

オフィスビルや映画館は時間帯によって使用率が変動するため、未使用エリアの風量を最小にすることでコストを削減できます。

一方、VAV空調はダクト工事や制御システムが必要で導入コストが高いため、一般家庭で採用されるケースはほとんどありません。

VAV空調・CAV空調・ダンパーの違い

VAV空調とCAV空調は、どちらも空調方式を指し、ダンパーはそれらに組み込まれる機器のひとつです。

具体的な違いは以下のとおりです。

項目VAV空調CAV空調ダンパー
室温調整方法風量を変えて調整温度を変えて調整調整不可
センサー
省エネ性能
換気性能

VAV空調とCAV空調は、いずれもセンサーを用いて空調をリアルタイムで制御できます。

一方、ダンパーは風路の開閉装置なので、センサーが搭載されていません。

ビル運営においては、求める省エネ目標や換気要件などに応じて、VAVとCAVのどちらが適しているかを検討する必要があります。

VAV空調の3つのメリット

VAV空調を導入するメリットは次の3つです。

  • 光熱費を削減できる
  • 環境負荷を低減できる
  • 快適な空間を維持できる

詳しく見ていきましょう。

光熱費を削減できる

VAV空調の導入すると、ビル全体の空調の光熱費を削減できます。

VAV空調では、ダクト内に設置されたセンサーが室内温度と設定温度の差を検知し、その情報にもとづいてダンパーの開度を自動で調整します。

この仕組みにより室内が適正温度に達すると、自動的に送風量を最小限まで絞るため、無駄なエネルギーを削減可能です。

また、部屋ごとの個別制御や時間帯による運転スケジュール設定もできます。

空き部屋の稼働停止や昼休みの省エネ運転などができるため、年間を通じて電気代を抑えられます。

なお、空調の光熱費の削減に興味がある方は、次の記事も読んでいますので、あわせてチェックしてみてください。

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環境負荷を低減できる

VAV空調には、室温の変化に応じて自動でダンパーの開閉を調整し、風量を最適な状態にコントロールする機能があります。

この機能で過剰な冷暖房によるCO2排出量を削減でき、環境負荷を低減することが可能です。

2020年には菅元内閣総理大臣が2050年までに日本がカーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、VAV空調の導入は目的達成のために極めて有効です。(※1)

VAV空調を使うと、カーボンニュートラルへの貢献につながり、企業のブランド力や株価を高められるでしょう。

※1参考:経済産業省|資源エネルギー庁|第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組

快適な空間を維持できる

VAV空調はゾーン単位で温度制御ができるため、使用者のニーズに応じた快適な空間をつくれます。

たとえば、商業施設ではテナントごとに求められる室温が異なります。

飲食店の厨房では冷房を強くして、美容室や物販店舗では冷えすぎを避けたい要望が出ることもあります。

商業施設やオフィスビル、病院など、場所や部屋ごとに室温調整が求められる場合には、VAV空調がおすすめです。

省エネをしながら快適性を維持する空調システムは、以下の記事でも解説しております。

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VAV空調の3つのデメリット

VAV空調のデメリットは次の3つです。

  • 導入に時間と労力がかかる
  • 換気しにくい
  • トラブル発生時の対応が難しい

VAV空調のデメリットを把握しておくと、導入後に「思っていなのと違った…」と後悔することも少ないでしょう。

ここでは対策もあわせて紹介していますので、ぜひご覧ください。

導入に時間と労力がかかる

VAV空調は高度なセンサー制御や風量調整を行うため、導入には一定の設計工数や施工期間、専門的知識が求められます。

システムの設計段階では、建物の用途やダクト配置、センサー位置など、多くの要素を考慮する必要があります。

初期設定を間違えると、温度ムラや騒音問題が発生する可能性もあるため注意しましょう。

そのため、VAV空調の導入には外部のサポートが欠かせません。信頼できる専門業者に依頼すれば、設計から施工までスムーズに実施できます。

実績豊富な業者を選定し、導入後のサポート体制も含めて検討することが重要です。

換気しにくい

VAV空調は風量を変えて室温を調整する仕組みのため、室温が設定値に達すると、送風量が自動的に絞られます。

送風量の減少にともない外気の取り込み量も減るため、十分な換気を確保できない恐れがあります。

とくに人員密度の高いオフィスや臭いが発生しやすい飲食店など、空気の質が悪化しやすい場所にVAV空調は不向きです。

ただし、換気性能は換気制御システムの導入や最小風量の適正な設定により解決できます。

トラブル発生時の対応が難しい

VAV空調に問題が発生した場合は原因を特定し、修正する必要があります。

しかし、VAV空調はセンサー・コントローラー・ダンパーなど多くの要素が連携して動作する複雑なシステムのため、自社の設備担当者だけでは対応が困難です。

そのため、専門業者への依頼が必須といえます。

問題が長期化すれば、オフィスビルや商業施設などの業務に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

VAV空調の仕組みに関するよくある質問

VAV空調の仕組みに関するよくある質問をまとめました。

  • VAVの最低風量はどれくらいですか?
  • なぜVAV空調はCAVよりも省エネ効果が高いのですか?

VAV空調の導入に当たって気になる点を、事前に解消しておきましょう。

VAVの最低風量はどれくらいですか?

一般的なVAV空調の最低風量は定格風量の30%です。

たとえば、定格風量が1,000㎥/hのVAVユニットの場合、最低風量は約300㎥/hとなります。

VAV空調の最低風量は、メーカーや設定によっても変化するため、導入時に確認しておきましょう。

なぜVAV空調はCAVよりも省エネ効果が高いのですか?

VAV空調は室温に応じて風量を可変制御でき、送風量を抑えられるため、省エネ効果が高いとされています。

送風量が減少すれば送風機の回転数が下がり、消費電力が削減されるためです。

一方、CAVは常時一定風量で運転され、負荷が少ない時でも定格風量を維持し続けるため、送風量が変わりません。

この差により、VAV空調はCAV空調より消費電力を削減でき、省エネ効果を期待できます。

なお、AIやIoTを用いても、空調の消費電力は削減することが可能です。以下の記事で詳しく解説しておりますので、VAV空調以外の選択肢がほしい方は、ぜひご覧ください。

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まとめ|空調の省エネ化ならメンテルへご相談ください

VAV空調は、部屋やエリアごとの室温に合わせて、風の量を自動で調整する空調システムです。VAV空調を導入すると、省エネと快適性の両立が期待できます。

しかし、空調システムは数多くあり、ビルの管理を行うならば、その最適解はVAV空調ではない恐れがあるでしょう。

株式会社メンテルは、ビルや商業施設などの空調を省エネ化するサービスを提供しています。

VAV空調の導入による省エネ効果や、貴社の建物にあった最適な省エネソリューションをご提案させていただきますので、ぜひ一度ご相談ください。

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