
出力抑制による売電収入の減少を食い止めたい
どのように出力抑制の対策をすればいいのかわからない…
このような悩みがある企業もいるのではないでしょうか?
出力抑制がはじまると売電がストップするため、発電設備をもつ企業にとっては無視できません。そのため出力抑制の対策を行い、損失を最小限に抑えることが大切です。
- 出力抑制の仕組みや太陽光発電に与える影響
- 出力抑制の2026年度の見通し
- 出力抑制の5つの対策



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
当社はAIやIoTを用いて、電力需給を最適化させ、出力抑制による損失を最小限に抑える解決策を熟知しています。
出力抑制とは


出力抑制とは、電力の需要と供給のバランスを保つために、電力会社からの指示で発電設備からの送電を一時的に制限する仕組みです。
電気は蓄えることが難しく、発電量と消費量を常に一致させなければなりません。この均衡が崩れると周波数が乱れ、大規模な停電を招く恐れがあります。
このような事態を防ぐため、電力会社は需給状況に応じて発電設備に出力制御を要請します。出力抑制は春や秋など冷暖房需要が少なく、太陽光発電量が多い時期に発生しやすいです。
なお、出力抑制では優先給電ルールに基づき、まず火力発電の抑制や他地域への送電を行います。それでも発電量が需要量を上回る場合には、再生可能エネルギーの抑制が行われます。


出力抑制が太陽光発電に与える影響
出力抑制が発生すると、想定していた発電量を確保できなくなり、事業収支や設備運用に影響を及ぼします。主な影響は次のとおりです。
- 発電量が予測しにくくなり、運用計画を立てづらくなる
- 売電収入が減少し、投資回収期間が延びる可能性がある
- 想定発電量を前提に設計した蓄電容量が最適でなくなる
出力抑制は設備運用やエネルギー管理にも影響を与えるため、事前に対策しておくことが重要です。
出力抑制の3つのルール


出力抑制には3つのルールがあり、発電設備の申し込み時期によって適用される内容が異なります。
| ルール名 | 概要 | 対象の目安 |
|---|---|---|
| 30日ルール (旧ルール) | 年間30日を上限に無補償で抑制 | 2015年1月以前に接続契約した設備 |
| 360時間ルール (新ルール) | 年間360時間を上限に無補償で抑制 | 2015年1月以降に接続契約した設備(主に10kW以上の太陽光) |
| 無制限・無補償ルール (指定ルール) | 上限なく無補償で抑制 | 2021年4月以降の全エリア |
自社設備の運用リスクを把握するため、それぞれのルールの内容を確認しておきましょう。
1. 30日ルール(旧ルール)
30日ルールは、FIT制度の初期に設定された太陽光発電設備に適用される出力抑制のルールです。
電力会社は年間30日を上限として、発電事業者に対して無補償で出力抑制を要請できます。
「30日」は日単位でカウントされるため、短時間の抑制であっても1日として計算されます。
年間30日を超えて出力抑制が行われた場合には、電力会社から補償が発生するため、発電事業者のリスクは一定の範囲内に収まっていました。
2. 360時間ルール(新ルール)
360時間ルールは、出力抑制の上限を日数ではなく「時間」で管理する仕組みです。主に出力10kW以上の太陽光発電設備に適用されます。
年間の合計抑制時間が360時間に達するまでは無補償となり、それを超えた分が補償の対象です。1日のうち数時間のみ抑制される場合でも、実際の抑制時間だけが積み上がります。
360時間ルールにより、電力会社は需給状況に応じて必要な時間帯のみ出力制御を行えるため、より柔軟な電力系統の運用が可能になりました。
3. 無制限・無補償ルール(指定ルール)
無制限・無補償ルールは、出力抑制の上限時間を設けず、電力会社が無補償で発電出力を制御できるもっとも厳しいルールです。
再生可能エネルギーの導入拡大にともない、従来の制度では電力系統の安定を維持するのが難しくなったため導入されました。
2021年4月以降、このルールはすべての電力エリアに拡大されています。
無制限・無補償ルールが適用される発電設備では、出力抑制による売電収入の減少を想定したうえで、事業計画を立てることが重要です。
出力抑制の2026年度の見通し


2026年度の再生可能エネルギーの出力制御の短期見通しによると、九州の制御率がもっとも高く、次いで東北、四国、北陸の順番です。
再生可能エネルギーの導入拡大にともない、出力抑制が全国の電力エリアで常態化していくと見込まれています。
また、2026年3月には東京電力管内でもはじめて再生可能エネルギーの出力抑制が実施されました。
発電量が増える一方で、送電網の容量には限りがあるため、都市部近郊でも発電量を制限せざるを得ないケースが増えています。
この課題に対応するため、政府や電力会社は火力発電の最低出力引き下げや、蓄電池の導入拡大、デマンドレスポンスの推進などの対策を進めています。
出力抑制の対策5つ


出力抑制による損失を抑えるには、以下の5つの手法が有効です。
- オンライン代理制御を活用する
- 発電・需要データを見える化し、抑制の傾向をつかむ
- 蓄電池を活用して余剰電力を貯めて使う
- EMSを活用して発電と需要を最適化する
- FIT制度からFIP制度に切り替える
上記の対策を取り入れると、出力抑制による発電ロスを減らし、太陽光発電の収益性を維持しやすくなります。運用改善や設備投資の判断にも役立つため、ぜひ参考にしてください。
1. オンライン代理制御を活用する
出力抑制の影響を抑える方法のひとつが、オンライン代理制御の導入です。
オンライン代理制御とは、電力会社が遠隔で発電設備の出力を制御する仕組みです。
従来のオフライン制御では、出力抑制の指示を受けると発電事業者が発電所で設備のオン・オフを手動で操作する必要があり、リアルタイムでの細かな出力調整は困難でした。
一方オンライン代理制御では、電力需給の状況に応じて必要な時間帯のみ出力制御が行われます。過剰な出力抑制を防ぎ、発電できる時間をできるだけ確保しやすくなります。
また、発電事業者が現地で設備を操作する必要がなくなり、運用の手間を減らすことも可能です。
2. 発電・需要データを見える化し、抑制の傾向をつかむ
出力抑制の影響を把握するには、電力の需給状況をリアルタイムで確認し、出力抑制の傾向を分析することが重要です。
どの時期にどの程度の抑制が発生しているかを可視化できれば、根拠に基づいた運用改善につながるためです。



株式会社メンテルでは、電力需要や再生可能エネルギーの発電量、電力市場価格などを予測し、電力の需給バランスを踏まえた最適な運用計画を立案するサービスを提供しています。
高精度の予測に基づいて受給計画や充放電計画を最適化することで、効率的な電力運用を実現します。
こうしたデータ分析と運用最適化により、再生可能エネルギーの活用を最大化しながら、出力抑制による発電ロスの低減にもつなげることが可能です。
3. 蓄電池を活用して余剰電力を貯めて使う
太陽光発電の電力を蓄電池に貯めて活用する方法も、有効な出力抑制の対策です。
発電量が多い時間帯に蓄電池に充電しておけば、余剰電力を自家消費に回しやすくなり、系統へ流れる電力量を抑えられるためです。
夜間や電力需要が高まる時間帯に放電すると、購入電力量の削減や電気料金の低減にもつながります。また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせると、停電時の非常用電源としてBCP対策にも役立ちます。
太陽光発電と蓄電池の連携については「太陽光発電と蓄電池を連携するメリットは?注意点と導入ポイントを解説」をご覧ください。
4. EMSを活用して発電と需要を最適化する
EMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入すると、発電量と施設内の電力需要をリアルタイムで監視し、電力の使用状況に応じた最適な制御が行えます。
太陽光発電量が多い時間帯に空調や生産設備の稼働を調整すると、発電した電力を自家消費へ回せます。
また、電力会社からの要請に応じて需要を調整するデマンドレスポンスにも対応可能です。AIが需要を予測し、蓄電池の充放電を自動で行うため、運用の手間もかかりません。
5. FIT制度からFIP制度に切り替える
FIT制度からFIP制度への移行も、出力抑制対策のひとつです。FIT制度とFIP制度の主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | FIT制度 | FIP制度 |
|---|---|---|
| 売電価格 | 固定価格 | 市場価格+※プレミアム |
| 価格の変動 | 変動しない | 市場価格により変動 |
| 収益の安定性 | 安定しやすい | 市場価格を活かした運用が可能 |
| 出力抑制の影響 | 売電量減少により収益が減少 | 市場価格や運用次第で収益調整が可能 |
FIP制度では、市場価格に応じて売電価格が変動します。そのため、蓄電池を活用して売電タイミングを調整すれば、収益を高められる可能性があります。
一方で、市場価格の予測や運用管理が必要になる点には注意が必要です。
電力市場の価格が決まる仕組みは「JEPXとは?電力市場の価格が決まる方式とチャートの見方」で解説していますので、あわせてお読みください。
出力抑制の対策に関するよくある質問
出力抑制の対策に関するよくある質問をまとめました。
- 出力制限は義務ですか?
- FITとFIPの出力抑制の順番は?
- 収益化が難しいなら太陽光発電所を売却したほうがいい?
順番に見ていきましょう。
出力制限は義務ですか?
発電事業者の義務です。電力会社から出力制御の指示があった場合は、原則従う必要があります。指示に従わない場合、発電設備の認定取り消しや行政処分を受ける恐れがあります。
FITとFIPの出力抑制の順番は?
2026年度以降、資源エネルギー庁の制度見直しにより「FIT電源を先に抑制し、FIP電源は後に抑制する」運用が検討されています。実施されれば、FIP電源のほうが抑制回数が少なくなると考えられます。
収益化が難しいなら太陽光発電所を売却したほうがいい?
発電所の売却を検討する選択肢もあります。ただし、すぐに売却を決めるのではなく、蓄電池導入やFIP移行などの改善策を検討し、将来の収益性をシミュレーションしたうえで判断しましょう。
まとめ
太陽光発電の出力抑制は、再生可能エネルギーの導入拡大にともない避けられない課題となりました。すでに全国の電力エリアに広がっており、今後も発生を前提とした運用が求められます。
ただし、オンライン制御や蓄電池、EMSの活用、FIP制度の検討などにより、出力抑制の影響を抑えることは可能です。とくに重要なのは、発電量や抑制リスクを事前に把握し、最適な設備設計や運用計画を立てることです。



株式会社メンテルでは、電力需要や再生可能エネルギーの発電量を分析し、最適な運用計画の立案を支援しています。
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