
快適性指標ってなに?
温熱環境の6要素やスマートビルでの活用方法は?
こういった疑問を解決する記事です。
- 快適性指標とは
- 温熱環境の快適性を左右する6つの要素
- 快適性指標をスマートビルで活用するメリット
- 快適性指標をスマートビルで活用する方法
- 快適性指標をスマートビルで活用する際の注意点



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
当社はAIやIoTを用いて、建物内の環境データや設備データの運用最適化、保全の効率化を支援しています。
快適性指標は「暑い」「寒い」といった人の感覚を客観的にとらえ、快適な室内環境づくりに活かすための指標です。スマートビルでは、こうした指標や環境データを設備運用や空調制御に活用することで、利用者の快適性に配慮しながら省エネを目指せます。
快適性指標の基礎知識やスマートビルでの具体的な活用ポイントを整理し、建物の価値向上につなげるために、ぜひ最後までご覧ください。
快適性指標とは?


快適性指標とは、人が室内で感じる「暑い」「寒い」という感覚を、物理量と生体工学モデルに基づいて客観的に数値化・評価するための指標です。
同じ室温(乾球温度)26℃であっても、湿度が30%か70%か、気流が静穏か強いか、窓ガラスからの日射や冷放射があるかによって、人が感じる体感温度は大きく異なります。
そのため、壁に設置されたサーモスタットの温度(室温)だけを見ていては、利用者が快適かどうかを正しく評価できません。
また、温冷感には個人差があるため、主観的な意見だけで建物全体の快適性を評価するのは難しいでしょう。
快適性指標を活用することで、環境の質を定量的に把握し、無駄な過冷却・過加温を抑制しながら、多くの人にとって快適な温熱環境を安定して維持することが可能になります。
温熱環境の評価指標一覧
温熱環境とは、室内の温度や湿度、気流、周囲から受ける熱など、人が暑さ・寒さを感じる要因を含めた環境のことです。
温熱環境を評価する指標にはいくつかの種類があり、なにを評価したいかによって使い分けることが重要です。
| 指標名 | 概要 | 主な活用目的 |
|---|---|---|
| PMV(予測平均温冷感申告) | 温熱環境の6要素をもとに、人がどの程度「暑い」「寒い」と感じるかを評価する指標 | 建築・空調分野における温熱快適性の評価 |
| PPD(予測不満足者率) | PMVと関連して、温熱環境に不満を感じる人の割合を予測する指標 | 快適性の評価や不満足者率の把握 |
| SET*(標準新有効温度) | 異なる温熱環境を、標準的な環境に置き換えた温度として表す指標 | 異なる温熱環境の比較・評価 |
| WBGT(暑さ指数) | 気温・湿度・輻射熱などを考慮して暑熱環境を評価する暑さ指数 | 熱中症予防や暑熱環境の管理 |
たとえば、人が感じる暑さや寒さを評価したい場合はPMV、熱中症のリスクを確認したい場合はWBGTというように、目的によって適した指標は異なります。
温熱環境の快適性を左右する6つの要素


温熱環境の快適性には、環境側の4要素と人体側の2要素を合わせた6要素が関係します。
| カテゴリー | 要素 | 概要 |
|---|---|---|
| 環境側の4要素 | 温度 | 室内の空気そのものの温度 |
| 湿度 | 空気中の水分量。汗の蒸発に影響する | |
| 気流 | 空気の流れ。風の強さによって体感する暑さ・寒さが変わる | |
| 放射熱 | 窓・壁・床・天井など周囲の表面温度 | |
| 人体側の2要素 | 活動量 | 動作や作業によって体内で発生する熱の量 |
| 着衣量 | 着衣の断熱・保温性を示す指標 |
環境側の4要素|温度・湿度・気流・放射熱
環境側の4要素は、人を取り巻く室内環境の状態を表す「温度・湿度・気流・放射熱」の4つです。
▼温度(空気温度 / 乾球温度)
室内の空気そのものの温度です。空調管理の基本ですが、他の要素との相互作用によって体感温度は変化します。
▼湿度(相対湿度)
空気中の水分量です。皮膚からの汗の蒸発(潜熱放散)を左右します。湿度が高いと蒸発が妨げられて蒸し暑く感じ、低すぎると乾燥による不快感や静電気、ウイルスの活性化につながります。
▼気流(風速)
室内の空気の流れです。気流があると皮膚表面の空気境界層が薄くなり、対流による放熱と汗の蒸発が促進されるため、室温が高めでも涼しく感じやすくなります。
▼放射熱(輻射 / 平均放射温度:MRT)
窓ガラスや外壁、床、天井などの表面温度によって生じる電磁波による熱移動です。冬場にコールドドラフトや冷えた窓ガラスの近くが寒く感じる、あるいは夏場のペリメータ(窓際)で直射光や熱を持ったサッシによって暑く感じるのは、この放射の影響です。
人体側の2要素|活動量・着衣量
人体側の2要素は、室内で過ごす人の活動量と着衣量です。
▼活動量(代謝量:Met)
着座や歩行、作業などによって体内で発生する代謝熱量です。静かに座っている状態(約1.0 Met)と、歩行・荷物運搬時(2.0 Met以上)では発熱量が大きく異なるため、同じ環境下でも感じる温度が劇的に変化します。
▼着衣量(clo値)
衣服の断熱性を示す指標です。全裸を0 clo、標準的なスーツ姿を約1.0 clo、軽装のクールビズスタイルを約0.5 cloと見なします。クールビズやウォームビズの推進は、このclo値を調整して快適域をシフトさせるアプローチです。
PMV(予測平均温冷感申告)は代表的な快適性指標


PMV(予測平均温冷感申告)とは、温度・湿度・気流・放射熱・活動量・着衣量の6要素をもとに、人が感じる暑さや寒さを数値で表す代表的な快適性指標です。
同じ室温でも、湿度や気流、窓や壁から受ける放射熱などによって体感温度は変わります。
PMVを活用することで、室温だけでは把握しにくい温熱環境の違いを数値で捉えやすくなります。
PMV値の見方と快適範囲
PMVは「−3(寒い)」から「+3(暑い)」までの7段階で温冷感を表し、0は「暑くも寒くもない」状態を示します。
| PMV値 | 温冷感 |
|---|---|
| −3 | 寒い |
| −2 | 涼しい |
| −1 | やや涼しい |
| 0 | 暑くも寒くもない |
| +1 | やや暖かい |
| +2 | 暖かい |
| +3 | 暑い |
一般的に、快適な温熱環境の評価基準として、PMV−0.5〜+0.5の範囲内に収めることが国際規格で推奨されています。
ただし、あくまで目安であり、感じ方には個人差があることも考慮する必要があるでしょう。
快適性指標をスマートビルで活用するメリット


快適性指標をスマートビルで活用するメリットは、次の3つです。
- 利用者の快適性を定量的に評価できる
- 快適性を維持しながら省エネを目指せる
- スマートビルの付加価値を示しやすくなる
利用者の快適性を定量的に評価できる
快適性指標を活用することで、利用者が感じる暑さや寒さを数値でとらえ、室内環境を客観的に評価しやすくなります。
暑い・寒いといった感覚には個人差があるため、利用者の意見だけでは室内環境の状態を判断しにくい場合があります。
快適性指標を用いれば、エリアや時間帯ごとの温熱環境を比較することが可能です。特定の場所や時間帯で生じる環境の違いを把握する際の判断材料になるでしょう。
快適性を維持しながら省エネを目指せる
快適性指標を活用すれば、温度・湿度・気流なども含めて室内環境を確認できるため、利用者の快適性に配慮しながら空調の省エネを目指せます。
省エネのために設定温度だけを変更すると、暑さや寒さを感じる利用者が増える可能性があるでしょう。
快適性指標を活用し、快適性とエネルギー消費の両方を確認しながら運用を改善すると、無理のない省エネにつながります。
オフィスの空調における省エネ対策は、以下の記事でも解説しています。


スマートビルの付加価値を示しやすくなる
スマートビルの価値を伝えるうえで、建物の快適性を数値で示すことも有効です。
建物の快適性を数値で把握できれば、オーナーやテナントに対して、室内環境の状態や改善効果を説明する際の材料になります。
また、省エネ性能だけでなく、利用者が快適に過ごせる環境づくりに取り組んでいることも示せるでしょう。
快適性を可視化することは、スマートビルの特徴や価値を伝え、他の建物との差別化を図るうえでも役立ちます。
スマートビルの仕組みやメリットは、以下の記事をご覧ください。


快適性指標をスマートビルで活用する方法


スマートビルで快適性指標を活用する際は、室内環境の計測からデータ管理、空調制御まで段階的につなげることが重要です。
- STEP1:センサーで温熱環境を測定・可視化する
-
温度や湿度などの環境データをセンサーで取得し、必要なデータを組み合わせてエリアや時間帯ごとの温熱環境を快適性指標で評価します。
- STEP2:BEMSやビルOSで環境・設備データを一元管理する
-
センサーから取得した環境データと空調設備の運転データをBEMSやビルOSに集約し、建物内の状態をまとめて把握・分析できるようにします。
- STEP3:快適性データを空調制御の最適化に活用する
-
温熱環境や利用状況などのデータをもとに空調運転を調整し、快適性に配慮しながら過剰な冷暖房を抑えて省エネにつなげます。
AIを活用した空調制御は、以下の記事をご覧ください。


快適性指標をスマートビルで活用する際の注意点


快適性指標をスマートビルで活用する際の注意点は、次の2つです。
- ひとつの指標だけで快適性を判断しない
- データ収集だけで終わらせず設備制御までつなげる
ひとつの指標だけで快適性を判断しない
快適性を評価する際は、ひとつの指標だけで判断しないことが重要です。
PMVは、多くの人が平均的に感じる暑さ・寒さを予測する指標ですが、個人差や場所ごとの温度差まですべて表せるわけではありません。
目的に応じてSET*やWBGTなどを使い分け、実際の室内環境や利用者の声もあわせて確認することで、より実態に合った快適性の評価につなげられます。
データ収集だけで終わらせず設備制御までつなげる
快適性指標をスマートビルで活用する際は、データを収集・可視化するだけでなく、設備制御までつなげることが重要です。
温熱環境を把握できても、その結果が空調運用に反映されなければ、快適性の向上や省エネにはつながらないためです。
取得したデータを分析し、空調の運転方法や設定をどのように調整するかまで検討しましょう。
スマートビルの実現に向けて技術パートナーを探している建設・不動産メーカーや、設計事務所のご担当者様は、ぜひ以下の資料をチェックしてみてください。
快適性指標に関するよくある質問


快適性指標に関するよくある質問をまとめました。
- 湿度40%と60%ではどちらが快適ですか?
- 既存の建物でも快適性指標を活用できますか?
- 快適性指標を活用した空調制御はどのような建物に向いていますか?
- 湿度40%と60%ではどちらが快適ですか?
-
室温や気流、服装などによって異なります。気温が高い環境では、湿度を低めにすると汗が蒸発しやすく、涼しく感じやすくなります。一方、冬は湿度を適度に保つことで乾燥を防ぎやすくなります。湿度だけで判断せず、温熱環境全体で調整することが大切です。
- 既存の建物でも快適性指標を活用できますか?
-
必要な温熱環境データや設備の運転データを取得できれば、既存の建物でも快適性指標を活用できます。設備をすべて更新する必要はなく、IoTセンサーの追加など段階的に導入する方法もあります。ただし、建物や空調設備によって取得・制御できる範囲が異なるため、事前確認が重要です。
- 快適性指標を活用した空調制御はどのような建物に向いていますか?
-
オフィスビルや商業施設など、多くの人が利用し、エリアや時間帯によって温熱環境が変化する建物に向いています。利用状況に合わせて空調を調整すると、快適性と省エネの両立を目指せます。
まとめ
快適性指標は、人が感じる暑さや寒さを数値でとらえ、室内環境を客観的に評価するための指標です。
温度・湿度・気流・放射熱・活動量・着衣量の6要素を踏まえ、PMVやPPD、SET*などを目的に応じて使い分けることで、より実態に合った温熱環境の把握につながります。
スマートビルでは、IoTセンサーで取得した環境データや設備データを可視化・分析し、空調制御までつなげることで、快適性に配慮しながら省エネを目指すことが可能です。



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