
AIスマート空調ってなに?
従来の空調制御との違いやメリットが知りたい。
こういった疑問を解決する記事です。
- AIスマート空調と従来の空調との違い
- AIスマート空調で実現できること
- AIスマート空調を導入する際のポイント
- AIスマート空調を導入する際の注意点



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
AIスマート空調は、AIが空調を自動で最適に制御することで、省エネと快適性を両立できるシステムです。施設の利用状況や気象条件に応じて運転を調整できるため、エネルギーコストの削減や設備管理業務の効率化にもつながります。
AIスマート空調とは


AIスマート空調とは、AI(人工知能)を活用して、空調を自動で最適に制御するシステムです。
IoTセンサーなどで取得した室温・湿度・外気温・人流・設備の稼働状況などのデータをAIがリアルタイムで分析し、その時々の空調負荷に応じて運転方法を自動で調整します。
従来のように設定を固定して管理するのではなく、環境の変化に合わせて最適な制御ができるため、無駄なエネルギー消費を抑えながら快適な室内環境を維持することが可能です。
このような特徴から、オフィスビルや商業施設、ホテルなどで、省エネと設備運用の効率化を目的として導入が進んでいます。
従来の空調との違い
従来の空調設備は、あらかじめ設定した設定温度や運転スケジュールに沿って稼働する仕組みが一般的です。
一方、AIスマート空調は、室温や外気温、人流などのデータをリアルタイムで分析し、状況に応じて自動で最適化します。
具体的な違いを以下の表にまとめました。
| 項目 | 従来の空調設備 | AIスマート空調 |
|---|---|---|
| 制御方法 | 設定温度や運転スケジュールに沿って稼働 | 外気温や人流などを分析し、自動で運転を最適化 |
| 活用するデータ | 室温やタイマー設定など限られたデータ | 室温・外気温・湿度・人流・設備の運転実績など |
| 運用方法 | 管理者が設定・調整 | AIが状況に応じて自動で最適制御 |
| 省エネ性能 | 環境の変化に対応しにくく、エネルギーの無駄が発生しやすい | 状況に応じて運転を最適化し、エネルギー消費を抑えられる |
AIスマート空調は環境の変化に応じて空調を自動で最適化できるため、省エネと快適性の両立に役立ちます。
AIスマート空調で実現できること


AIスマート空調で実現できることは、次の3つです。
- 空調にかかる電気代・エネルギーコストを削減できる
- 快適な室内環境を維持できる
- 設備管理業務を効率化できる
空調にかかる電気代・エネルギーコストを削減できる
AIスマート空調を導入すると、空調にかかる電気代やエネルギーコストの削減が期待できます。
AIが外気温や室温、湿度、人流などのデータをリアルタイムで分析し、利用状況に応じて空調を自動で最適制御するためです。
たとえば、人が少ない会議室では運転を抑え、人が集まっている会議室では空調の運転を強めるなど、状況に応じて自動で調整します。
必要な場所に必要な分だけ空調を稼働させるため、無駄なエネルギー消費を抑えることが可能です。
AIによる空調制御の実証研究も「神戸大学のAIによる空調制御の実証研究とは?消費エネルギー削減に効果大」で解説しているので、チェックしてみてください。
快適な室内環境を維持できる
AIスマート空調の導入により、利用状況や環境の変化に応じて空調を自動で最適化できるため、快適な室内環境を維持しやすくなります。
たとえば、日差しが当たる窓際と室内中央では室温に差が生じることがあります。AIスマート空調は、このようなエリアごとの温度差を分析し、それぞれの状況に応じて空調の温度や風量を自動で調整します。
このように、温度ムラを抑えながら建物全体の快適性を維持できるため、利用者の満足度向上と省エネの両立につながります。
設備管理業務を効率化できる
AIスマート空調は、設備管理業務の効率化が期待できます。
気温や利用人数の変化にあわせたAIの自動制御により、設備管理者が頻繁に設定温度を変更したり、空調の運転状況を確認したりする手間を減らせるためです。
また、運転データを蓄積・分析すると、無駄な運転や設備の課題を把握でき、空調設備の設定の見直し、保守計画の改善にも活用できます。
日常的な運転管理の負担を軽減しながら、設備管理の属人化を防ぎ、管理品質の標準化や継続的な運用改善につなげられることが、AIスマート空調のメリットです。
AIスマート空調を導入する際のポイント


AIスマート空調を導入する際に確認すべきポイントは、以下のとおりです。
- 導入目的を明確にする
- 対応設備との連携可否を確認する
- AI制御に必要なデータを整理する
導入目的を明確にする
AIスマート空調を導入する際は、まず「何を改善したいのか」を明確にすることが重要です。導入目的が曖昧なままでは、自社に適したシステムや機能を選びにくくなります。
AIスマート空調には、省エネや快適性の向上、設備管理業務の効率化など、さまざまな活用方法があります。
電気代やエネルギーコストを削減したい場合と、利用者の快適性を向上させたい場合では、重視する機能が変わります。設備管理業務の効率化を目的とする場合は、運転データの分析機能や管理機能も重要となるでしょう。
建物の課題や導入目的を整理し、具体的な目標を設定しておくと、自社に適したシステムを選びやすくなります。
対応設備との連携可否を確認する
既存の空調設備や中央監視システムと連携できるかを確認することも、AIスマート空調の導入では必要です。
AIスマート空調の導入では、室温や湿度、人流などのデータを取得するため、IoTセンサーや制御機器の設置、通信環境の整備が欠かせません。
既存設備と連携できる場合もありますが、設備のメーカーや機種、導入時期によっては、システム改修や機器の更新が必要になる場合もあります。
どの空調設備を対象にするのか、AIでどこまで制御するのかを事前に決めておくと、導入をスムーズに進められるでしょう。
AI制御に必要なデータを整理する
AIスマート空調の性能を十分に発揮するには、AI制御に必要なデータを事前に整理しておく必要があります。
AIは建物の利用状況や設備の運転状況を分析し、その時々に最適な運転方法を判断します。必要なデータを継続的かつ正確に取得できなければ、期待した制御効果を得られません。
AI制御で主に活用されるデータは、次のとおりです。
- 室温・湿度
- 外気温・日射量
- 人流・利用人数
- 設備の運転実績・稼働状況
これらのデータを取得できるか、またセンサーや計測機器から安定して収集できる環境が整っているかを事前に確認することがポイントです。
さらにBEMSと連携すると、建物全体の設備データやエネルギー使用量なども活用できます。AIがより多くの情報をもとに空調を制御できるため、精度の高い運転が期待できます。
BEMSの導入効果について詳しく知りたい方は「BEMSの導入効果を引き出すには?効果が出ない原因と対策」もあわせてご覧ください。
AIスマート空調を導入する際の注意点


AIスマート空調を導入する際の注意点は、次の2つです。
- 初期費用や運用コストが発生する
- 導入後も継続的な運用・効果検証が必要
初期費用や運用コストが発生する
AIスマート空調を導入する際は、初期費用や運用コストが発生する点に注意が必要です。
導入時には、AI制御システムに加え、IoTセンサーや通信機器、既存設備との連携に必要なシステム改修などの費用が発生する場合があります。
さらに、導入後もソフトウェア利用料や保守・メンテナンス費用、システムの運用支援費用などが継続的に発生するケースがあります。
そのため、導入前に省エネ効果や削減できるコストを試算し、費用対効果を確認しておくことが大切です。
初期費用だけで判断せず、長期的な運用コストも含めて検討すると、自社に適したシステムを選びやすくなります。
導入後も継続的な運用・効果検証が必要
AIスマート空調は、導入後も継続的に運用状況や効果を確認することが大切です。
AIによる制御効果を最大限に引き出すには、運転データを分析しながら、設定や運転方法を継続的に見直す必要があります。
建物の利用状況や気象条件は変化するため、定期的に省エネ効果を検証し、必要に応じて運用を調整しましょう。
設備管理者だけで対応するのではなく、導入支援を行う会社とも連携しながら運用を改善すると、AIスマート空調の効果を維持しやすくなります。
AIスマート空調の効果を高めるには熱源設備の最適化も重要


AIスマート空調の効果を高めるには熱源設備の最適化も重要です。
環境省によると、百貨店では年間エネルギー消費の約4割を空調関連が占めています。そのうち、冷却塔やポンプなどの空調設備を動かす「空調動力」は22.5%です。
空調設備を動かすエネルギーの割合も大きいため、設定温度や風量を調整するだけでなく、熱源設備や搬送設備まで含めて運転を最適化することが、省エネ効果を高めるポイントです。
AIスマート空調に関するよくある質問


AIスマート空調に関するよくある質問をまとめました。
- 導入できる建物に制限はありますか?
- カーボンニュートラルに貢献できますか?
- AIスマート空調の導入効果はどれくらいで実感できますか?
- 導入できる建物に制限はありますか?
-
大きな制限はありません。オフィスビルや商業施設、ホテル、病院、工場など幅広い建物に導入できます。ただし、既存の空調設備の種類や状態によっては、追加工事や機器の更新が必要になる場合があります。導入前に設備の状況を確認し、最適な導入方法を検討することが大切です。
- カーボンニュートラルに貢献できますか?
-
貢献できます。AIスマート空調は、空調にかかるエネルギー消費を抑えられるため、CO2排出量の削減につながります。快適な室内環境を維持しながら省エネを実現でき、企業の脱炭素やGX推進にも貢献できるでしょう。
- AIスマート空調の導入効果はどれくらいで実感できますか?
-
建物の規模や設備の状態、運用方法によって異なります。たとえば、イトーヨーカドー八王子店では、約7ヶ月間の実証実験で空調エネルギーを約40%削減した実績があります。効果を最大限に引き出すには、継続的な運用改善が大切です。
まとめ
AIスマート空調は、AIを活用して空調を最適に制御し、省エネと快適性を両立できるシステムです。
導入を成功させるには、導入目的を明確にしたうえで、既存設備との連携や必要なデータを事前に確認し、導入後も継続的に運用・効果検証を行うことが大切です。
また、空調設備だけでなく熱源設備まで含めて運転を最適化すると、さらなる省エネ効果が期待できます。



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