
オフィスの空調にかかる電気代を削減したい。
すぐに実践できる省エネ方法は?
こういった疑問を解決する記事です。
- オフィスビルの空調方式
- 自社ビルの空調を省エネ化する方法
- テナントビルの空調を省エネ化する方法
- オフィスの空調の省エネ対策を進める手順
- オフィスの空調の省エネ対策を行う際の注意点



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
資源エネルギー庁によると、オフィスビルでは空調が電力消費全体の約49%を占めており、運用方法を見直すことで電気代を削減できる可能性があります。
オフィスビルの空調方式


オフィスビルの主な空調方式は、以下のとおりです。
- セントラル空調方式
- 個別空調方式
- 自社ビルとテナントビルでは管理できる範囲が異なる
セントラル空調方式
セントラル空調方式は、冷凍機やボイラーなどの熱源設備を1ヶ所に集約して設置し、建物全体の空調を一元的に管理する方式です。
熱源設備でつくられた冷水や温水が、配管を通じて各階の空気調和機へ送られ、室内の温度を調整します。
主に大規模なオフィスビルや商業施設で採用されており、建物全体の空調を効率よく管理できることが特徴です。
個別空調方式
個別空調方式は、フロアや部屋などのエリアごとに、空調設備を個別に運転・制御する方式です。
利用するエリアごとに運転・停止や温度設定を行えるため、テナントの利用状況や営業時間に応じて柔軟に運用できます。
主に中小規模のオフィスビルやテナントビルで採用されており、必要なエリアだけ、必要なときに空調を稼働させられることが特徴です。
自社ビルとテナントビルでは管理できる範囲が異なる
自社ビルとテナントビルでは、空調設備を管理できる範囲や、実施できる省エネ対策が異なります。
自社ビルでは、建物の所有者が設備を管理しているため、熱源設備や空調の運用方法、設備更新などを検討しやすくなります。
一方、テナントビルでは、建物全体や共用部の設備はオーナーや管理会社、専有部はテナントが管理するなど、契約や設備構成によって管理範囲が異なります。
そのため、まずは自社で変更できる設備や運用範囲を確認し、必要に応じてオーナーや管理会社、テナントと連携しながら省エネ対策を進めることが重要です。
個別空調とセントラル空調(中央熱源)の違いは、以下で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


オフィスビル(自社ビル)の空調を省エネ化する方法


自社ビルの空調を省エネ化する方法は、次の6つです。
- 高効率空調機に変更して消費電力を抑える
- 室内レイアウトを工夫して空気の流れを改善する
- 定期的にフィルターを清掃して空調効率を維持する
- IoTやBEMSで空調の消費電力や稼働状況を見える化する
- 設備の異常を早期に発見して性能低下を防ぐ
- AIを活用して空調熱源の運転を最適化する
高効率空調機に変更して消費電力を抑える
老朽化した空調設備を高効率空調機へ更新することは、消費電力の削減につながる可能性があります。
長年使用した空調設備は、部品の劣化や性能の低下により、導入当初よりも多くの電力を消費する場合があります。
一方、高効率空調機へ更新すると、空調負荷に応じた運転制御などによって、必要な冷暖房能力を確保しながら消費電力を抑えることが可能です。
設備更新には初期費用がかかるため、現在の設備の運転効率や使用年数を確認し、電気代やメンテナンス費用なども含めて更新の必要性を判断しましょう。
室内レイアウトを工夫して空気の流れを改善する
室内レイアウトを見直して、空気が循環しやすい環境を整えることも省エネにつながります。
大きな棚やパーティションが空調の吹出口や吸込口をふさいでいると、冷気と暖気が部屋全体に行き渡らず、温度ムラが発生する原因になります。
そのため、吹出口や吸込口の周辺に物を置かず、空気の流れを妨げないように家具やパーティションを配置することが大切です。
また、必要に応じてサーキュレーターを併用すると、より効率よく空気を循環させられます。
定期的にフィルターを清掃して空調効率を維持する
定期的にフィルターを清掃すると、空調設備本来の性能を維持し、電気代の増加を防げます。
フィルターにホコリや汚れが溜まると、空気の流れを妨げ、必要以上の電力を消費します。
月1〜2回を目安にフィルターを清掃すると、風量の低下を防ぎ、空調効率を維持しながら快適な室内環境を保つことが可能です。
また、設備への負荷が軽減されるため、故障リスクの低減や設備の長寿命化にもつながるでしょう。
空調のフィルターを清掃する方法や適切な頻度については、以下の記事で詳しく解説しています。


IoTやBEMSで空調の消費電力や稼働状況を見える化する
IoTやBEMSを活用して空調の消費電力や稼働状況を見える化すると、運用改善につながります。
IoTセンサーなどを活用すると、室内の温度や湿度、設備の稼働状況などのデータを収集できます。また、BEMSを導入することで、建物内のエネルギー使用状況を一元的に把握・管理しやすくなるでしょう。
時間帯やエリアごとのデータを分析することで、不要な運転や設定の見直しが必要な箇所を発見しやすくなります。
収集したデータをもとに運転時間や設定温度などを見直し、継続的な運用改善につなげられます。
空調のIoT化の仕組みやメリットは、以下の記事をご覧ください。


設備の異常を早期に発見して性能低下を防ぐ
設備の定期点検に加え、取得した設備データを継続的に監視すると、空調設備の異常を早期に発見し、性能低下や余分な電力消費を防げます。
たとえば、冷媒漏れやコンプレッサーの劣化などが発生すると、消費電力や運転状況に変化が現れる場合があります。
こうした異常の兆候を早期に把握し、適切なタイミングで点検や修繕を行うと、突発的な故障や設備停止を未然に防ぐことが可能です。
AIを活用した設備保全の仕組みについては、以下の記事で解説しているので、あわせてお読みください。


AIを活用して空調熱源の運転を最適化する
AIを活用して空調熱源の運転を最適化すると、空調設備の運転効率を高め、省エネや空調コストの削減につながります。
熱源設備は、外気温や建物の利用状況などによって必要な冷暖房能力が変化します。そのため、空調負荷に合わせて熱源機やポンプ、冷却塔などを効率よく運転することが重要です。
AIを活用したシステムでは、気象条件や過去の運転データなどから熱負荷を予測し、設備の運転台数や運転パターンを調整することで、無駄なエネルギー消費の削減を図れます。
オフィスビル(テナントビル)の空調を省エネ化する方法


テナントビルでは、管理会社だけで実施できる省エネ対策には限りがあります。そのため、管理会社と各テナントが連携し、それぞれが実施できる対策を進めていくことが重要です。
テナントビルの空調を省エネ化する方法は、次の3つです。
- 温度設定を適正に見直して消費電力を抑える
- ブラインドや遮熱カーテンで空調負荷を抑える
- 未使用エリアの空調を停止して無駄な運転を減らす
温度設定を適正に見直して消費電力を抑える
空調の設定温度を適正に見直すことは、電力消費を抑える基本的な省エネ対策です。
過剰な冷暖房は空調負荷を増やし、余分な電力を消費する原因になります。
環境省では、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すため、室温の目安として夏季28℃、冬季20℃を推奨しています。
管理会社は、各テナントへ室内環境の目安を周知し、利用状況に応じた温度設定への協力を促しましょう。
省エネにつながる空調の設定温度と、設定温度を1℃緩和した場合の電気代の削減率は、以下の記事で詳しく解説しています。


ブラインドや遮熱カーテンで空調負荷を抑える
ブラインドや遮熱カーテンを活用して日射を遮ると、室温の上昇を抑え、冷房時の空調負荷を軽減できます。
とくに夏場は、窓から差し込む日射によって室温が上昇し、空調設備の消費電力が増える原因になります。
そのため、日射の入り方に応じてブラインドや遮熱カーテンを活用し、各テナントにも日射対策への協力を促しましょう。
空調負荷の仕組みと空調負荷を低減して省エネにつなげる方法は、以下の記事で解説しています。


未使用エリアの空調を停止して無駄な運転を減らす
会議室や休憩スペースなど、長時間利用する予定のないエリアでは、空調を停止することで無駄な電力消費を抑えられます。
管理会社は、利用ルールや運用方法を共有し、省エネ対策への協力を促しましょう。
オフィスの空調の省エネ対策を進める手順


空調の省エネ対策を成功させるには、現状を把握したうえで、優先順位を決めて段階的に進めることが大切です。以下の3ステップで進めましょう。
- 1. 空調設備の現状把握
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自社の空調方式や管理権限を確認し、消費電力や稼働データを集めて課題を明確化します。
- 2. 優先順位の決定と対策の実施
-
導入コストや期待できる省エネ効果を比較し、取り組みやすい運用改善から進めます。
- 3. 効果検証と運用の見直し
-
施策実施前後の消費電力量や電気料金を比較し、継続的に運用方法を改善します。
空調の運用改善に加えて、照明の節電対策もあわせて行うと、オフィス全体の消費電力を効率よく削減できます。
オフィスの空調の省エネ対策を行う際の注意点


オフィスの空調の省エネ対策を行う際の注意点は、次の2つです。
- 過度な節電で快適性を損なわない
- 継続的に運用を改善する体制を整える
過度な節電で快適性を損なわない
過度な節電を優先すると、オフィスで働く従業員の快適性や業務効率に影響を及ぼす可能性があります。
設定温度だけで管理するのではなく、実際の室温や湿度、温度ムラなどを確認しながら、快適性とのバランスを考慮して運用しましょう。
また、従業員から室内環境に関する意見を収集し、必要に応じて運転方法や設定を見直すと、省エネと快適な職場環境の両立につながります。
継続的に運用を改善する体制を整える
空調の省エネ効果を維持するには、継続的に運用を見直すことが重要です。
消費電力量や電気料金を定期的に確認し、実施した対策の効果を検証することで、新たな改善点を把握できます。
また、継続的な改善を進めるには、従業員や各テナントへ省エネにつながる運用ルールを周知し、協力を得られる体制を構築することも大切です。
まとめ
オフィスの空調を省エネ化するには、空調方式や自社ビル・テナントビルの管理範囲に応じて適切な対策を選ぶことが重要です。
まずは、フィルター清掃や設定温度の見直し、未使用エリアの空調停止など、取り組みやすい運用改善から始めましょう。
さらに、IoTやBEMSによる設備データの見える化や、AIを活用した空調熱源制御を導入すると、継続的な省エネと空調コストの削減が期待できます。



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