
スマートビルディングには、どのような導入事例があるの?
どのような技術が採用されているのか知りたい。
こういった疑問を解決する記事です。
- スマートビルディングの事例10選
- スマートビルディングを支える導入技術
- スマートビルディングの導入で解決できること
- スマートビルディングを導入する際の課題



はじめまして。
この記事の執筆者の井上智樹と申します。
竹中工務店で設備設計におけるBIMや環境シミュレーションの活用を推進した後に、AIベンチャーGRIDで主にスマートシティ関連PJのPMとして提案から開発まで一気通貫で担当。2023年より株式会社メンテルを経営しています。
スマートビルディングでは、AIやIoT、各種センサーなどを活用して建物や設備のデータを収集・分析し、省エネや快適性の向上、建物管理の効率化などにつなげます。
実際の事例を見ることで「どのような課題に対して、どの技術が活用されているのか」を具体的にイメージしやすくなるでしょう。
スマートビルディングの実現やAIを活用した設備運用をご検討中の方は、以下から資料をチェックしてみてください。
スマートビルディングとは


スマートビルディングとは、IoTやAI、クラウドなどのデジタル技術を活用し、空調や照明などの設備を効率よく管理・制御する建物です。
従来のビルでは、空調・照明・セキュリティなどの設備が、それぞれ別のシステムで管理されているケースが多く、設備同士のデータをまとめて活用することが難しいという課題がありました。
スマートビルディングでは、温度や湿度、人の動き、設備の稼働状況などのデータをまとめて収集・活用できます。
たとえば、建物内の人数や室温に応じて空調を自動で調整したり、設備の異常を早めに検知したりすることが可能です。
スマートビルディングについては、以下の記事で詳しく解説しています。


スマートビルディング事例10選
以下は、スマートビルディングの事例10選です。各事例で活用されている技術や取り組み内容、導入によって得られた効果について解説します。
- TODA BUILDING
- THE VILLAGE SAPPORO
- 渋谷ソラスタ
- 日本橋一丁目三井ビルディング
- TAKANAWA GATEWAY CITY
- 関電不動産八重洲ビル
- 竹中セントラルビルサウス
- 東京ミッドタウン八重洲
- アーバンネット名古屋ネクスタビル
- RBC WaterPark Place
TODA BUILDING


2024年11月に開業したTODA BUILDINGでは、建物内の設備やサービスをつなぐ「ビルOS」を導入しています。
ビルOSを活用した主な取り組みは、以下のとおりです。
- ロボットが飲み物を自動で配送する
- 受け取りが遅れている場合に照明で利用者へ知らせる
- トイレの利用状況を把握し、清掃のタイミングや作業の効率化に役立てる
こうした仕組みによって、利用者の利便性向上や建物管理の効率化につなげています。
建物から集めたデータを設備管理やサービス改善に役立てながら、竣工後も使いやすい建物へと改善を続けている点が特徴です。
参考:戸田建設|竣工後も「継続進化するスマートビル」をカタチに
THE VILLAGE SAPPORO


2026年5月に開業したTHE VILLAGE SAPPOROは、計画段階からデジタル技術を取り入れて設計された新築オフィスビルです。
施設内では、空調・照明・セキュリティなどの設備やデータをまとめて管理する仕組みを導入しています。
集めたデータはアプリと連携しており、建物を利用する人へリアルタイムで情報を提供できます。
建物の状況を把握しやすくし、利用者の利便性や快適性を高めている点が特徴です。
参考:SoftBank|Smart City Project
渋谷ソラスタ


渋谷ソラスタでは、2026年からAI・IoT・ビルOSを活用した次世代型のビル管理に向けた実証実験を行っています。
清掃・警備・エネルギー管理などで取得したデータを活用し、建物管理の効率化や省人化につなげる取り組みです。
たとえば、人の行動や人数などのデータを収集してAIで分析し、ビル内の状況を把握します。
また、建物内の人数や天気に応じてAIが空調機や外気の取り込み量を自動で調整し、快適性を保ちながらエネルギー消費を抑える仕組みも取り入れています。
日本橋一丁目三井ビルディング


日本橋一丁目三井ビルディングでは、2026年5月から映像・IoT・生成AIを活用したビル設備管理の実証実験を行っています。
設備の状態や建物内の情報をデジタル技術で収集・分析し、主に以下のような業務への活用を検証しています。
- 設備の異常や対応が必要な箇所を把握する
- 点検や設備管理にかかる作業を効率化する
- 生成AIを活用して担当者の確認や判断を支援する
こうした仕組みにより、人手不足が課題となるビル管理の現場で、担当者の負担軽減や安定した施設運営につなげることを目指しています。
参考:キヤノンマーケティングジャパン株式会社|「日本橋一丁目三井ビルディング」にて、ビル設備管理効率化に向けた実証実験を開始 映像・IoT・生成AIを活用し、業務の省力化と安定運営の実現を目指す
TAKANAWA GATEWAY CITY


TAKANAWA GATEWAY CITYは、複数の施設や街全体でデータを活用しているスマートビルディングの事例です。
2025年にまちびらきを迎え、街全体のデータを集約・活用する「TAKANAWA GATEWAY URBAN OS」を導入しています。
連携している主なデータは、以下のとおりです。
- 鉄道の運行情報
- 人流データ
- エネルギー使用量
- 気象情報
- ロボットの稼働状況
これらのデータを活用することで、街や施設の状況を把握しやすくなり、建物の運営やサービスの改善に役立てています。
関電不動産八重洲ビル


2022年5月に竣工した関電不動産八重洲ビルは、デジタル技術を活用して快適性と省エネの両立を図っているオフィスビルです。
貸室内の人の分布や室温を確認できるアプリを導入し、快適な環境づくりに役立てています。
主な省エネの取り組みは、以下のとおりです。
- センサーによる空調・照明の自動制御
- 高効率な空調設備の採用
- 再生可能エネルギー由来の電力の導入
こうした省エネ性能により「ZEB Ready」認証とBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の最高ランクを取得しました。
竹中セントラルビルサウス


竹中セントラルビルサウスは、1999年に竣工した既存のオフィスビルをスマートビルへ改修しています。
脱炭素や働き方の多様化に対応するため、2022年に改修を行い、クラウド型の建物OSを活用した「ビルコミ®プラス」を導入しました。
建物の設備やセンサーから集めたデータは、主に以下のような用途で活用されています。
- 空調や自然換気の制御
- 設備管理の効率化
- AIやIoTを活用した建物運用
- ロボットを活用した警備や清掃
既存の建物や設備を活かしながら、デジタル技術によって建物管理の効率化を進めています。
参考:竹中工務店|既存オフィスビルを、成長するスマートビルに改修~竹中セントラルビル サウス~
東京ミッドタウン八重洲


東京ミッドタウン八重洲では、建物をデジタル空間に再現する「デジタルツイン」を活用し、ロボットの制御や来館者向けサービスへの活用を進めています。
2025年1月から、ローカル5Gを活用して施設内の空間をクラウド上に3Dで再現する実証実験を開始しました。
構築したデジタルツインは、主に以下のような用途で活用されています。
- デリバリーロボットの位置や移動経路をクラウド上で管理する
- ロボットとエレベーターやセキュリティシステムを連携させる
- ARを活用して来館者を目的地まで案内する
- AR上で店舗の商品やクーポンなどの情報を提供する
将来的には街全体へ活用範囲を広げ、人流分析や災害対策への利用も検討されています。
参考:三井不動産株式会社|大規模複合施設「東京ミッドタウン八重洲」にてローカル5Gを活用したデジタルツインの実証開始-新たな街の体験価値創出をめざす-
アーバンネット名古屋ネクスタビル


アーバンネット名古屋ネクスタビルでは、ICT(情報通信)技術を活用し、場所にとらわれない働き方や快適な施設利用を支える取り組みを行っています。
施設内では、主に以下のような技術や仕組みを導入しています。
- アバターロボットやMR(複合現実)デバイスを活用した遠隔コミュニケーション
- 非接触型の顔認証システム
- 防犯カメラを活用した安全管理
- 店舗データを活用した業務効率化やフードロス削減
アバターロボットやMRデバイスを活用することで、離れた場所にいる人ともコミュニケーションを取りやすくなります。
オフィスにいない場合でも業務や交流に参加しやすく、多様な働き方を支える仕組みです。
参考:NTTアーバンソリューションズ株式会社|実証実験vol.04 成長し続ける街づくりのために、街づくりDTCができること
RBC WaterPark Place


RBC WaterPark Placeは、カナダ・トロントにあるCiscoのカナダ本社で、IoTセンサーを活用して省エネや快適なオフィス環境づくりに取り組んでいる事例です。
IoTセンサーを備えた照明設備と「Interact Office」を導入し、温度や照度、在席状況、スペース利用状況などを収集しています。
集めたデータは一元管理され、在席状況の把握や照明の運用改善に活用されています。
また、従業員がデスク周辺の照明を調整できる仕組みです。
このシステムの導入によって、年間177,000kWhのエネルギー削減と、年間45,000カナダドルのコスト削減が見込まれています。
参考:Interact|Interact Officeでよりスマートな職場を作る
スマートビルディングを支える導入技術
スマートビルディングでは、IoTやAIなど複数の技術を組み合わせ、建物から集めたデータを設備の管理や制御に活用します。
主な技術とそれぞれの役割は、以下のとおりです。
| 技術要素 | 主な役割・機能 |
|---|---|
| IoT・センサー | 温度・湿度・人流などのデータを収集し、建物の状態を把握する。 |
| AI(人工知能) | 収集したデータを分析し、予測や異常検知、設備の最適化に活用する。 |
| BEMS・BAS | エネルギー使用量を管理し、空調や照明などの設備を監視・制御する。 |
| ビルOS・クラウド | 建物内のデータを集約し、異なる設備やシステムを連携させる。 |
| デジタルツイン | 建物をデジタル空間に再現し、シミュレーションや設備管理に活用する。 |
これらの技術を建物の目的や課題に合わせて組み合わせると、省エネや設備管理の効率化、利用者の快適性向上などにつなげられます。
なかでも導入の中核となる「ビルOS」の連携アーキテクチャや、「BEMS」を活用して確実に省エネ効果を出すための運用ノウハウは、以下の記事で詳しく解説しています。




スマートビルディングの導入で解決できること


スマートビルディングの導入で解決できることは、次の4つです。
- エネルギー消費の無駄を削減できる
- 建物管理の負担を軽減できる
- 利用者の快適性や利便性を高められる
- 建物の安全性を高められる
エネルギー消費の無駄を削減できる
スマートビルディングを導入すると、エネルギーの無駄な消費を抑え、省エネにつなげられます。
空調や照明などの運転データを収集・分析することで、必要以上に設備が稼働している時間や場所を把握できるためです。
たとえば、AIを活用して、建物の利用状況や気象条件に合わせて空調の運転を自動で調整すると、必要な場所や時間に合わせた効率的な運転が可能です。
設備の稼働を最適化すると、エネルギーコストやCO2排出量の削減にもつながります。
「とくに電力消費の約半分を占める空調の電気代をどう削るべきか」について、具体的なAI制御の仕組みや削減率は以下のAIスマート空調の記事で詳しく解説しています。


建物管理の負担を軽減できる
スマートビルディングを導入すると、建物管理にかかる作業の負担を軽減できます。
設備の状態を遠隔で確認したり、複数の設備データをまとめて管理したりすることで、現地での巡回や点検作業を減らせるためです。
また、センサーで設備の異常を早期に把握できれば、故障する前に点検や修理を行いやすくなります。
こうしたビル管理のDXを進めることで、人手不足への対応や管理業務の効率化にもつながります。
深刻化する現場の高齢化・人手不足を背景に、「なぜ今ビル管理のDX化が急務なのか」「どのような業務からデジタル化すべきか」は、以下の記事で整理しています。


利用者の快適性や利便性を高められる
働くワーカーや来館者の行動に合わせて室内環境や付帯サービスを最適化し、ビルの利用価値そのものを向上させます。
温湿度やCO2濃度、人流データを常時モニタリングすることで、常に快適な空気質・室温環境を自動で維持します。
また、アプリで混雑状況を確認したり、会議室などを予約したりする仕組みを取り入れることも可能です。
こうした機能を活用すると、快適で使いやすい建物づくりにつながるでしょう。
建物の安全性を高められる
防犯・防災設備とデジタル技術を連動させることで、限られた警備人員でも高水準のセキュリティ体制を構築できます。
高精度なAI顔認証システムと入退館ゲート、防犯カメラを連携させれば、なりすましや不審者の侵入を即座に検知・ブロック可能です。
また、地震や火災などの有事の際にも、センサーが被災状況や設備被害をリアルタイムに集約するため、迅速な避難誘導や初動対応、早期の事業復旧(BCP)を実現します。
さらに、センサーで火災や設備の異常を検知することで、トラブルの早期発見や迅速な避難誘導にもつなげられます。
スマートビルディングを導入する際の課題


スマートビルディングを導入する際の課題は、次の2つです。
- 導入コストが大きくなりやすい
- サイバーセキュリティのリスクが高まる
導入コストが大きくなりやすい
スマートビル化を推進するには、温度・湿度・人流・設備状態を測定するセンサーや監視カメラ、通信機器などを設置するための初期投資が必要です。
さらに、集めたデータを一元管理するクラウドシステムの構築や、既存のBEMS・空調・照明などと連携するためのソフトウェア開発にも費用がかかります。
導入する設備やシステムが増えるほど、初期費用も大きくなる傾向があるでしょう。
すべての設備を一度にスマート化すると費用負担が大きくなるため、一部のエリアや設備から導入し、効果を確認しながら段階的に適用範囲を広げる方法が有効です。
サイバーセキュリティのリスクが高まる
スマートビルディングでは、空調や照明などの設備をネットワークにつなぐため、サイバー攻撃や不正アクセスへの対策が欠かせません。
安全に運用するには、誰がどのデータや設備にアクセスできるのかを明確にし、利用範囲や権限を適切に管理する必要があります。
また、設計段階からセキュリティ対策を取り入れることも重要です。
攻撃や通信障害によって設備の監視・制御に影響が出る可能性もあるため、スマートビルディングの課題を踏まえた対策を事前に検討しておくと安心でしょう。
「高額な初期費用をどう抑えるか」「運用できる専門人材がいない場合はどうすべきか」など、スマートビルの課題と具体的な回避策は、以下の記事で詳しく解説しています。


まとめ
スマートビルディングは、IoTやAI、各種センサーを活用し、省エネや建物管理の効率化、利用者の快適性向上を実現する仕組みです。
事例からも、ビルOSやロボット、クラウドなどを組み合わせることで、建物の運用をより高度化できることがわかります。
一方で、導入コストやセキュリティ面への配慮も欠かせません。
まずは既存設備を活かしながら、一部の設備やエリアから段階的に進める方法が有効です。
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