
空調をつけっぱなしにすると電気代は高くなるの?
つけっぱなしでも電気代を抑える方法が知りたい。
こういった疑問を解決する記事です。
- 空調のつけっぱなしで電気代が安くなるケース
- 空調のつけっぱなしで電気代が高くなる施設の共通点
- ホテルや商業施設が空調の電気代を抑える方法



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
ホテルや商業施設など24時間空調が必要な施設では、空調を止めることではなく、適切に運転・制御することが電気代削減のポイントです。
空調のつけっぱなしで電気代は安くなる場合がある


空調には、つけっぱなしのほうが電気代を抑えられる時間帯と、こまめに停止したほうが電気代を抑えられる時間帯があります。
主なケースは次のとおりです。
- 9〜18時はつけっぱなしのほうが安い
- 18〜23時はこまめに消すほうが安い
9〜18時はつけっぱなしのほうが安い
9〜18時は、空調をつけっぱなしにしたほうが消費電力を抑えられる場合があります。
日中は外気温と設定温度の差が大きくなりやすく、一度停止した空調を再起動すると、室温を設定温度まで戻す際に大きな電力を消費するためです。
実際に、ダイキン工業株式会社が家庭用エアコンを用いて行った実験では、9〜18時の時間帯において、「こまめに入り切り」するよりも「つけっぱなし」のほうが消費電力量を抑えられる結果となりました。


この実験は家庭用エアコンを一定の条件下で検証したものであり、ホテルや商業施設の業務用空調にそのまま当てはめられるわけではありません。
しかし、外気温と設定温度の差が大きいほど空調負荷が増える仕組みは共通しています。
そのため、24時間稼働するホテルや商業施設でも、日中はオン・オフを繰り返さず、連続運転したほうが効率的な場合があります。
18〜23時はこまめに消すほうが安い
18〜23時は、必要に応じて空調をこまめに停止したほうが、電気代を抑えられる場合があります。
夜間は日中より外気温と設定温度の差が小さくなりやすいため、再起動時の負荷も比較的軽くなります。そのため、こまめに電源を切っても消費電力を抑えることが可能です。
ダイキン工業株式会社の実験でも、18〜23時は「つけっぱなし」よりも「こまめに入り切り」を行ったほうが消費電力を抑えられる結果となりました。


外気温や施設の利用状況、空調負荷などを確認しながら、必要性の低いエリアや時間帯では運転を抑えるなど、施設の状況に合わせて空調制御することが電気代の削減につながります。
ホテル・商業施設の空調の電気代は何で決まる?


ホテルや商業施設の空調の電気代は、消費電力・使用時間・電力単価の3つの要素のかけあわせで決まります。
基本的な計算式は、以下のとおりです。
消費電力(kW)×使用時間(h)×電力量単価(円/kWh)
空調の消費電力は、施設の床面積や利用人数、外気温、建物の断熱性能、設定温度、設備の運転効率などによって変動します。
そのため、24時間稼働するホテルや営業時間の長い商業施設では、単純に空調の運転時間を短くするだけでなく、施設の状況に合わせて効率よく運転することが重要です。
資源エネルギー庁によると、ホテル・旅館では空調が電力消費の約29%を占めています。設定温度や運転スケジュール、設備の制御方法などを見直すことで、施設全体の電気代削減につながる可能性があります。
空調のつけっぱなしで電気代が高くなる施設の共通点


空調のつけっぱなしで電気代が高くなる施設の共通点は、次の3つです。
- 設定温度や運転スケジュールが最適化されていない
- 設備のメンテナンスが不足している
- 熱源設備の運転が最適化されていない
設定温度や運転スケジュールが最適化されていない
施設の利用状況に合わせて設定温度や運転スケジュールを最適化できていないと、必要以上に電力を消費する可能性があります。
たとえば、利用者の少ない時間帯やレストラン・宴会場の営業終了後にも、日中と同じ設定温度や運転条件で空調を稼働させていると、人がほとんどいないエリアまで冷暖房を続けることになります。
そのため、施設の利用状況に応じて設定温度や運転スケジュールを見直し、必要な場所に必要な分だけ空調を運転することが、電気代の削減につながります。
設備のメンテナンスが不足している
空調設備のメンテナンスが不足している施設では、設備本来の性能を発揮できず、電気代が高くなる場合があります。
たとえば、フィルターに埃や汚れが溜まると空気の流れが悪くなり、設定温度に到達するまでに余分な電力を消費します。
また、設備の経年変化や施設の利用状況が変わっているにも関わらず、導入時の運転条件のまま運用を続けているケースも少なくありません。
そのため、フィルターの清掃や定期点検に加え、施設の利用状況に合わせた運転条件を見直すことが、無駄な電力消費の抑制につながります。
熱源設備の運転が最適化されていない
熱源設備の運転が最適化されていないことも、空調の電気代が高くなる要因のひとつです。
熱源設備とは、冷温水をつくって空調機へ供給する設備で、主に熱源機やポンプ、冷却塔などで構成されています。
ホテルや商業施設では、時間帯や外気温、施設の利用状況などによって必要な冷暖房能力が変化します。
こうした空調負荷の変化に合わせて設備を制御できていないと、必要以上の台数の熱源機が稼働したり、必要以上の出力で運転したりして、余分な電力を消費する場合があるでしょう。
そのため、空調機だけでなく、空調負荷に応じて熱源設備の運転方法や制御を最適化すると、室内の快適性を維持しながら電気代の削減が期待できます。
ホテルや商業施設が空調の電気代を抑える方法


ホテルや商業施設が空調の電気代を抑える方法は、次の6つです。
- 設定温度・運転モードを最適化する
- フィルター・室外機・熱交換器を定期的にメンテナンスする
- 空調負荷を減らす建物環境を整える
- 電気料金プランを見直す
- デマンドコントローラーやBEMSを活用する
- 空調設備全体の運転を最適化する
これらの方法を実践すると、快適な室内環境を維持しながら、無駄な電力消費や空調コストの削減が期待できます。
設定温度・運転モードを最適化する
設定温度や運転モードの見直しは、空調の電気代を抑えるためにすぐ実践できる方法のひとつです。
季節や施設の利用状況に応じて設定温度を調整し、必要以上の冷暖房を避けると、無駄な電力消費を抑えられます。
環境省でも、省エネと快適性を両立する室温の目安として、冷房時28℃・暖房時20℃を推奨しています。
また、自動運転モードを活用すると、室温や負荷に応じて運転能力を自動で調整するため、効率よく運転しながら電気代の削減が期待できるでしょう。
省エネにつながる空調の設定温度は、以下で解説しているので、あわせてご覧ください。


フィルター・室外機・熱交換器を定期的にメンテナンスする
空調設備の運転効率を維持するには、フィルターや熱交換器などを定期的にメンテナンスすることが重要です。
フィルターに埃や汚れが溜まると空気が流れにくくなり、空調機の運転効率が低下する可能性があります。また、熱交換器が汚れると熱を効率よく移動させにくくなり、必要な冷暖房能力を得るために余分なエネルギーを消費する場合があります。
また、室外機の周囲に物を置いたり、吸込口・吹出口が塞がれたりすると、吸気や放熱が妨げられるため注意が必要です。
そのため、フィルターや熱交換器の清掃に加え、室外機の周辺環境を定期的に確認すると、空調設備本来の性能を維持しながら無駄な電力消費を抑えることが可能です。
空調のフィルターの清掃方法は、以下で詳しく解説しているので、ぜひご確認ください。


空調負荷を減らす建物環境を整える
建物の断熱性や日射対策の見直しは、空調の電気代を抑える有効な方法です。
夏場は屋外から室内へ入る熱を減らし、冬場は室内の熱を外へ逃がしにくくすることで、設定した室温を維持するために必要な空調負荷を抑えられます。
たとえば、次のような対策が効果的です。
- 遮熱フィルムを窓に貼る
- 庇やブラインドを設置する
- 屋根や外壁の断熱・遮熱対策を行う
さらに、サーキュレーターを活用して室内の温度ムラを減らすと、空調設備を効率よく運転しやすくなります。
空調設備の運転方法だけでなく、建物そのものへの熱の出入りや室内の温度ムラを抑えることで、空調負荷を軽減し、継続的な電気代の削減につなげられます。
電気料金プランを見直す
施設の稼働時間帯や電力使用量に合ったプランへ変更すると、消費電力量が同じでも電気料金を抑えられる場合があります。
ホテルや商業施設では、時間帯や季節、施設の利用状況などによって電力使用量が変動します。たとえば、客室稼働率が高い時間帯やレストラン・宴会場の利用が重なる時間帯には、空調を含めた施設全体の電力需要が大きくなるでしょう。
また、業務用の電気料金には、使用した電力量に応じた電力量料金だけでなく、契約電力などに応じて決まる基本料金もあります。そのため、電力量だけでなく、電力需要のピークがいつ発生しているのかを把握することも重要です。
施設の稼働時間や電力使用量、ピークが発生する時間帯などを確認し、現在の契約内容が実際の電力使用状況に合っているか見直しましょう。
デマンドコントローラーやBEMSを活用する
デマンドコントローラーやBEMSを活用し、施設の電力使用状況を把握・制御することも、電気代の削減につながります。
デマンドコントローラーは、電力使用量がピークに達しそうなタイミングで空調設備を自動制御し、契約電力の超過を防ぐ設備です。
一方、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)は、空調設備を含む建物全体のエネルギー使用状況を見える化し、効率的な運転を支援します。
これらを活用すると、空調設備の電力使用状況を把握し、運転方法の改善につなげられるため、継続的な電気代削減が期待できるでしょう。
空調のデマンド制御については、以下で詳しく解説しているので、ぜひお読みください。


空調設備全体の運転を最適化する
空調の電気代を抑えるには、熱源設備を含めた空調設備全体の運転を最適化する方法が効果的です。
熱源設備は複数の機器が連携して稼働しているため、それぞれの設備の運転効率だけを考えて制御しても、システム全体として最も効率のよい運転になるとは限りません。
また、必要な冷暖房能力は、外気温や日射、施設の利用状況などによって時間ごとに変化します。そのため、空調負荷に応じて熱源機の運転台数やポンプなどの運転状態を調整し、設備全体としてエネルギー消費が少なくなるように制御することが重要です。
一方、施設の状況は常に変化するため、設備管理者がその都度、最適な運転パターンを判断するのは容易ではありません。
施設の空調設備の運用改善をご検討中の方は、以下から資料をチェックしてみてください。
空調の電気代に関するよくある質問


空調の電気代に関するよくある質問をまとめました。
- 空調はつけっぱなしとこまめに停止するのはどちらが電気代を抑えられますか?
- 空調を24時間つけっぱなしにすると故障しやすくなりますか?
- 既存の空調設備を交換せずに電気代を削減できますか?
- 空調はつけっぱなしとこまめに停止するのはどちらが電気代を抑えられますか?
-
24時間稼働するホテルや商業施設では、空調はこまめに停止するよりも、つけっぱなしで運転したほうが電気代を抑えられる場合があります。空調は起動直後から設定温度に達するまでの間にもっとも多くの電力を消費するためです。頻繁にオン・オフを繰り返すよりも、室温を維持しながら連続運転したほうが効率的なケースがあります。
- 空調を24時間つけっぱなしにすると故障しやすくなりますか?
-
24時間つけっぱなしだからといって、空調設備が故障しやすくなるわけではありません。業務用空調は連続運転を前提に設計されています。ただし、24時間稼働ではフィルターの汚れや部品の摩耗が進みやすいため、定期的な清掃や点検など適切なメンテナンスが重要です。
- 既存の空調設備を交換せずに電気代を削減できますか?
-
既存の空調設備を交換しなくても、電気代を削減できる場合があります。運転スケジュールや設定温度の見直し、熱源設備の制御を最適化すると、既存設備のままでも無駄な電力消費を抑えられます。ただし、削減効果は設備構成や運転状況によって異なるため、現状を把握したうえで改善することが重要です。
まとめ
ホテルや商業施設では、空調を適切に運転・制御することが電気代削減のポイントです。
日中はつけっぱなしのほうが効率的な場合もあり、設定温度や運転方法の見直し、定期的なメンテナンス、電気料金プランや設備制御を最適化すると、無駄な電力消費を抑えられます。
また、より大きな削減効果を目指すには、消費電力の大きい熱源設備を含めた空調設備全体の最適化も重要です。



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