
全館空調の消費電力が増える原因を知りたい。
設備更新せずに省エネを実現する方法は?
こういった悩みを解決する記事です。
- 全館空調の消費電力が増える主な原因
- 全館空調の消費電力を抑えて節電につなげる方法
- 全館空調の運用改善で期待できる効果



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
大規模施設の省エネを実現するには設定温度の見直しやフィルター清掃だけでなく、建物の利用状況や外気温、設備の稼働状況に応じて空調設備の運用を最適化することが重要です。
※全館空調は住宅向けの空調システムを指すことが多いですが、本記事では商業施設・オフィスビル向けにセントラル空調(中央熱源方式)として解説します。
全館空調の消費電力量は?


施設の全館空調は、建物全体のエネルギー消費のなかでも大きな割合を占める設備です。
たとえば、環境省が公表しているデータによると、百貨店のエネルギー消費量の約4割(40.5%)が空調設備です。内訳は空調動力が22.5%、冷暖房用が18.0%となります。


このように、空調設備は施設内でもっとも多くのエネルギーを消費します。そのため、空調の運用を見直すことが電気代の削減につながるでしょう。
ただし、実際の消費電力量は、建物の用途や延床面積、導入している熱源設備の種類、運用方法によって異なります。施設ごとの利用状況や設備に合わせて、最適な運用方法の検討が重要です。
全館空調の消費電力が増える主な原因


全館空調の消費電力が増える主な原因は、次の3つです。
- 空調熱源設備が効率的に連携していない
- 空調負荷に応じた運転ができていない
- 設備を適切に保守管理できていない
空調熱源設備が効率的に連携していない
全館空調では、熱源設備が効率的に連携していないと、消費電力が増えやすくなります。
チラーやボイラー、冷却塔などの熱源設備は、それぞれ役割が異なるため、建物の空調負荷に応じて適切に組み合わせて運転することが重要です。
しかし、個々の機器が単体では効率よく動いていても、設備同士の連携が不十分だと、システム全体のエネルギー効率は低下し、無駄な電力を消費してしまいます。
全館空調の消費電力を抑えるには、個々の機器だけを見るのではなく、熱源機器の台数や負荷配分、ポンプの流量、冷却塔の運転などを含め、熱源システム全体を最適化することが大切です。
空調負荷に応じた運転ができていない
空調負荷に応じた運転ができていないことも、全館空調の消費電力が増える原因です。
空調負荷とは、建物を快適な室温に保つために空調が処理しなければならない熱と湿気の量を指します。
空調負荷は、次のような要因によって常に変化します。
- 利用人数の変化(オフィスの出勤人数、商業施設の来館者数)
- 時間帯の変化(営業時間、昼休み、夜間)
- 外気温や天候の変化(気温、日射量)
このように空調負荷が変化しているにもかかわらず、一定の設定で空調設備を運転し続けると、必要以上の冷暖房が行われ、無駄なエネルギーを消費してしまいます。
消費電力を削減するには、建物の利用状況や空調負荷に合わせて運転台数や能力を調整することが必要です。
設備を適切に保守管理できていない
設備を適切に保守管理できていないことも、全館空調の消費電力が増える原因のひとつです。
空調設備は、フィルターや熱交換器の汚れ、センサーやバルブの不具合、機器の経年劣化などによって運転効率が低下します。本来であれば少ないエネルギーでまかなえる空調負荷でも、設備の性能が十分に発揮されず、必要以上のエネルギーを消費してしまう場合があります。
また、設備を定期的に点検していても、導入当初の設定のまま運用を続けていることもあるでしょう。建物の利用状況や設備の性能は時間の経過とともに変化するため、現在の運用状況に合わない設定では、過剰な運転や不要なエネルギー消費が発生する可能性があります。
設備を効率よく運用するには、定期的な保守管理を行い、設備の状態に合わせて設定を見直すことが大切です。
全館空調の消費電力を抑えて節電につなげる方法


全館空調の消費電力を抑えて節電につなげる方法は、次の6つです。
- 運転スケジュールを最適化する
- 保守管理を適切に実施する
- 空調負荷を減らす環境を整える
- 電力プランを見直す
- 電力使用量を見える化して課題を把握する
- 空調熱源をAIで制御する
これらの対策を実践すると、既存設備を活用しながら、消費電力の削減と快適な室内環境の維持につながります。
運転スケジュールを最適化する
運転スケジュールを最適化すると、不要な時間帯の電力消費を削減できます。
建物の利用状況に関係なく空調を運転し続けると、人がいない時間帯にも冷暖房が行われ、無駄な電力を消費してしまうでしょう。
そのため、利用状況に合わせて、運転スケジュールを見直すことが大切です。
- オフィスの営業時間や出勤状況
- テナントの営業日・営業時間
- 夜間や休日など利用者が少ない時間帯
また、建物全体を一律で運転するのではなく、フロアやエリアごとに運転時間や稼働範囲を調整すると、より高い省エネ効果が期待できます。
施設の利用実態に合わせて運転スケジュールを最適化することで、快適性を維持しながら消費電力を削減できるでしょう。
全館空調の電気代を抑える運用改善のポイントは「全館空調の電気代節約は運用改善が鍵!施設向け省エネ対策を解説」でも詳しく解説しています。
保守管理を適切に実施する
保守管理を適切に実施することは、空調設備の運転効率を維持し、消費電力を抑えるための基本です。
空調設備は、フィルターや熱交換器の汚れ、センサーや制御機器の不具合、経年劣化などによって性能が低下します。
フィルターや熱交換器を定期的に清掃し、センサーや制御機器の状態を点検すると、設備本来の性能を維持しながら、無駄な電力消費を抑えることが可能です。
空調フィルターの清掃方法や適切な頻度については「空調のフィルターを清掃する効果的な方法は?掃除の頻度や注意点も解説」をご覧ください。
空調負荷を減らす施設環境を整える
空調負荷を減らす施設環境を整えると、全館空調の節電につながります。
建物に流入する熱を減らし、室内の温度ムラを小さくすると、空調設備が必要以上に稼働することを防げるためです。
空調負荷を軽減する方法は、次のとおりです。
- 遮熱フィルムやブラインドの活用:日射による室温の上昇を抑え、冷房負荷を軽減する
- サーキュレーターによる空気循環:室内の温度ムラを減らし、空調効率を高める
- 外気の流入や換気量の適切な管理:必要以上に外気を取り込むことを防ぎ、空調負荷を抑える
このような対策は、大規模な設備更新を行わなくても比較的取り組みやすく、空調設備の負荷軽減や継続的な節電につなげることが可能です。
電力プランを見直す
電力プランを見直すと、空調の運用方法を変えなくても電気料金を削減できる場合があります。
施設によっては、現在の契約電力や料金プランが実際の電力使用状況と合っておらず、必要以上の電気料金を支払っているかもしれません。
夜間の電気料金が安く設定されたプランや、デマンド料金を抑えられるプランなどへ見直すと、電気料金を削減できる可能性があります。
契約電力や時間帯ごとの使用状況を確認し、自社施設の運用に適した料金プランになっているかを見直しましょう。
電力使用量を見える化し、課題を把握する
全館空調の消費電力を削減するには、まず電力使用量や設備の運転状況を見える化し、改善すべき課題を把握することが重要です。
どの設備や時間帯で無駄な電力を消費しているのかわからないと、優先的に改善すべき設備や運用方法を判断できません。
BEMSやIoTセンサーを活用すると、建物全体だけでなく、フロアや設備ごとの電力使用量を把握できます。
たとえば、データを分析すると、営業時間外にも空調が稼働していることや、熱源設備が低負荷で非効率に運転していることなどを把握できます。
データをもとに課題を特定することで、運転スケジュールや設備の制御方法を見直しやすくなり、効率的な省エネ対策につなげることが可能です。
IoTを活用した空調管理について詳しく知りたい方は「空調をIoT化すると何ができる?仕組みやメリットを徹底解説」をご覧ください。
空調熱源をAIで制御する
AIを活用して空調熱源を制御すると、既存設備を活用しながら建物の利用状況や空調負荷に応じた効率的な運転を実現できます。
AIは気象データや過去の運転データをもとに空調負荷を予測し、その時々の状況に応じて熱源設備を最適な組み合わせで運転できるためです。
冷凍機やヒートポンプなど複数の熱源設備を自動で制御できると、過剰な運転を防ぎながら、快適な室内環境を維持することが可能です。
全館空調の運用改善で期待できる効果


全館空調の運用改善で期待できる効果は、次の3つです。
- システム全体のエネルギー効率を高められる
- 変流量制御で搬送エネルギーを削減できる
- 設備状況に応じた最適な運転を可能にする
システム全体のエネルギー効率を高められる
全館空調の運用を改善すると、熱源設備から搬送設備、空調機までを含めたシステム全体のエネルギー効率を高められます。
全館空調では、冷凍機やボイラーなどの熱源設備だけでなく、ポンプや空調機も連携して運転しています。そのため、一部の設備だけを効率化しても、システム全体としては十分な省エネ効果を得られない場合があるでしょう。
BEMSやIoTを活用して設備ごとの稼働状況や電力使用量を可視化し、システム全体を統合的に分析すると、各設備を最適なバランスで運転できるようになります。
設備単位ではなくシステム全体を最適化することで、無駄なエネルギー消費を抑えながら、快適な室内環境と安定した空調運用の両立が期待できます。
変流量制御で搬送エネルギーを削減できる
全館空調の運用改善によって、変流量制御による搬送エネルギーの削減が期待できます。
全館空調では、熱源設備でつくった冷水や温水をポンプで建物内に循環させて空調を行うため、ポンプの運転にも多くの電力を消費します。
しかし、空調負荷が小さい時間帯でもポンプを一定の流量・回転数で運転し続けると、必要以上のエネルギーを消費してしまいます。
変流量制御では、建物の空調負荷に応じて冷温水の流量やポンプの回転数を自動で調整します。必要な量だけ冷温水を搬送できるため、無駄な搬送エネルギーを抑えながら、効率的な空調運転を実現できます。
設備状況に応じた最適な運転を実現できる
設備の状態に応じた最適な運転も、全館空調の運用改善により実現できます。
設備は経年劣化によって性能が変化するため、導入当初と同じ設定で運転を続けると、本来の性能を十分に発揮できない場合があります。
AIを活用すると、設備の運転データや稼働状況をもとに、現在の設備状態に適した運転方法を判断することが可能です。
設備の状態に応じて運転状況を最適化すると、設備への負荷軽減や安定した運用にもつながります。
まとめ
全館空調の消費電力を抑えるには、設備更新だけでなく、建物の利用状況や外気温、設備の状態に応じた運用改善が重要です。
施設では空調設備が建物全体のエネルギー消費の約4割を占めます。そのため、運転スケジュールの最適化や適切な保守管理、電力使用量の見える化などを実施することで、省エネ化を進めることが可能です。
さらに、AIやIoTを活用した運用改善を取り入れると、既存設備を活用しながら、消費電力の削減と快適な室内環境の維持、設備管理業務の効率化を実現できます。



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