
同時市場とはどのような仕組みなの?
需給調整市場との違いは何?
こういった疑問を解決する記事です。
- 同時市場の仕組み
- 他の市場との違い
- 同時市場のメリット
- 同時市場を活用するポイント



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後、AIベンチャーGRIDにてスマートシティ関連プロジェクトのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。現在は株式会社メンテルを経営しています。
同時市場は、電力と調整力をまとめて取引する新しい仕組みです。従来は別々に取引していた電力と調整力を同時に判断する必要があるため、どのように運用するかによって効率や収益性に差が生まれます。
今後の電力運用や蓄電池活用への変化にも対応できるようにするため、ぜひ最後までご覧ください。
同時市場とは


同時市場とは、電力(kWh)と調整力(ΔkW)を同時に取引する新しい市場の仕組みです。
その主な目的は、電力と調整力をまとめて調達・配分し、電力システム全体を効率よく運用できる状態をつくることです。
これまでは電力の取引と、需給バランスを保つための調整力の確保は別々の電力市場で行われていました。運用が分断され、全体として最適な発電計画を立てにくい状況でした。
同時市場では、2つをまとめて約定・運用することで、電力の使い方や発電計画をまとめて決められるようになると期待されています。
あわせて、再生可能エネルギーの導入拡大にともなう需給の変動にも対応しやすくなり、より柔軟な電力運用の実現が可能となります。
日本における同時市場の導入スケジュール
日本では同時市場がまだ導入されておらず、現在は国や関係機関による検討が進められている段階です。
経済産業省の議論では、2030年ごろの実現を視野に、段階的に制度設計の検討が進められています。
電力と調整力を一体的に扱う新たな市場の構築には、システム開発やルール整備が必要となるため、実現までには一定の時間がかかると見込まれています。
今後の電力ビジネスに大きく関わる仕組みのため、蓄電池や再生可能エネルギーの導入を検討している企業は、制度の動向やスケジュールを継続的に確認しておくことが重要です。
他の電力市場との違い
同時市場と他の電力市場との違いは、これまで別々に決めていた「電力」と「調整力」を、まとめて決定できる点です。各市場の役割を整理すると、以下のとおりです。
| 市場名 | 役割 | 取引内容 |
|---|---|---|
| スポット市場 | 電力の売買 | 電力量(kWh) |
| 需給調整市場 | 需給バランスの調整 | 調整力(ΔkW) |
| 同時市場 | 電力と調整力の一体的な調達・配分 | kWh+ΔkW |
これまでは電力の取引はスポット市場、需給バランスの調整は需給調整市場で行われていました。同時市場では、電力と調整力をまとめて取り扱えるため、発電や蓄電池の運用を効率よく決められるようになります。
スポット市場を運営している日本卸電力取引所(JEPX)については「JEPXとは?電力市場の価格が決まる方式とチャートの見方」をご覧ください。
同時市場の価格が決まる仕組み


同時市場の価格は、電力(kWh)と調整力(ΔkW)の両方を考慮しながら、全体のコストがもっとも低くなるように決められます。
まず、各発電所や事業者は発電コストだけでなく、供給可能な電力量や調整力、設備の運転条件を市場に提示します。
市場側は、情報をもとにシステムが電力需要を満たすように発電の組み合わせを計算。設備の制約条件を踏まえたうえで、もっともコストが低くなる組み合わせが選ばれます。
同時市場の取引の流れ
同時市場を含めた電力取引は、数年前からの準備と、前日・当日の調整によって進められると考えられています。主な流れは以下のとおりです。
- 1. 容量市場(数年前〜2ヶ月前)
-
将来の電力供給に必要な発電能力をあらかじめ確保
- 2. 同時市場(前日)
-
電力と調整力をまとめて入札し、最適な発電計画を決定
- 3. 時間前市場(当日)
-
天候や需要の変化によるズレを修正し、最終的な需給バランスを調整
長期・前日・当日と段階的に調整する仕組みにより、電力の安定供給が維持されると想定されています。
同時市場のメリット


同時市場のメリットは、主に以下の3点です。
- 電力コストの最適化につながる
- 再生可能エネルギーの活用拡大につながる
- 蓄電池ビジネスとの親和性が高い
上記を理解すると、電力運用の効率化や蓄電池活用の可能性をイメージできるようになります。
電力コストの最適化につながる
同時市場のメリットは、電力コストの最適化につながる点です。
従来は、電力と調整力を別々の市場で取引していたため、同じ発電設備を取り合うような状況が生じ、効率的な配分が難しい課題がありました。
一方で同時市場では、電力と調整力を同時に取引し、全体のコストがもっとも低くなるように発電の組み合わせが計算されます。
無駄な発電や非効率な設備の稼働を抑えやすくなり、結果として電力の調達コストの低減につながる可能性があります。
再生可能エネルギーの活用拡大につながる
同時市場を活用すると、再生可能エネルギーの活用拡大につながると期待されています。
太陽光発電や風力発電は天候・時間帯によって発電量が大きく変わるため、需給バランスの調整が難しく、出力制御や系統混雑が発生しやすい課題がありました。
同時市場では、これらの条件を踏まえて発電の組み合わせが決まるため、出力制御や混雑の発生を抑えやすくなります。
同時市場は再生可能エネルギーの導入を後押しし、脱炭素経営やカーボンニュートラルの実現にも貢献できる可能性があります。
蓄電池ビジネスとの親和性が高い
同時市場は、蓄電池ビジネスとの親和性が高い点もメリットです。
蓄電池が持つ「電気を貯めて必要なときに使う」特性が、同時市場で求められる調整力の提供と相性がよいためです。
たとえば、蓄電池は電気の余っている時間帯に充電し、不足している時間帯に放電することで、需給バランスの調整や価格変動への対応に活用できます。
こうした役割は、需給調整市場でも重要とされていますが、同時市場においても同様に価値を発揮すると期待されています。
需給調整市場については「需給調整市場で系統用蓄電池は収益化できる?仕組みと活用ポイントを解説」をご覧ください。
同時市場を活用するポイント


同時市場を活用するポイントは、次の3つです。
- 需給予測と運用判断を高度化する
- 蓄電池の運用を最適化する
- エネルギーマネジメントシステムを活用する
電力運用の効率化や蓄電池の収益性を高めるため、3つのポイントを理解し、実際の運用に活かしていきましょう。
需給予測と運用判断を高度化する
同時市場を活用するには、需給予測と運用判断の精度を高めることが重要です。
電力価格や需要は時間帯や天候によって変化します。発電コストや設備の制約条件など、複数の要素も同時に考慮しなければなりません。
同時市場では、電力と調整力を一体的に判断するため、従来以上に高度な意思決定が求められると考えられています。
こうした複数の条件を同時に判断する必要があるため、人の経験や勘だけに頼るのではなく、データ分析や予測モデルを活用して判断の精度を高めることが重要です。
蓄電池の運用を最適化する
同時市場を見据えて収益性を高めるには、蓄電池の充放電のタイミングを最適に調整できる体制を整えることが重要です。
電力市場では価格が常に変動するため、電力価格が低い時間帯に充電し、高い時間帯に放電するといった運用が基本となります。
同時市場では、電力と調整力をまとめて決めるため、単純な価格差だけでなく、調整力としての価値も踏まえた運用が求められるでしょう。
そのため、蓄電池の特性を活かしつつ、複数の市場価値を踏まえて充放電を制御することが、収益性の向上につながるポイントです。
エネルギーマネジメントシステムを活用する
エネルギーマネジメントシステム(EMS)を活用すると、同時市場を見据えた効率的な運用や収益性の向上が期待できます。
EMSを活用すれば、電力データや価格予測にもとづき、充放電のタイミングを自動で制御可能です。
同時市場では、電力と調整力をまとめて判断する必要があるため、複数の条件を同時に考慮した運用が求められます。
人の判断だけでは難しい高度な運用でも、EMSを活用することで24時間安定して実行できる点が強みです。



株式会社メンテルでは、電力データの分析や価格予測をもとに、蓄電池の充放電を最適化するソリューションを提供しており、こうした運用を支援しています。
同時市場に関するよくある質問


同時市場に関するよくある質問をまとめました。
- 同時市場に課題はありますか?
- 同時市場に対応するために今から何を準備すべきですか?
- 同時市場に課題はありますか?
-
高度な計算処理を行うシステム整備の負担や、制度の複雑化が課題です。発電コストや需給バランス、送電制約など多くの条件を同時に扱う必要があり、高い技術力が求められます。また、制度の理解や運用対応の難易度が高まり、参入のハードルが高くなる可能性があります。
- 同時市場に対応するために今から何を準備すべきですか?
-
自社の電力使用量や運用データを把握し、現状を理解することが重要です。あわせてEMSや蓄電池制御システムの導入も検討し、データ活用や運用体制を整えておくと、制度開始後に有利な対応が可能です。
まとめ
同時市場は、電力と調整力を同時に取引する新しい仕組みです。コストの最適化や再生可能エネルギーの活用拡大に貢献し、蓄電池ビジネスとも高い親和性を持ちます。
一方で、運用には高度な需給予測やシステム活用が求められます。2030年ごろの導入に向けて検討が進むなか、今からデータ収集や体制整備を進めておくことが大切です。
株式会社メンテルでは、電力データの分析や価格予測をもとに蓄電池の運用最適化を支援しています。
同時市場に対応した電力運用や蓄電池の最適化を検討している方は、ぜひご相談ください。

