
ホテルに適した空調設備とは?
快適性と省エネを実現する方法が知りたい。
こういった疑問を解決する記事です。
- ホテルの空調設備の種類
- ホテルの空調で起こりやすい課題
- ホテルの空調で快適性と省エネを両立する運用ポイント
- ホテルのエリアに合わせた空調方式の選び方



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
ホテルの空調は、宿泊者の満足度や電気料金、設備管理コストに大きく影響します。しかし「客室ごとの温度差がある」「空調コストが高い」といった課題を抱えるホテルも少なくありません。
快適性と省エネを両立するには、設備の性能だけでなく、メンテナンスや設定温度、運転方法の見直しも重要です。
ホテルの空調設備の種類


ホテルの空調設備は、大きく分けて3種類あります。
- 全館空調
- 個別空調
- 全館空調と個別空調の併用
全日本ホテル連盟が実施した調査では、「集中管理型(全館空調)」が48.2%ともっとも多く、ついで「個別空調型」26.8%、「個別空調型と集中管理型」19.6%という結果でした。


全館空調
全館空調は、ホテル全体やフロアなど複数のエリアの空調をまとめて管理する方式です。
ロビーやレストラン、宴会場などの共用部を効率よく管理しやすく、運用やメンテナンスを一元化しやすいメリットがあります。
一方、設備の方式によっては、個別空調と比べて客室ごとの温度調整や冷暖房の切り替えに制約があります。そのため、宿泊者によっては「暑い」「寒い」と感じる場合があり、快適性に配慮した運用が必要です。
個別空調
個別空調は、客室ごとにエアコンを設置し、宿泊者が温度や風量、運転モードを自由に調整できる方式です。
宿泊者が好みに合わせて空調を調整できるため、客室の快適性を確保しやすいメリットがあります。
一方で、設置する空調設備の台数が多くなり、フィルター清掃や点検、故障対応などのメンテナンス業務が増える傾向があります。
また、客室ごとに運転状況が異なるため、過度な冷暖房や不在時の運転などによって、無駄な電力消費が発生する可能性があることに注意が必要です。
全館空調・個別空調の併用
全館空調と個別空調の併用は、ホテル内のエリアや用途に応じて空調方式を使い分ける方法です。
たとえば、客室では宿泊者が温度を調整しやすい個別空調を採用し、ロビーやレストランなどの共用部では複数のエリアをまとめて管理する方式を採用するケースです。
それぞれのエリアの用途や利用状況に適した空調方式を組み合わせることで、宿泊者の快適性と施設全体の運用効率や省エネ効果を高められます。
ホテルの空調で起こりやすい課題


ホテルの空調で起こりやすい課題は、次の3つです。
- 客室の温度調整がしにくい
- 空調への不満やクレームが宿泊満足度を下げる
- 空調コストや電気料金が増加しやすい
客室の温度調整がしにくい
ホテルでは、空調方式や設備の状態、客室の位置などによって、客室の温度を適切に調整しにくい場合があります。
主な原因は、次のとおりです。
- 全館空調では客室ごとの温度調整や冷暖房の切り替えに制約がある
- フィルターや熱交換器の汚れにより空調性能が低下している
- 室外機の排熱不良や冷媒不足によって冷暖房効率が低下している
- 建物の断熱性能により部屋ごとに温度差が生じる
こうした要因が重なると、設定温度まで室温が下がらなかったり、同じ設定でも客室によって体感温度に差が生じたりすることがあります。
課題を改善するには、空調設備の状態だけでなく、建物や客室ごとの環境も把握したうえで、運用方法やメンテナンスを見直すことが重要です。
空調への不満やクレームが宿泊満足度を下げる
客室の空調環境は、宿泊者の快適性を左右する要素のひとつです。空調に問題があると、滞在中の不満やクレームにつながる可能性があります。
とくに、以下のようなクレームが多く見られます。
- 客室が暑い・寒い
- 空調の音がうるさい
- カビやホコリによる臭いがする
- 乾燥して過ごしにくい
こうした問題の原因は、フィルターや熱交換器の汚れ、設備の経年劣化、適切でない運転管理などです。
そのため、定期的な点検や清掃を行い、異常の兆候を早期に発見して、トラブルを未然に防ぐことが重要です。
ホテルの臭い対策は、以下で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。


空調コストや電気料金が増加しやすい
ホテルは長時間にわたって空調を使用するため、運転方法によっては空調にかかる電気料金が増加しやすくなります。
たとえば、利用者のいないエリアでの不要な運転や過度な冷暖房、設備の汚れ・劣化による運転効率の低下などは、無駄な電力消費につながります。
資源エネルギー庁によると、空調はホテル全体のエネルギー消費の約29%を占めており、運用方法が電気料金に与える影響は小さくありません。そのため、空調設備を効率的に運用することは、施設全体の電気料金を抑えるうえでも重要です。
空調コストを抑えるには、設備の稼働状況や消費電力を見える化し、データに基づいて運転を最適化するようにしましょう。
ホテルの空調で快適性と省エネを両立する運用ポイント


ホテルの空調で快適性と省エネを両立する運用のポイントは、次の4つです。
- 適切な温度設定と空調管理を行う
- 定期的なメンテナンスで空調性能を維持する
- 空調設備の稼働状況を見える化する
- AIを活用して空調運用を効率化する
これらを実践すると、宿泊者の快適性を維持しながら、電気料金や空調コストの削減につながります。
適切な温度設定と空調管理を行う
適切な温度設定と空調管理は、快適性と省エネを両立するうえで大切です。
季節や外気温、客室・共用部の利用状況などに応じて設定温度や運転時間を調整すると、無駄な電力消費を抑えられます。
環境省によると、エアコンの設定温度を1℃緩和すると、冷房時は約13%、暖房時は約10%の消費電力削減が期待できます。
ホテルにおいても、過度な冷暖房を避け、施設の利用状況に応じて適切に温度を管理することが省エネにつながるでしょう。
省エネにつながる空調の設定温度は、以下をご覧ください。


定期的なメンテナンスで空調性能を維持する
空調設備は、定期的にメンテナンスを行うことで本来の性能を維持しやすくなります。
フィルターや熱交換器にホコリや汚れが蓄積すると、空気の流れや熱交換の効率が低下し、必要な冷暖房能力を得るために余分なエネルギーを消費する場合があります。また、設備の不具合や故障につながる可能性もあるでしょう。
フィルターは1ヶ月に1回程度を目安に、使用状況に応じて定期的に清掃することが大切です。定期的に清掃や点検を実施すると、機器の長寿命化や消費電力の抑制につながります。
空調のフィルターの清掃方法は、以下で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


空調設備の稼働状況を見える化する
空調設備を効率的に運用するには、設備が「いつ・どこで・どの程度」稼働しているのかを把握することが重要です。
IoTやBEMSを活用すると、空調設備の稼働状況やエネルギー使用量などを収集・見える化できます。時間帯やエリアごとのデータを確認することで、利用者が少ない場所での不要な運転など、運用上の課題を発見しやすくなるでしょう。
見える化したデータをもとに運転方法や設定を見直すと、経験や勘だけに頼らない空調運用につなげられます。
空調設備の見える化や運用改善については、以下で解説しているので、あわせてご覧ください。


AIを活用して空調運用を効率化する
空調設備の稼働状況を見える化したら、AIを活用して運転を最適化する方法もあります。
ホテルでは、外気温や日射、客室の利用状況などによって必要な冷暖房能力が変化するため、その時々の状況に合わせて空調を調整する必要があります。
AIを活用して設備の稼働データなどを分析し、状況に応じて運転を制御すると、宿泊者の快適性に配慮しながら無駄なエネルギー消費を抑えることが可能です。また、人が細かく設定を変更する作業を減らせるため、設備管理業務の効率化にもつながります。
ホテルのエリアに合わせた空調方式の選び方


ホテルではエリアごとに求められる空調性能や運用方法が異なります。
用途に合った空調方式を選ぶと、宿泊者の快適性を高めるだけでなく、運用効率や省エネ性の向上にもつながるでしょう。
以下の3つのエリアに分けて、空調方式の選び方を紹介します。
- 客室|静音性と個別調整のしやすさを重視する
- 共用部|管理のしやすさと空調効率を重視する
- 厨房やバックヤード|熱・湿気・換気のバランスを考慮する
客室|静音性と個別調整のしやすさを重視する
客室では、宿泊者が快適に過ごせるよう、温度調整のしやすさや静音性を重視して空調設備を選ぶことが重要です。
宿泊者によって快適と感じる温度は異なるため、温度や風量を個別に調整できる空調方式を採用すると、さまざまなニーズに対応しやすくなります。
また、就寝時の快適性を考慮し、運転音が気になりにくい静音性の高い空調設備を選ぶことも大切です。
一方で、個別空調は客室ごとに運転状況が異なるため、不要な運転や過度な温度設定によって空調コストが増加する場合があります。
効率的に運用するには、空調設備の稼働状況を把握し、必要に応じて運転を最適化できる仕組みもあわせて検討するとよいでしょう。
共用部|管理のしやすさと空調効率を重視する
ロビーやレストラン、宴会場などの共用部では、複数のエリアを効率よく管理できる空調方式を検討することが重要です。
共用部は時間帯やイベントの有無、利用人数、人の出入りなどによって空調負荷が大きく変化します。また、ロビーと宴会場では利用時間や必要な冷暖房能力も異なります。
各エリアの営業時間や利用状況に合わせて運転時間や設定を調整すると、不要な運転を抑え、省エネや管理業務の効率化を図れるでしょう。
厨房やバックヤード|熱・湿気・換気のバランスを考慮する
厨房は、調理機器から発生する熱や湿気によって室温が上昇しやすいため、換気設備とのバランスを考慮して空調設備を選ぶことが大切です。
また、油煙や汚れが発生する環境では、清掃や点検のしやすさなど、メンテナンス性も考慮する必要があります。
バックヤードや従業員スペースも、用途に適した空調設備を選定すると、快適な作業環境を維持しやすくなり、作業効率や安全性の向上につながるでしょう。
ホテルの空調に関するよくある質問


ホテルの空調に関するよくある質問をまとめました。
- ホテルの空調は更新と運用改善のどちらを優先すべきですか?
- ホテルの空調設備は何年くらいで更新すべきですか?
- ホテルの空調トラブルを減らすにはどうすればよいですか?
- ホテルの空調は更新と運用改善のどちらを優先すべきですか?
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設備の老朽化の状況によって優先すべき対策は異なります。既存設備を活用する場合、AIによる運用改善によって、省エネや空調コストの削減につながるケースもあります。まずは空調設備の稼働状況を把握し、設備と運用のどちらに課題があるかを見極めましょう。
- ホテルの空調設備は何年くらいで更新すべきですか?
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業務用エアコンの更新時期の目安は10年です。一般的な業務用エアコンの寿命は10〜15年ですが、メンテナンス状況や使用環境によって寿命は前後します。設置から10年以上経過すると、空調効率の低下や故障リスクが高まるため、定期点検を行いながら更新時期を検討しましょう。
- ホテルの空調トラブルを減らすにはどうすればよいですか?
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空調トラブルを減らすには、日常的なフィルター清掃や定期点検に加え、IoTやBEMSを活用した稼働状況の見える化が有効です。異常なデータを早期に把握できれば、故障の予兆をとらえて予防保全につなげられます。突発的な停止やクレームの防止に役立つでしょう。
まとめ
ホテルの空調で快適性と省エネを両立するには、空調方式の特徴を理解したうえで、適切な温度設定や定期的なメンテナンスを行うことが重要です。
また、IoTやBEMSを活用して空調設備の稼働状況を見える化し、データに基づいた運用改善を行うと、電気料金の削減や空調トラブルの予防につながります。
さらに、AIを活用した空調制御を取り入れると、快適性を維持しながら効率的な運用を実現することも可能です。



メンテルでは、AIが客室ごとの空調の稼働状況をもとに、最適な運転を自動で行い、省エネと快適性の両立を目指す「個別空調最適化」を提供しています。
宿泊者の快適性を保ちながら、省エネや空調コストの削減、設備管理業務の効率化を目指したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

