ベースロード市場とは?仕組みや目的を初心者向けにわかりやすく解説

ベースロード市場とは?

電力自由化以降、電力価格の変動が大きくなり、企業では調達コストの安定化が課題となっています。

そこで「ベースロード市場」は、電気代の価格変動リスクを抑える手段として注目されています。しかし、その仕組みが複雑でよくわからない方も多いのではないでしょうか。

本記事でベースロード市場の仕組みや目的を理解できれば、電気の買い方を見直すヒントが見えてきます。安定的な電力調達を行うため、ぜひ参考にしてください。

なお、電力の安定調達をしたい方は「電力市場の9つの種類とは?市場価格が変動する仕組みもわかりやすく解説」も読んでいます。

目次

ベースロード市場とは?

ベースロード市場とは

ベースロード市場とは、企業や電力会社が長期的に安定した電力量をあらかじめ確保するための取引を行う市場です。

本市場で取引されるのは、石炭火力や原子力・水力など、季節や天候に左右されずに24時間安定して発電できる「ベースロード電源」による電気です。

たとえば、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは天気の影響を受けやすく、発電量が不安定になることもあります。

しかし、ベースロード市場で電気を確保しておけば、日々の需給変動に左右されず、安定した電力調達が可能です。なお、ベースロード市場は日本の電力を売買するための取引所「JEPX(日本卸電力取引所)」で運営されています。

JEPXについては「JEPXとは?電力市場の価格が決まる方式とチャートの見方」で詳しく解説しています。

ベースロード市場の目的

ベースロード市場が作られた目的は、新電力と既存の大手電力会社との間にあった電気調達の格差をなくすことです。

電力自由化によって多くの新電力が参入しましたが、安定して発電できる「ベースロード電源」は大手電力会社が持っており、新電力が同条件で調達するのは困難でした。

この不公平が続くと、新電力は安定電力を確保しづらく、料金プランや調達で不利になります。

そこで大手電力会社が持っている電源の一部を市場に出し、公平に電気を仕入れられるようにしたのがベースロード市場です。

ベースロード市場の仕組み

ベースロード市場では、電気を売る側(発電事業者)と買う側(小売事業者)が、年に4回(8月・10月・11月・1月)取引を行い、翌年度の電力供給について契約を結びます。

本市場の特徴は、電気の価格が「年間固定価格」で決まる点です。

日々価格が変動するスポット市場とは異なり、1年を通じて一定の価格で電力を売買できるため、収支の見通しが立てやすくなります。

価格決定には「シングルプライスオークション方式」が採用されており、売り手と買い手の希望価格が一致する一点で約定価格が決まる仕組みです。透明性が高く、公平な取引が行われるようになっています。

ベースロード市場を活用するメリット

ベースロード市場を活用するメリット

ベースロード市場をうまく活用すると、企業は電力調達において以下3つのメリットを得られます。

  • 電気代の変動を抑えてコストを安定させられる
  • 必要なときに安定した電気を確保できる
  • 再生可能エネルギーを支えて脱炭素に役立つ

電気代の変動を抑えてコストを安定させられる

ベースロード市場のメリットは、電気をあらかじめ決まった価格で長期契約できる点です。これにより電気代の高騰を避けやすくなります。

スポット市場では、燃料価格の高騰や天候の変化により、電気代が急激に跳ね上がるケースがあります。

一方、ベースロード市場では年間を通して固定価格で取引されるため、外部要因による影響を受けにくく、安定したコスト管理が可能です。

毎月の電気代の見通しが立てやすくなり、企業の予算管理や中長期的な経営計画の策定にも役立てられます。

必要なときに安定した電気を確保できる

ベースロード市場で調達される電力は、天候や時間帯の影響を受けにくい電源で構成されており、24時間安定して供給されます。

太陽光や風力などは、天気が悪い日や夜間には発電量が下がります。一方、ベースロード電源は常時稼働するため、電気が不足するリスクを抑えることが可能です。

とくに、24時間稼働する工場や病院など、安定した電力供給が欠かせない現場にとって、頼りになる存在です。

再生可能エネルギーを支えて脱炭素に役立つ

再生可能エネルギーの安定運用には、ベースロード市場が支えになります。

再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が大きく変動するため、単独では安定的な電力をまかなうのは難しいです。

ベースロード電源を一定量確保しておけば、太陽光や風力の出力が低下する時間帯でも、必要な電力を安定的に供給できるため、需給バランスを維持しやすくなります。

この仕組みによって、企業は再生可能エネルギーの導入を安心して進められます。

ベースロード市場を活用するリスク

ベースロード市場の運用においては、次の2つのリスクも存在します。

  • 契約時と購入時の価格がずれることがある
  • エリアをまたいで電気を購入すると追加コストがかかることもある

詳しく見ていきましょう。

契約時と購入時の価格がずれることがある

ベースロード市場で契約しても、最終的な支払い額は予定より多くなることがあります。ベースロード市場では、電気を「年間固定価格」で契約するのが基本です。

しかし、電気をやり取りするタイミングでは、そのときの「スポット市場価格」が用いられるため、年間固定価格との差額が生じると、追加の費用が発生します。

こうした仕組みを理解せずに契約すると、電気代が予想以上に高くなってしまうことがあるため注意が必要です。

エリアをまたいで電気を購入すると追加コストがかかることもある

電気の購入先(発電所)と使用エリアが異なると、送電網の混雑によってエリア分断が発生し、市場価格に差が生じることがあります。

たとえば、東京の企業が北海道の電気を契約していた場合でも、送電線の容量が足りなければ電力が十分に届かず、地域ごとの取引価格がずれてしまいます。

そのため、契約時に想定していた価格と、実際に電気を受け取るエリア価格との差の調整が必要です。

安いと思って契約しても、結果的にコストが高くなることがあるため、購入エリアと使用エリアの関係を確認することが大切です。

ベースロード市場を活かす鍵はエネルギー管理

電力調達のリスクを減らすためには、電気を「どう買うか」だけでなく「どう使うか」を見直すことも大切です。

どれほど有利な条件で電気を契約しても、現場で無駄な使い方をしていては、コスト削減の効果が薄れてしまいます。

建物や設備で「いつ・どこで・どれだけ」電気を使っているかを見える化すると、ピーク時の使用量を抑えたり、無駄な稼働を減らしたりでき、安定した経営につながります。

エネルギーマネジメントシステムについては「エネルギーマネジメントシステム(EMS)の種類とは?メリット・デメリットも紹介」で詳しく解説しています。

ベースロード市場に関するよくある質問

ベースロード市場に関するよくある質問をまとめました。

  • ベースロード電源のデメリットは?
  • ベースロード市場の参加資格は?

順番に解説していきます。

ベースロード電源のデメリットは?

ベースロード電源は出力調整が難しく、需要が少ない時間でも発電を続ける必要があります。また、石炭火力ではCO2排出の問題があり、原子力では安全性や廃棄物処理といった課題も残されています。

ベースロード市場の参加資格は?

ベースロード市場には、発電事業者と小売事業者が参加できます。JEPXの会員であることや一定の条件を満たす必要があり、一般企業は直接参加できません。ただし、小売事業者を通じて間接的に活用できます。

まとめ

ベースロード市場は、長期固定価格で安定した電気を確保できる取引の場です。

価格変動リスクの軽減や再生可能エネルギーとの組み合わせによる脱炭素対策など、多くのメリットがあります。

しかし、市場の仕組みは複雑で、思わぬコストが発生するリスクもあります。こうした変化に柔軟に対応するには、電気の使い方を見直すことが重要です。

株式会社メンテルでは、建物や設備のエネルギー使用を可視化し、無駄のない運用を支援しています。エネルギー管理の見直しに興味のある方は、お気軽にご相談ください。

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